033 業
◇
約1時間竹林で筍を掘りながら様子を見た。
噴火しない。
あれだけの木的な物なら根も凄い筈だ。
どれかの根がマグマ溜まりに当たる可能性は有った。
でも噴火する様子はない。
噴火してここじゃない場所に灼熱のマグマが流れたら。
そしたら少し面白かったなと不謹慎な俺は考えた。
見た事が無い事を安全な場所から見たい。
俺はそういう人間らしい。
作業で喉が渇いたモヨコと大阪猫が川に行った。
◇
数分後わかりやすい悲鳴が聞こえた。
大阪猫は悲鳴が上手だな。
やべえ。
ワクワクする。
不謹慎な俺は駆けながら思った。
すぐに大阪猫が見えた。
モヨコも見えた。
大事な何かが見えない。
石狩川だ。
石狩川が無い。
石狩川だった場所が地面になっている。
横幅30mはあった筈の石狩川が無い。
水位がどんどん下がっている。
対岸の火事がこっちまで来てしまった。
楽しんでいる場合じゃない。
水の確保が必要だ。
困ったら竹だ。
竹筒作って少しでも水を確保しとかないと。
川から竹林に振り返ろうとした瞬間変な声が出た。
「ヴぇ」
俺って悲鳴下手なんだな。
川の上流の方から左にゆらり右にゆらり。
サイズがおかしい。
ゆれてゆれてどんどんこっちに近づいてくる。
大きな何か。
今ここに流れてくるはずのないもの。
あれに関わっては駄目だ。
本能がガンガン警鐘を鳴らす。
そんな余裕は無い。
そんな余裕は無いのにモヨコが行った。
吐きそうになりながら俺も大阪猫も追従する。
きっと女の本能なんだろう。
流れてくる桃を見過ごせないのは。
◇




