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夏休みの思い出



 クラリッサと弟のカールが避暑に行った場所は、アイーダ公爵領の北にある。避暑地として有名なところだった。

 当然ながら観光地である。観光客目当ての土産物店をぶらぶら眺めながら、俺はスーツではなく半そでシャツに短パンと気楽すぎる服装で歩いていた。

 これでもけっこう有名な商会の会長であるため、一流ホテルに宿泊している。手配をトーマに任せたらなぜかクラリッサと同じホテルになってしまったのだ。よく予約が取れたなと感心していたら、どうもカーラが持って行った暑中見舞いをクラリッサがホテルに提供し、それで新メニューができたらしい。その関係でホテルが融通してくれたようだ。

 暑中見舞いに何を贈ったかというと、かき氷器である。

 魔法で氷を生み出せてもせいぜい冷蔵庫に使うか部屋に置いて涼を取るくらいしか使われていなかった。食べる発想がなかったらしい。まあ、水も清潔とは言い難いもので、一度煮沸してからじゃないと飲めないから無理もなかった。

 魔法で作った氷でさえそうだ。氷の魔法は水属性に分類される。俺も水を出す魔法は使えるが、よほど集中しないと綺麗な水にならない。飲料水に適さないものになるのだ。そこにさらに温度を下げるとなると相当な精神力が必要となる。

 この世界の水に対する意識が低いのは魔法で生み出せるからだろう。水属性魔法の庶民は水売りなどを仕事にしている者もいる。浄化システムはあるものの魔道具と呼ばれる魔法を組み込んだもので、とても高価な水瓶だ。


「それにしても土産物にクッキーや菓子類が多いのはやっぱ日本の影響なのかな? よくわからない剣のキーホルダーあるし」


 どこかで見たことがある――というよりそのまんま日本の土産物店で見かけるやつだ。ガキの頃は土地と関係ないのに欲しくて親にねだり、当然買ってもらえなかった。前世を思い出して懐かしくなる。


「特産品は……こっちか」


 バカンスに来たからにはやはり土地のものが食べたい。内陸の避暑地なだけあって、少々値が張るが果物類がたくさんあった。


「桃、マンゴー、イチゴ。バナナにドラゴンフルーツまであるのか」


 乙女ゲームでよくあるスイーツといえば手作りのクッキーなのだろう。デートスチルに出てくるのかケーキやチョコレートなんかもあった。そのせいか果物も季節地域無視してあるようだ。こういうところだけばっちりだと逆に腹立つな。


「お、スイカ発見! 坊ちゃん誘ってスイカ割りでもやろうかな。すいませーん」

「はーい」

「これって配達お願いできますか? ホテル『ヴィクトリアン』なんですけど」

「大丈夫ですよ」


 大量お買い上げなものだから店員も愛想が良い。午後に間に合うよう手配して、いくつかの果物は袋に入れてもらい、ホテルに戻った。


「あっ、ターニャ!」

「ターニャおじさま!」


 ひとっ風呂浴びて優雅に昼酒といこうかなぁ、と思っていたがそうはいかなかった。ホテルのロビーでクラリッサとカールに捕まった。


「どちらに行ってらしたの? 遊びに誘おうと思ってましたのに、すでにお出かけになられたと聞いてがっかりしましたのよ」

「……勘弁してくださいよ、お嬢様」


 クラリッサは夏休みで煩わしさから解放されたせいか、日頃の見本のような令嬢ぶりはどこへやら、はじけまくっている。そんな姉に釣られているのかカールもはしゃいでいた。昨日はテニス今日は乗馬とセレブ遊びにつきあって、おじさんの俺はもうぐったりだ。


「今日はアフタヌーン・ティーでホテルで知り合った方との約束がおありでしょう。遊び疲れていては失礼ですよ」


 公爵家の令嬢が別荘でもない避暑地でホテルに泊まるのは一種の社交が含まれている。

 一流ホテルの宿泊客ともなれば貴族か上流階級だ。ここでの交流は王都に帰った後の社交にも役立つのだ。そのためホテルのラウンジはいつも賑わっていた。

 国一番の財産家であり第二王子の婚約者であるクラリッサは、ホテルに滞在する客の中でもトップクラス。アフタヌーン・ティーに招かれた者はさぞ張り切っているだろう。


「それに、我が社のかき氷器をホテルに提供してくださったお礼に、私も協力するつもりです」


 袋に入った果物を掲げてそう言えば、クラリッサとカールの顔がぱっと輝いた。現金なものである。


「何を作るんだ?」

「それは秘密ですよ、カール様。できあがってのお楽しみです」


 厨房もクラリッサに気を使ってかき氷を出すだろうから、一つレシピを教えてあげよう。

 俺も迂闊だったが、かき氷にかけるシロップは砂糖水か蜂蜜、リキュールくらいしかなかった。前世のテレビで特集されていたような、果物たっぷりソースもたっぷり、各店工夫を凝らして、なんて夢のまた夢だったのだ。

 フロントに頼んで厨房を使わせてもらい、持ち帰ってきた桃、マンゴー、イチゴでまずはシロップを作る。


「水と砂糖で果物を煮るのですか」


 厨房のパティシエが教えてほしいと手伝ってくれた。桃は皮を剝くのが難しいのでありがたい。さすがプロは手際よく種と皮を取っていった。


「コンポート、ですよね?」

「そうとも言います」


 俺にはシロップ漬けだけどな。


「このシロップをかき氷にかけて、桃は刻んで乗せます。どうしても舌が飽きてくるので中間に挟んでもいいですね」


 日本の夏祭り定番のかき氷用シロップなら融けた氷とかき混ぜて一気飲みできるけど、高級ホテルでお召し上がりになるかき氷はもう『おかき氷様』だ。まったくの別物である。器もガラスの綺麗なものが使われる。


「これをアイスクリームに混ぜても美味しいですよ」

「アイスに!」


 アイスがあるのはたぶん、パフェがあるせいだ。乙女的要素が高いものは標準装備なのに、どことなく庶民臭さが抜けきらないかき氷がなかったのは設定のせいか。シチューはあったのに鍋料理はなかったし。


「さっき町の販売所で果物買ってきました。午後には届くのでそれでシロップを作って、残りは飾り切りをお願いできますか?」

「果物ならうちにもありますが」

「それは申し訳ないです。お嬢様のアフタヌーン・ティーですが、うちのかき氷器のお披露目をさせてもらうわけですし、これくらいはさせてください」


 かき氷器の売れ行きがいまいちなのは、氷の問題に加えてシロップがないからだと思う。砂糖や蜂蜜だけでは飽きるし、酒は子供には向かない。自宅でひと工夫するのも楽しいが、その一手間をなくすのがタナカ商会の商売だ。シロップのレシピに加えてシロップを売ろう。セットとバラ売りだ。

 完成した桃とイチゴのかき氷は見た目も可愛らしく新鮮な美味しさだ、とパティシエも喜んでくれた。ガラスの器に生とコンポートを添えれば味と食感の違いも楽しめる。


「うん、美味しいですね」


 夏はやっぱりかき氷だよ。ブルーハワイがないのが残念だ。舌が青くなるのを見せっこしたっけ。

 アフタヌーン・ティーでは狙い通りかき氷に人気が集まった。クッキーやケーキもいいけど夏場は重たいし、口の中がぱさつくのが暑さを実感させてくる。アイスもあったがかき氷のほうが見た目が涼しげで良いんだろう。

 ところで俺がここにいるのは、俺もアフタヌーン・ティーに招待されたからだ。商会長としてではなく、友人の一人として。


「クラリッサ様がお帰りになると寂しくなりますわね」

「わたくしも名残惜しいのですが……。宿題が待っておりますの」


 この場にいるのはクラリッサより年上のご婦人が多い。有閑マダムというやつだ。その子供もいるが、そちらはカールと同年代。次期公爵とお近づきになっておこうという思考が透けて見えた。

 クラリッサと同じく学院に通う生徒のほとんどは、夏休みは領地に帰るらしい。そちらの社交で王都のこと、学院のこと――ヘンドリックたちのことを話すのだろう。それがどんな意味を持って広がっていくかでクラリッサの今後も変わっていく。


「宿題! 懐かしい響きですわ。ユーゴー先生はお元気いらっしゃるかしら?」

「ええ、九十歳とは思えないほどですわ」

「あの方、わたくしたちの時も九十歳だとおっしゃっていましたわ。本当はおいくつなのかしら」

「百歳を越えていても驚きませんわね」


 ……俺、場違いすぎない? 貴族のご婦人の輪の中には入っていけないし、同年代の男の子とあまり交流がなかったカールも楽しそうにしている。成人男性はホテルの従業員か、ご婦人が連れてきたボーイフレンドだけだ。ひたすら氷をショリショリするくらいしかやることがない。

 まあ、目の保養にはなるかな。

 学院で会った聖女候補……ヒロインは、クラリッサと比べて幼い顔立ちだった。ヘンドリックにはそれが無垢で清らかに見えるらしいが、俺にはその色のなさが気になる。アホの子というわけではなさそうなのだ。腹の中に蛇を飼っている商人はああいう、誰にでも好かれる笑みを浮かべている。学院に平等を振りまき自身を悲劇のヒロインに演出して王子を篭絡させようとしているのか、それとも別の思惑があるのか。

 ピンクブロンドに翡翠の瞳、ちいさな口、白い肌にあまり凹凸のない体形はいかにもヒロインだ。聖女を演出して、何がしたいのか読めない。

 ここは乙女ゲームでもアニメでもない、現実だ。選択肢コマンドは出てこない。一度きり、誰もがはじめての人生を懸命に歩んでいる。

 ヒロインが夏休みをどう過ごすのかは知らなかった。アニメなら事件が起きていた気がするけど、それを企んでいただろうクラリッサと俺はここにいるしなぁ。どうしたものか。


「ターニャおじさま?」

「お嬢様? お客人のお相手は……」

「もうお開きですわ。……おじさま、退屈でしたか?」

「いいえ。楽しませていただきました」


 セールスできなかったのが残念なだけである。休みだから商売の話はするなとカーラに釘を刺されたし、クラリッサの茶会で雰囲気無視してやるほどじゃない。


「でも、ぼーっとしてらしたわ」

「ああ……。私も結婚していたらお嬢様くらいの子がいたのかな、と考えてました」


 まさか聖女候補のことを考えていたとは言えない。


「おじさま……、結婚したいんですの?」

「まあ、いつかは。仕事仕事でこの歳になってしまって、商会のことを考えるとしておいたほうがいいかな、くらいですが」


 トップクラスとまではいかないが、タナカ商会はかなり大きくなった。

 その商会長が独身というのもいささか決まりが悪い。ついでにあちこちから縁談が来るわけだ。ひどいとハニートラップや、秘書希望で入社して妻の座を狙う女もいる。

 あと実子がいれば、跡継ぎ問題が解決するのだ。この世界の平均寿命は六十代。まだ早いが商会のことを考えるなら早いうちに引き継ぎ教育しておいたほうがいい。


「おじさまは仕事ではなく、ご自分の体のために結婚するべきですわね」


 クラリッサがしたり顔で言った。どこか大人ぶった言い方だ。


「ははは、そうかもしれません」


 女のお小言に言い返すべきではないと知っている俺は曖昧に笑った。それより気になることがある。


「ところでお嬢様、その「おじさま」って何なんです?」


 いつもは「商会長」なのに、突然のおじさま。いや間違っちゃいないけどなんかドキッとする呼び方だよな。俺がヨコシマなだけ?


「え、あの……。お嫌でした?」


 すぅっとクラリッサが頬を染めた。


「嫌というか、歳を実感するというか……」

「まあ」

「笑わないでくださいよ。お嬢様みたいなお若い娘さんに「おじさま」って、けっこう効くんですよ」


 くすくす笑うクラリッサに仕方なく白状する。


「それは申し訳ありません。でも、バカンスでいらしたのなら商会長ではなくただのターニャ・カーでしょう? カーラさんにも呼び方を変えてみてはとアドバイスいただきましたのよ」

「カーラの入れ知恵でしたか……」


 男心をもてあそぶとは、魔性の女だな。カーラ、おそろしい子。


「わたくしも、なんだか新鮮で楽しいですわよ?」

「……!」


 子供のような素直な笑顔の裏側に女の顔が覗いている。

 もしかして。

 ……もしかして?

 何を考えている、俺。そんなことあるわけないだろ。娘でもおかしくない歳の少女だぞ、ないない。


「クラリッサ様……学院は楽しいですか?」

「……はい。お友達もできましたわ」


 お友達、ね。

 これまでにクラリッサの口からは一度もヘンドリックの話を聞いたことがなかった。婚約者であるにも関わらず、だ。

 幼い頃はやられたらやり返していた。それがなくなったのは……。


「女は怖いな……」

「? 何か……?」

「いいえ。クラリッサ様、明日はご出立ですよね」

「はい」

「では少し、散歩に付き合っていただけませんか。夏の思い出に、クラリッサ様がいてくれたら光栄の極みです」

「……はい!」


 頬を上気させ、見るからに嬉しそうな顔をされたら俺だって嬉しくなる。この顔を俺がさせたのだ。

 作り笑いじゃない、淑女らしくもない、クラリッサの本物の笑顔を、あと何回見られるんだろう。


 散歩といってもホテルの敷地内にある遊歩道だ。赤レンガで舗装され、道に添って香りの強いラベンダーや虫よけのハーブ、白樺などが植えられている。

 道を逸れるとほどよい茂みがあり、男女が愛を囁くのにぴったりの雰囲気だ。特に夜ならホテルの灯りが見えて安心だし、他人のことなんか誰も気にしちゃいない。つまりはそういう遊歩道である。

 まあ俺とクラリッサの場合は侍女が後ろから付いて来ているわけだが。学院でのことや避暑地での思い出を楽しそうに笑って話すクラリッサを俺は満喫した。


 ――壮年の商人と第二王子の婚約者が夕暮れのホテルで逢引き。


 そんな噂が王都にまで伝わってきたのは、夏も終わる頃だった。


「かき氷器は思ったより出たな」

「はい。シロップの販売で伸びましたね。あとはアレです。ひと夏の思い出(アバンチュール)

「ん?」


 疲れた様子で話すトーマににっこり笑ってやる。誰が仕掛け人かはわかっているのだろう、はーっ、と大きく息を吐いた。


「商会長とクラリッサ様の噂をたしかめようと、お客がやってきたんですよ。ホテルのアフタヌーン・ティーでかき氷をだした相乗効果もあって、本店は大忙しでした!」

「お嬢様を焚きつけたのはカーラだろう。ヘンドリック王子への当てつけに、こんなおっさんを利用するとはな」

「それ……本気で言ってます?」

「そういうことにしておけ、という話だ。相手は公爵家と王家だぞ?」

「…………」


 またため息。今度はちいさい、諦めのこもったものだった。

 夏休みが終わって、さっそくクラリッサはヘンドリックにいちゃもんをつけられたらしい。

 王子の婚約者が侍女がいたとはいえ男と二人で歩くなど何事だ、というわけだ。

 正論である。しかしクラリッサはこう返した。


 ――おじさまは頼りになる、わたくしの友人ですわ。殿下に疚しいことがあるからそうお疑いになるのでは?


 とても露骨な「お前が言うな」である。これにはヘンドリックも黙るしかなかったらしい。なにしろ王都ではヘンドリックと聖女候補が夏休み中べったりだった、という噂が流れているのだ。だからこそ、余計俺とクラリッサの話がおもしろおかしく広がった。


「ヘンドリック王子は夏休みにどこへも行けない聖女候補のため、ずいぶん色々融通したようだな。おやさしいことだ」

「イーデル男爵は貧しいですし……。ダンテ伯爵が焚きつけているようですね」

「売っておいてなんだが、税金だぞ。よく王様が許したな」

「うちはまだ可愛いものですよ。主に学用品ですから。ドレスや宝石は儲かったでしょうねぇ……」

「…………」


 経済を回していると思うか? ドレスや宝石が売れて儲かるのはごく一部だ。王子の小遣いだろうと税金である以上、パパお小遣い足りないからチョーダイ、は通じない。王子に個人資産が与えられているのは使い方を学ぶためだ。遊興費ではない。


「シロップ生産工場、冬場は生姜の蜂蜜漬けとキンカン……柑橘系のシロップを作らせよう。冬は風邪を引きやすくなる。生姜と柑橘は喉に良いし、グリューワインにも使えるだろう」

「え? は、はい」

「夏場は地獄だったけど冬の回収ビン消毒は子供でもできるはずだ。かき氷シロップのビンは回収、再利用させよう。値引きではなく、買取で進めてくれ」

「はい」


 俺が何をするつもりなのかわかったのだろう、番頭のトーマが表情を引き締めた。

 ヘンドリックがどんなに評判を落としても、クラリッサを巻き込ませない。むしろ婚約者に過ぎないまだ学生の彼女が王子の散財を憂いて、懇意にしているタナカ商会を通じて貧しい人々に職を与えた。そういう筋書きだ。

 噂なんて酒と同じ、毒にも薬にも使えるものだ。上手に飲めないようでは身を亡ぼす。


「王室御用達をなぜ目指さないのか不思議でしたが、こうなることがわかっておられたので?」

「馬鹿言え。うちみたいな新参が王室御用を目指してみろ、大店に目を付けられてあっという間に潰されるぞ。腕時計はたしかに高級品だが万年筆や女性用品はそうじゃない。タナカ商会はあくまで庶民の生活に密着した、便利なものを開発・販売する店だ」

「みんなが笑顔になれるもの、でしたね」

「そうだ」


 そうだよ。最初の商品は皮むき用ピーラーだった。子供でも簡単に使えて、包丁に比べて怪我をしにくい。百本作って即日完売した。今でも売れている。

 魔法が使えなくても組み立てられるので、パートタイムの主婦や勤労学生のアルバイトにも働いてもらっている。学校に行けない子供もだ。

 俺はこの世界ではろくに学校に通えなかったけど、前世の人生経験があった。おかげで思い切ったことをやれたものである。今世の親孝行はできたし、貧乏ながらにたくさんいた弟妹を学校に行かせてもやれた。


 経済ってのはこうやって回していくものだ。まずは一番多い最下層に金を行き亘らせて、使わせる。消費者に使える金がないんじゃ話にならない。

 子供まで働かせるなんて、という非難もよく聞くが、それはそう言えるだけの豊かさを持っているからだ。すべての子供に教育を施すのは俺ではなく国の、政治の出番になる。俺にできるのは、せめてたらふく食えるだけの仕事を与えてやるくらいだ。子供たちが働いている工場には社員食堂があり、格安で食べられるようになっている。商売は慈善事業ではないのだ。


「地道にやっていこう。欲張って一足飛びにやろうとすると足元の穴に気づきにくくなる」

「そうですね」


 設定がどうなっているのか俺は知らないが、少なくともクラリッサが悪役令嬢になることはないだろう。ヘンドリックと聖女候補だってお客様なら歓迎するさ。




お祭りはないけどかき氷。好きな人と歩く夕べ。

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