『第三話 歓喜と葛藤』
◇ ◇ ◇
◇イーストメトロポリス・商店街の屋台
商店街の屋台で昼食をとろうと考えるタイガ。様々な料理の店が立ち並ぶ中、ホットドックの店を選ぶ。
「いらっしゃいっ!」
メニューの看板を眺めると一番豪華なホットドックに目が留まる。
「デラックスホットドック1つ。」
「はいよぉ!毎度あり!銅貨5枚ね!」
ガサゴソとポケットの中をあさり中身を取り出す。手を開くとそこには紙クズと銅貨2枚しかないことに気づく。
「やっぱ普通のホットドックを。マスタード多めで。」
銅貨2枚を渡しマスタードのたっぷりかかったホットドックを受け取るタイガ。おもむろに席につき食事を始めようとすると、
「聞いてくれッ!タイガ!!」
どこから現れたのか勢いよく後ろからレンに声をかけられる。驚きのあまり握っていたホットドックを潰してしまう。
「いきなり話しかけんなよッ!見ろこのホットドックくんの有様を!!」
回り込むように対面の席に座ったレンに対し、弁償しろよと怒りながら潰れたホットドックを見せつける。
「悪かったって!後でデラックス奢ってやるから文句いうなっ!」
食べたかったデラックスを買ってもらえることで少し表情が柔らかくなるタイガ。珍しく興奮して話しかけてくるレンの話を聞くことにする。
「代表候補者に選ばれたんだよ!!これでこの地区のみんなを救えるかもしれん!やってやる!」
目を輝かせながら嬉しそうに語るレンの姿に、嬉しさがこみ上げてくるが気恥ずかしさもあり素直に表現できず皮肉めいたことを言ってしまう。
「良かったじゃねぇか!まッ予選で敗退しないように頑張れよなッ!」
「あぁ!まずは1週間後の練習試合で結果をだしてみせるさ!」
そんなタイガの皮肉も気にせず前向きな姿勢を見せるレンは、テンション高めに練習試合を観に来いよとタイガを誘う。
「あー…まぁ……暇だったらな…!」
面倒くさそうな表情をしながらも渋々試合を観に行くことを約束することになる。その後レンは具体的な日時や会場などの情報に加え、対戦相手が強豪のフランチェスであることなどをひとしきり説明すると立ち上がる。
「この後早速トレーニングにいってくる!邪魔したな!」
嵐のように過ぎ去っていくレンを見送るタイガ。
遠くに行ったレンの背中を眺めながら、、、
「ッたく、デラックス買う約束はどうしたんだッての!……………本当に良かったな。」
自分が子供の頃に憧れていたRAISE FLAG出場への道を真面目に切り開いた親友に対し、純粋な喜びだけではなく、嫉妬や羨ましさ、不良になって今更引けなくなってしまっている自分。対照的な二人の在り方に複雑な気持ちと感情が芽生えた瞬間だった。
◇ ◇ ◇
◇イーストメトロポリス・不良の集会場
「――それは本当か?」
「はい。確かに風間レンというやつと一緒にいることが何度か目撃されています。この風間レンというやつはどうやらRAISE FLAGの代表候補者として、来週行われるフランチェスとの対外地区練習試合に出場するようです。そしてどうやら炎堂タイガはこの試合を観に行く約束をしている模様です。」
集会場にある大きなソファに座っていたゴウは、横に立ち身辺調査の結果を報告をする子分の話に耳を傾けていた。テーブルを囲むように配置されている両脇のソファには雷鵬セイヤと氷室ジンも座っていた。
「なるほど。スタジアムに行く道は確かココと―」
目の前の机の上に置いてある地図を確認し指をさしながら話はじめようとするゴウに対し、何かにピンときたように話に割って入り込むセイヤ。
「そこで待ち伏せってワケかッ!!」
それに呼応するかのようにジンも話をはじめる。
「奴の家がここだとすると、恐らく通るのは―」
淡々と分析と予想をするジンに対し、ニヤリと不敵な笑みを浮かべながらゴウが結論を導き出す。
「ここで、あいつを待ち伏せる――」