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029 験


温泉に帰ってきた。


硫黄の匂いがする。


松明を焚き火に変えて夕飯と風呂の準備をする。


熊肉がまだ沢山残っている。


大阪猫は新鮮なワニ肉を焼いて冷まして喰いたいと云う。


もふもふちゃんの狩った獲物だから好きにさせる。


焼いた筍が微妙に甘くて旨い。


ワニは鶏肉みたいな味がする。


鳥って恐竜からの進化したものだからかな。


乾いた薄い熊肉はビーフジャーキーみたいになってる。


地面に太めの長さ50cm位の竹筒を埋める。


そこに2m50cm位の燃えている松明を差し込む。


この松明は戦闘用と安心用だ。


手榴弾は10m位離れた場所に置いてある。


流石に手榴弾オフの時間が無いときつい。


頭がおかしくなりそうだった。



夕方に象の一団が川沿いを歩いて通り過ぎて行った。


象のいる北海道か。


大陸と地続きなのかな。


特に急いでいる様子でも無かった。


川下に脅威があるわけではないんだろう。


象の牙は強そうだったが剣には使えなさそうだった。


大人の象が20頭位。


明らかに子供の象が5頭位。


子供を守るように囲んでゆっくり歩く。


あれが一種の理想形なんだろう。


象の強そうな骨格や分厚そうな皮膚を見る。


俺は暇が有れば鍛えるようにしている。


でも象を見ると無駄に思えてくる。


俺の身体で象に勝てるイメージが湧かない。


強い武器を如何に手に入れるかの方が大事な気がする。


でも本能が「鍛えろ鍛えろ」ってうるさいんだよなあ。


逃げる時には鍛えた脚は役に立つだろう。


そうだな。


如何に勝つかより如何に戦闘を回避するか。


こっち切り替えた方が良さそうだ。



逃走の事を考えているのに槍を作る手が止まらない。


堅そうな棍棒候補の木を集める。


短剣で約3mの棍棒を作っていく。


木を相手に強度テスト。


約10本目でようやく丁度良い強度の棍棒を見つける。


その先端の左右に細長い切り込みを彫り込む。


刀の柄を分解する。


棍棒の先端の左右に刀をつける。


ロンギヌスの槍みたい槍を作ろうとする。


なかなか上手く行かない。


思考錯誤を繰り返す。


モヨコの短剣を一つ借りる。


棍棒が約2mになったところでようやく槍出来た。


片刃だと振り回した時に逆に当たる可能性が有った。


両刃なら振り回した時に空気抵抗で刃の向きになる筈。


ロンギヌスの槍になる筈だったのに。


出来たのはトーテムポールの耳みたいだ。


松明を立て掛けた要領で試し斬りの太竹を縦にする。


刃が丁度当たる位置に調整して。


凪。


失敗。


色々駄目。


刃の次に棍棒が当たって竹を切り抜けれない。


刀より遅い。


振り回す半径が広いので林の中だと使いにくい。


思考の開始からおかしいのかも知れない。


突きに特化するか。


熊やワニの爪牙肋骨を使って釘バットを目指すか。


思考の開始からおかしい。


逃げに特化するなら今の手榴弾は最適でない。


大爆発弾に変えた方が適している。


逃げる途中で落とす三枚のお札の要領だ。


これなら追跡者を潰しやすいし荷物も軽量化出来る。


そんな事を考えながら片刃型の槍を作る。


元々柄だった部分を棍棒に穴を開けて埋め込んだ。


刃渡り約25cm。


全長約175cmの槍が出来た。


距離を合わせる。


凪。


竹をきれいに通過した。


冒涜だと思うが絶命済のワニを吊り上げる。


腹部テスト。


貫通。


頭部テスト。


貫通。


小型だからかな。


この武器であのサイズのヒグマに勝てる筈無いのに。


闘りたい。


殺りたい。


俺はあのヒグマにあの勝利に呪われてしまったらしい。


棍棒の先端から約1m。


棍棒の強度が落ちない間隔を掴むのが難しかった。


ワニの歯をネジ状に加工して埋め込む。


槍の穂先の下にワニの歯の釘バット加工を施していく。


ワニの歯バット部分でも太竹も無事粉砕出来た。


ワニの頭部も無事粉砕出来た。


刃部分がわかりやすい方がいいかな。


ワニの血を柄の上部に塗る。


乾かすとその部分の手触りが良くなった。


ワニの血を槍の持ち手部分に塗りたくる。


血って便利だな。


俺の獣の槍が何とか完成した。


多分いま深夜だ。


もしかしたらもうすぐ明け方かも知れない。


モヨコと大阪猫と寝組を交代して槍を持って寝た。


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