017 生
◇
「ファイア」
俺は呪文を唱えて石を高く放り投げた。
俺の一晩かけて考えた戦略も準備もプロットも燃えた。
鳥にはただの石に見えるだろう。
正解。
ただの石だ。
「遊ぼうぜ。大阪鳥」
「ワッツ?」
高さ50m行くかな。
鳥が翼を広げる。
取りに行くのか?
俺は適当な高さの竹を拾う。
鳥が高さ20mで石をキャッチ。
「ただのストーンやんけ」
そのまま投げるか?
俺は竹バットの一本足打法で迎える。
「大阪猫。観戦頼む」
本命はモヨコの護衛。
伝わるかなあ。
鳥が石を持ったまま着地する。
予想外。
飛びながら投げるのはきついか。
鳥が振りかぶって石を投げる。
いいフォーム。
羽が邪魔してるな。
でも関係無い。
球が小さい球技は全部苦手なんだよ。
大振りした。
空振りした。
掠めもしない。
「ストライク」
大阪猫が言う。
野球の概念は有りか。
「ちょっとタイム。刀貸してくれ」
大阪猫に頼む。
鳥が身構える。
まだ大丈夫なのにな。
思考リソース削っておくか。
借りた刀を抜き身で適当な竹を2回凪。
竹筒が出来る。
適当に何度か大阪鳥を視線を送る。
これを3回繰り返す。
3本竹筒出来上がり。
残った余りの材料を意味ありげな場所に投げて配置。
鳥の注意先を増やす。
「テンポ悪いなあ」
ごめんな大阪鳥。
熊皮を羽織っているからあったかいな。
熊腕と熊足を適当に結ぶ。
爪と歯は使えるかな。
懐があるって言うのはいいもんだな。
刀で熊手袋を2つ作って鳥にわしわし自慢する。
両爪に注意分散。
妹と猫にも爪自慢。
「ニャー」
俺が言う。
「ニャー」
大阪猫が返す。
サイン完了。
大阪鳥を視界に入れる。
用意させるパターンは増やせたかな。
鳥も猫も爪が鋭い。
熊手袋くらい勝手に作っても大丈夫だろう。
刀を猫に返して川に水を汲みに行く。
小川かな?
魚は見えない。
竹筒3つに半分水を入れる。
川の石を3つを懐に入れる。
石は黒い石を選んだ。
乾いたら白くなるかな?
まあいいや。
大阪鳥が待ってる。
水をこぼさないように歩く。
焚き火右横2m。
武器竹置き左横2m。
道具竹置き斜め左横2m。
モヨコと猫は俺の斜め左10mで竹で何か作っている。
ベストポジションだな。
大阪鳥は20m前にいる。
野球ってこの距離感だっけ?
水入り竹筒と黒川石を右手側に置く。
「ファイア」
呪文を唱えて水入り竹筒をもっと強く投げる。
放物線の途中で水が全部出てしまう。
石ほど高さが出ない。
20mかな?
熊手袋がまだ馴染んでないか。
「ウオーターとバンブーやないか」
悲しそうに鳥がまた飛ぶ。
おまけを用意しておいたから大丈夫。
黒石を鳥に当たらないように高く投げる。
「ドグラ!」
大阪猫が気づいて叫ぶ。
もう遅い。
俺は竹バットをすでに構えている。
多分40mか。
高さ出ないなあ。
「鳥!やばい奴や!取るな!」
大阪猫が叫ぶ。
「なんや下手なコンビ芸やな。仕込みが甘い」
意に介さず鳥が黒石をキャッチ。
空中で身体を腕を上に足を下に弓なりにする。
空中投球フォームか。
そして鳥は俺に投げ落として当てる筈の黒石を。
掌から零れ落とした。
◇