018 石
◇
落下する大阪鳥。
なんとか着地する。
右手の手首を左手で握りしめている。
焼けた石を掴める鳥か。
かっこいいねえ。
葉の付いた3mの竹1本。
左手で鳥の頭の斜め右1mの距離に火の長竹に掲げる。
パチパチと小気味の良い音が聴こえるかな?
乾いた茶色い竹の葉が燃えている。
右手に火の2m竹を握る。
左手の下をゆっくり通り交差させる。
12時方向に長針竹と9時方向に短針竹。
鳥包囲用と猫牽制用。
凪の腰回転の準備は出来てる。
時間が無い。
だから更に時間を減らす。
「焼き鳥か。たこ焼か。選べ」
俺は大阪鳥を追い詰める。
鳥が殺気を放つ。
ファイアに触ったお前が全部悪い。
「悟」
新しい猿真似呪文を並べる。
「与」
カウントダウン気付くかなあ。
「砂」
大ヒント。
「似」
火竹をどんどん近づける。
「遺」
綺麗な火が邪魔で鳥の醜悪な顔が見えない。
「たこ焼」
大阪鳥が答えた。
あんまり使わない言葉を使ってみる。
「あ?」
「たこ焼オクトパス」
「は?」
どんどん火を近づける。
あと30cm。
「ドグラマグラ太郎ティーチャー」
鳥が絞り出すような声で流れる動作で土下座する。
土下座で火から自然に離れやがった。
こいつ最高。
「たこ焼オクトパスが食べたいです」
俺は左手の握った燃える竹を鳥の背中の上に落とした。
「うおエアああアアアア」
大阪鳥が転げ回って火を消そうとする。
賢い鳥だなあ。
旨そう。
右手に残った2mの火の竹を両手で掴む。
示現流。
一歩踏み込んで叩き込む。
「グボぇあアアアア」
斜め上段火炎凪。
鳥の腹に火が映える。
炭で出来た黒と赤って最高に綺麗だ。
でも残念。
「猫。水をかけてやれ」
鳥から離れ猫とポジションをスイッチする。
大阪猫が竹筒を拾い水を掛けようと駆けつける。
でも残念。
鳥は竹筒水筒から逃げだした。
仕掛けられていない罠を警戒したんだよな。
超わかる。
中途半端な火の鳥が逃げて逃げて川の中に飛び込んだ。
河童かよ。
俺は残心し続ける。
半刀拾って構えていて正解だったな。
猫を行かせて良かったな。
やっぱり余力を残しているよな。
両手に水入りの竹筒を握りしめて猫は呆然としている。
鳥戦続くかなあ。
次は猫戦かなあ。
たこ焼オクトパスが遠い。
本州が遠く晩御飯も遠い。
北海道はまだ朝になったばかりである。
◇