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秘密の特訓

随分久しぶりの投稿です。


不定期ではありますが、徐々に続けていこうかなと思います。

「ふんふんふん~」


今日も一人で日課に出かける。


時間の概念は微妙だが、前世で言うところの午前四時くらいだろうか。


家族はみんな寝静まっているし、早起きのリーリヤが起きてくるにはあと二時間程時間がある。


そう、この二時間こそが家族にバレずに心置きなく体を鍛えることのできる黄金タイムなのだ。


村を襲撃した山狼との戦闘時に偶然発見したトレーニング方法は非常に効率的だが、命の危険が付きまとう諸刃の剣だ。


出来れば安全を確保しながら行いたい。


「わおーーーーーーーーん」


そんなことを考えていると比較的近くから獣の泣き声が響いてくる。


この村からほど近い場所で珍しい。


というか、この吠え方はおそらく山狼だ。


モンスターの生態にはあまり詳しくないが、群れに対して何らかの合図を送っているのだろうか。


「というか、山狼は狼と同じ分類でいいのかよく分かんないけど」


しかし、数分立っても返答のようなものは帰ってこない。


「うーん。気になるし一応見に行ってみるかな」


一人でいると独り言が多くなるが、それは仕方ない。


声のした方角に勘を頼りに進んでいく。


距離的には一キロ程。


丁度良い距離だったので、全力ダッシュと軽いジョグを繰り返すHITを行いながら移動する。


息が上がるほどの心拍数に上げた状態を維持することで、心肺機能を向上させる効果がある。


ついでに言えば、脂肪の燃焼効率が上がるため、体のカットを綺麗に出すには有効な手段となる。


「ふぅ、ふぅ、ふぅ」


呼吸を整えつつ、汗をぬぐう。


そろそろ目的地だ。


相手が動物ならこちらの居場所は既にバレているだろう。こちらの存在を隠すことは諦め、いつでも迎え撃てるように呼吸を整える。



案の定。


「ぐるるるるるる!」


低いうなり声と共に一匹の山狼が俺の目の前に現れた。


以前に村で遭遇した個体よりも一回り程でかい。


「俺に敵意は無いんだが」


「がう!」


流石に言葉は通じないらしい。所詮は畜生か。


「ん?畜生?畜産、そうか。その手があったぞ」


自分のひらめきに、思わず、ポンと手を打つ。


その動作を威嚇と勘違いでもしたのだろう。山狼が俺に飛び掛かってくる。


ガブ!


肩口に深々と牙が突き立てられる。


これは痛い!


以前の物よりも大型な分、威力も大きいようだ。


すかさず回復魔法を発動し、傷を癒していく。


噛みついたはずの牙が徐々に筋肉に押し返されていく。


「そうそう。この感覚!やはり段違いだ!」


俺が狂喜するとそれに反比例するように山狼からは戸惑いが感じられる。


まあ、噛みついたはずなのに、顎がどんどん開いていくと気持ち悪いだろう。


遂に牙は俺の肉体から排出され、山狼は戸惑いながらも、再び噛みついてくる。


やはり左右のバランスは大事だ。


「こっちを頼む」


さっき噛まれた右側とは反対の左側を差し出し、嚙んでもらう。


「うむ。素晴らしい咬合力だ。俺にもその力があればいいのだが。ないものねだりは良くないな」


先程と同じように、回復魔法を掛け筋力を増加させていく。


トレーニングは勿論楽しいし、自分を追い込んでいくのは勿論気持ちがいい。


しかし、この極限の命のやり取りを行う感覚。


これは通常の筋トレでは得ることができない物だ。少し癖になっている気もする。


そして一時間に渡り、全身を噛みつかれ、切り裂かれ、ずいぶんとボロボロになってしまった。


服は早いうちに脱ぎ捨てたおかげで被害は少ない。我ながら英断だ。


「名残惜しいが今日はこれくらいにしようか」


いまだに腕に噛みついたままの山狼の首に腕を掛け、頸動脈を締め上げる。


今回は殺しはしない。


適度に気道をふさぎ、脳への酸素の供給を絶つと山狼の動きが鈍くなり、ストンと墜ちた。


「よしよし。実感台確保だ」


思いつきを実行するべく、気絶したままの山狼を背負い上げ、担いで帰る。


丁度いい重さ。普段行うダンバルなどでは得られない不規則な重さが全身の補助する筋肉を適度に刺激していく。


「中には天然の石を持ち上げるというトレーニングもあると聞いたがなるほど。これは理に適っている」


思わず感嘆の声が漏れる。


意外な発見があるものだ。


暫く山狼を担いで走っていくと、目的地に到着する。


村から少し離れたところに作った、俺の秘密のトレーニングスペース。


大人では通り抜けられない程の隙間を抜けた先にある、畳六畳ほどの洞窟。


丁度いいのでここをジム代わりに利用している。


山狼を置き、適度に回復魔法を掛けておく。


これでケガが原因で死ぬことはないだろう。まだ当分起きそうにはないが。


近くで栽培している豆を適度に収穫し、器に盛っておく。


肉は手に入っていないからしばらくはこれで我慢してほしい。


入口の僅かな隙間を覆える程の岩を移動させ、閉じておく。


今のところ誰かにバレている形跡もないし、当分はこれで問題ないだろう。


やはり筋トレは一人で行うよりもパートナーと行う方がいい。


ウェイトトレーニングでもパートナーと協力することで限界を超えた追い込みを行うことで筋線維を苛め抜き、


トレーニング効率を増大させることができるのだ。


今回はそのモンスター戦闘トレーニングバージョン。


長いな。


このトレーニング方法はスパーリングと名付けよう。


山狼を飼育し、戦闘を繰り返す。


山狼にも回復魔法を施し、筋肉を増加させることで戦闘力を向上させ、常に俺の筋肉にダメージを与えられる状態にするのだ。


これがどれほどの効果をもたらすのか。


暫く様子を見ながら続けてみよう。



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