013 猿
◇
目を開けると横にモヨコがいた。
「おはようございます。お兄さま」
熊皮の内側の中で2人きり。
モヨコが竹の中に折れた刀を入れた即製の槍?を見せる。
竹が切れるから何回も薙げない。
突きは行けるか。
刃が短くないか?
15cm?
伸びるギミックでもあるのか。
ぼんやりとした頭で考える。
「私。切っ先の使い道。考えました」
モヨコが言う。
「一緒に死にますか?お兄さま」
モヨコが笑う。
やっぱりヤンデレか。
知ってた。
綺麗な顔をしている。
手入れをしている様子は無かった。
遺伝子操作人間系か。
俺もかな。
人間って進化するとこうなるのかな。
俺の刀はどこだろう。
大阪猫が使っているのかな。
随分寝た気がする。
いつ間にか横に寝かされている事に気づく。
猫の仕業か。
俺が寝転んだのかな。
モヨコが鳥と交代して大阪チームが警戒班か。
ああ返事しないと。
返事をミスったら死ぬ。
死ぬ方法と死ぬ場所。
誰と死ぬかを選べる事は悪くない。
これは本音だが今言うのは確定的に愚か。
「今は死ねない」
「其れは何故ですかお兄さま」
「遺り残した事がある」
「其れは何ですかお兄さま」
モヨコがもう片方の手からも刃を揺らして笑う。
短刀2本。
折ったのか。
切り口を確認する。
用途が被るが悪くはない。
確かに長いままでも50cm同士で被るか。
モヨコの補強か。
誰の入れ知恵だ?
これだけ視界が見えるならもう朝か。
9時間寝ていたのかもしれない。
どういう組み合わせで警備が組まれた?
何故俺は眠りを許された?
鳥はまだいるのか?
モヨコと一緒に最後を迎えるより幸せな事って何だろう。
なんだかわからなくなる。
「答えてくださいお兄さま」
二つの刃がお互いの喉に近づく。
モヨコの首に真一文字に縫合痕らしきものが見えた。
縫合痕が一周してる?
頭と身体が別の生き物?
一度切り離されてる?
強烈な本能的嫌悪感が目の前の生き物を拒絶する。
生理的に無理ってこう言うことか。
本能が拒絶する。
認識が目の前にいる女をバケモノにする。
同時に嫌な予感。
俺は自分の首筋を右手で触って確かめる。
9時から12時を超えて6時の方向まで自分の首をなぞる。
ああ。
一周しなくてもわかる。
ここにもう一匹バケモノがいる。
◇