010 竹
◇
睡眠交代まで大体あと150分かな。
目の前に折れた刀を並べた。
50cmと50cmかな。
柄側の断面は最高。
これなら柄側から半分は短刀としてそのまま使える。
突きもいける。
切っ先側半分の刀はどうしようか。
鞘もある。
鞘を打撃に使う?
無いな。
壊れる。
大阪鳥がダブルソードか槍ルートとか言ってたな。
槍?
これ俺もしかして認識誘導されてるかな。
ちょっと理想形から逆算してみよう。
俺の3m斜め右に大阪鳥が来た。
集めた枝を抱えている。
俺は顔を動かさずに観察する。
大きく羽を上に広げて一回。
揚力で5m。
更に一回羽ばたく。
これで地上10mかな。
三階建くらいの屋根の高さか。
来るかもしれない襲撃者の俯瞰。
俺の動きを詳しく俯瞰。
もっと高い場所もあるのに行かないのはそういう事かな。
一夜城らしき砦を作っている。
物見櫓かな。
大阪鳥の視力限界と夜と昼の性能はまだ解析不十分だな。
まあ良い機会かな。
何を見せるか何を見せないかが大事だな。
柄側の刀を鞘に入れる。
これで敵対者に長刀短刀ミスディレクションが出来る。
鞘壊れ覚悟ならこの長さで鞘一撃いけるかな。
鞘突きも面白いな。
敢えて鞘を掴ませるのもありか。
軽く振るくらいでは抜けない感じ。
振って敢えて鞘を飛ばすのもありかなあ。
んーあんまり計算出来ない要素は省きたいな。
理想形から考える。
実証済み示現流。
棒でいいから熊戦の長さは欲しいな。
棍という手もあるか。
『ラン。ナー。チャー』
検索ヒット。
『李書文』
拳児読んでて良かった。
周囲を見渡す。
直径3cmくらいの竹か枝か幹を探す。
野営地の焚き火を中心に大きく円で囲むように歩く。
闇って怖いな。
川には良さそうなら素材は無い。
魚いるかな。
魚人間存在するかも。
あんまり水には近づかない方がいいな。
焚き火を囲んだ反対側30m位に竹林が有った。
意識しないと認識しないもんだな。
近くに生き物の気配がない事をまず確認。
テスト1。
直径5cmくらいの竹を左手で掴む。
12時から6時までの方向を左手の平で押さえた。
右手を柄にかけ姿勢を腰を中心に左回転をかけていく。
これくらいかな。
解放。
一気に右回転。
凪。
握った竹1本目を通過して2本目に食い込む。
俺の凪レベルは竹レベル1か。
鞘を握らないと抜刀術は安定しないな。
下手すると抜刀ミスで詰む。
ベルトを調整するか。
鞘から一度抜くか。
テスト2。
左手で鞘を掴み右手でカチリと刀を鞘から抜く。
右手と刀が鞘から自由になるまで5cmかな。
結構刃が見えるな。
左手を先程同様竹を掴む。
凪。
握った竹1本目を通過して2本目に食い込む。
威力は変わらないが確実に発動する。
手数が増えるのはマイナス。
これでも竹レベル1か。
テスト3。
左手は鞘を掴んだまま。
ゆっくりと左回転。
一気に凪。
竹レベル1.1。
今回は抜刀と威力に集中した。
竹掴みを省いた分衝撃が分散したか。
とりあえず現時点でこれが最強説。
結果的に基本抜刀術が最善か。
作業的には左手竹掴み右手刀で上段切りが最強だった。
ガッガッと竹を切っていく。
凪よりもチェストか。
回転よりも重力か。
回転と重力は?
ベルトを袈裟懸けにする。
鞘が右肩から左腰にする。
左手で鞘先端を押さえる。
片手チェスト抜刀術。
竹レベル1.2?
刀抜き身。
柄を両手で握りしめる。
背中に刀がつくくらい反る。
斜め上段チェスト。
竹レベル2。
テはぁー。
竹って結構硬いな。
気がつくと運ぶのが疲れる量の竹が沢山落ちていた。
作業興奮に満たされて俺は幸せな気分になっていた。
睡眠交代まであと多分60分。
戦う相手って結局いつも時間なんだな。
そして。
戦闘準備も時間との戦いなんだな。
時間って足りねえなあ。
いくつか解決策がヒットしたが今は竹の時間なんだよ。
◇