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訪問販売

作者: 星満 望

 ノックの音がした。


 今どきインターホン鳴らさないやつがいることに驚きを隠せない。インターホンのカメラを起動させ、訪問者を確認するが誰もいない。いつもの借金取りならこんな真似はしないはずだ。


 ノックの音がした。


 相変わらずカメラには誰も映らない。私は、玄関へと向かう。借金取りであっても今返す金はない。ただ、ノックの正体が気になっていた。私の耳がおかしくなったのか、風か何かのせいなのか。


 ノックの音がした。


 私は、玄関の覗き穴から外見る。誰もいない。人、動物、物それらすべて何もない。

 覚悟を決めて玄関を開ける。


「こんにちは、留守かと思いましたよ」


 なんと、さっきまで何もなかったところに男の首から上が浮いているのである。ちょうど成人男性の顔の高さにある。


「ぎゃぁあ!!」

「落ちついて下さい。あっ、不気味ですよね」


 男は、そう言うと何もなかったはずの所からマントのような布とともに身体か出てきた。いや、見えるようになった。


「見、見えるようになった!どういうことですか?」

「このステルスマントの性能はいかがですか?覆えば誰からも見えなくなります。もちろん、カメラもです」

「マントの性能のことじゃなくて、どうしてうちに?目的は何なんですか?」

「まぁまぁ、そう焦らず。訪問販売をしておりまして…」


 私は男の話を遮る。


「普通に現れてくださいよ。心臓が止まるかと思いましたよ」


 訪問販売に訪れた男は、にたにた笑いながら説明する。


「これが1番効果的なんです。この商品であるステルスマントの性能を実演して理解してもらうには」


 私は、納得してしまっていた。確かにインターホンのカメラにも映らない、見えないのは体験済みだ。とはいえ、金はないぞ。


「性能は分かったが、買わないぞ」

「あっ、そうでした。借金取りに追われてますよね」

「調査済みか、隠れるだけなら対して意味ないだろ。そんな金あるなら返済に充ててる」

 

 これ以上借金が増える真似はしたくない。金額は聞いていないが安いわけない。


「いえいえ、このステルスマントの使い方は隠れるだけではないです。見えないということは盗みもバレずにできるのです。宝くじなんかより、確実に現金を手にすることができます。もし、良心が許さないのでしたら、特殊詐欺を行っている者たちの住所を付けます」

「なるほど。それは良い使い方だな。それで、いくらなんだ」

「はい、お値段は……」


 ステルスマントの値段は月額制でひと月の支払いがサラリーマンの年収だった。買いきりではなく、毎月払わなければならない。支払いか滞るとステルスマントの機能をとめられ、マントに内蔵のカメラから犯行の映像が渡るらしい。それでも、悪い奴らから金を巻き上げ借金がなくなるなら安いと思い契約することにした。


「分かった。そのマントをくれ」

「はい、契約書に記入をお願いします」


 契約書を書き終え、マントと住所リストを受け取る。


「そういえば、自分で強盗すれば儲かるんじゃないのか?わざわざ住所も調べてるんだし。もしかして、良心が痛んだのか?」

「契約も終わったので、言いますが、良心なんて欠片も持ち合わせておりません。何が悲しくて延々と強盗しないといけないんですか?私は、あなたが強盗して稼いだお金で悠々自適に暮らせるのですから。住所も本物ですから安心してください」


 ノックの音がした。


 私は、強盗することなく転売することにした。せっかく、不労所得の簡単な方法が分かったのだから。ステルスマントの値段は、月額をサラリーマンの年収の1.5倍にすれば、あいつに代金支払いできる上に遊んで暮らせるだろう。


 ノックの音がした……。

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