020 式
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「お兄さまは駄目人間ですねえ」
お肌がすべすべになったモヨコが溶けるような笑顔で笑う。
俺は熊肉串を炙っては食べ炙っては食べる。
旨え。
「ん〜俺ら何か忘れてないか〜」
ちょうど良く冷めた熊肉を頬張りながら大阪猫が言う。
猫舌か。
「鳥の荷物の中身の確認?」
「それですわ。お兄さま」
「あいつ鞄にトラップ仕込んでそうやからなあ」
今鞄を開けるか。
食事を続けるか。
それが問題だ。
「勝手に開けたら鳥さんに祟られません?」
「おいおい。死人を勝手に殺したらあかん」
「お前ら不謹慎だぞ。南無阿弥陀仏蓮華教」
「色々混ぜ過ぎやろ。故人は大事にせんと」
「派手に弔ってあげたら鳥さん慶びますよ」
「湯上りのモヨコは可愛いなあ。たまらん」
「おい太郎。本音がドグラマグラしとるぞ」
「猿人間の交尾って猫人間的にはどう思う」
「命を繋ぐ儀式やからなあ。神聖な気持ち」
「だってモヨコ。大阪猫の気持ちわかる?」
「猫同士が交尾してたら私は応援の気持ち」
「あ〜なるほど。大阪猫。温泉空いてるよ」
「わかったわかった。焚き火の向こう側な」
「足湯って長く入れて気持ちいいらしいよ」
「周囲の警戒は張っとくから安心して営み」
「お兄さま。私の気持ちを聞くべきでは?」
「一晩中聞くから。モヨコ。おいでおいで」
焚き火を挟んで温泉の反対側に。
煙で十分に燻した熊毛皮を敷く。
モヨコが子熊の燻製を分けてくれる。
おいしいなあ。
これでもう後戻りは出来ない。
髪質。
髪の色。
お互いの顔つき。
日焼けしにくい場所の皮膚の色。
両親が同じ可能性は低いと判断した。
高い希死念慮。
片方が死ぬと両方が死ぬ関係性。
先代ドグラマグラ太郎と当代ドグラマグラ太郎。
俺が彼に無い記憶を持っていた場合のモヨコの行動。
俺が先に死んだ場合のモヨコの生きる目的作り。
重なる戦闘と勝利の高揚。
すぐそばにある死。
これで妹戦は終戦。
鳥と再戦の可能性。
其の為の共犯意識。
本能が饒舌に語る。
死が先か。
出産が先か。
安息地到着が先か。
其れとも此処が安息地か。
とりあえず全部温泉が悪い。
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