『第七話 因縁』
◇ ◇ ◇
◇イーストメトロポリス・スタジアム・関係者通路
制止する警備員をぶっ飛ばし、強引に関係者通路に侵入したタイガはレンの姿を探しまわっていた。
(レンッ!!……どこにいるッ?)
しばらく探し回っていると意識のない状態で担架に寝そべるレンが、医療班に運ばれて廊下の奥から走ってきた。
「大丈夫かッ!?レンッ!!レンッ!!!」
運んでいる医療班に割り込む形でレンに話しかけるタイガ。悲しくもレンからの返事はない。
「何だきみは!?患者の容体は重傷だッ!急いで搬送する必要があるんだ!邪魔をするなッ!!」
そういわれたタイガは医療班に突き飛ばされ廊下の壁に背中からぶつかる。焦りと動揺、ショックで放心状態になるタイガは、そのまま背中からズルズルと廊下へ座り込んだ。
(チクショウッ…何であいつが…こんな目に………)
幼い頃に共に憧れ続けたにRAISE FLAG選手権にやっとの思いで出場できるかもしれない所まできた。そして自分が結果を残すことで最下位に沈み貧困で苦しむこのイーストメトロポリス地区を救うんだと、そう言っていたレンとの会話が走馬灯のように頭をよぎる。
(やっとじゃねぇか……やっとの思いでここまで来たんだろうがッ……)
こみ上げてくる悲しさ、悔しさ、怒り、憎しみで心の中がグチャグチャになるタイガは、しばらくその場から動けずにいた。
すると少し間を空けて身支度を済ませたエリック・カミールが帰路につくため廊下を歩いてくる。
「―――あのゴミが――――」
未だ怒りがおさまらないエリックはレンを侮辱するようブツブツと発言を繰り返していた。その存在に気づいたタイガは腹の底から湧き上がるとてつもない怒りにより、理性をコントロールできずバッとエリックの胸ぐらに掴みかかる。
「てめぇぇぇぇぇええええッ!!!!」
そのまま壁まで押し飛ばす。
「勝負はもうついてただろうがッ!何でだッ!何でだよッッ!!!」
そう憤るタイガに対し、風間レンの関係者であることを理解したエリックは、ニヤリと笑い話はじめた。
「あ~アイツの知り合いなのかキミ。最底辺の分際でさぁ~この俺様にいい試合をしようだって?………生意気なんだよッ!!!」
(殺す…)
「――だから、わからせてやったんだよねぇ――」
(殺すッ!……)
「――RAISE FLAGっていうのはなぁ、殺し以外は何でもOKなんだよ?わかるかなぁ??――」
(殺すッッッ!!!!!………)
そう思った瞬間タイガの体は既に動き始め、腕を振りぬきエリックに殴り掛ろうとしていた…………が、
「いたぞっ!!アイツだッ!!!」
直前で、先程突破した警備員達に見つかり、取り押さえられるタイガ。そのまま地面に押さえつけられる。
「今ここで俺と勝負しやがれッッッ!!!」
警備員に取り押さえられながらも見上げ、睨みつけ吠えるタイガに対し、掴まれてよれてしまった服を正しながら見下し、ほくそ笑むエリック。
「はぁ~~~RAISE FLAGは喧嘩じゃないんだよ。ド底辺地区民くん。わかる??」
「相手をしてほしければRAISE FLAGに出場してこいよ。まぁ最底辺地区のお前たちが俺たちと試合するところまで生き残れればの話だけどな。ハハハッ!!」
そう笑いながら言い去るとエリックは廊下を歩いて行った。
「待ちやがれテメェェェェエエエ!!!………」
むなしいタイガの叫び声だけが廊下に響き渡った。
◇ ◇ ◇
◇イーストメトロポリス・監獄
警備員に捕まり監獄に閉じ込められていたタイガは、独房で一人考えみながら気持ちの整理をつけようとしていた。
「……………」
しかし、エリックのような人間が上級地区で裕福な生活を送れている現状の不条理な社会システムへの疑念や、意識の戻らない親友に対して何もすることができなかった自信の不甲斐なさを痛感し、
(どうしてだ…どうしてなんだよッ………)
悔しさのあまり噛みしめた唇からは血が滲み出る。
(エリック・カミール………アイツだけは絶対許さねぇッ!!………)
苛立ちを抑えきれないタイガは、その気持ちをぶけるようにコンクリートで出来た壁を殴る。
ドガンッ
普段喧嘩で使いなれてるはずの拳が、今日はいつもよりヒリヒリと痛んだ。痛めたその右手を引きもどし胸の前で眺める。
(レン、見てろよ、アイツは俺が絶対に倒すッ!……)
そう決心したタイガは様々な感情が渦巻く中で、RAISE FLAGへの出場を心に誓った――
読んでいただきありがとうございます!(*'ω'*)
これにて一章終了となります!RAISE FLAG選手権へ出場することを決めたタイガの物語は二章でお届けします!