表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RAISE FLAG  作者: 江戸悠然
第一章 決意
2/11

『第二話 代表候補者選出会』

◇    ◇    ◇



◇イーストメトロポリス・タイガの自宅


不良に逃げられたタイガはむしゃくしゃしながら自宅に帰宅する。


 「ったくよォ!逃げんなら初めから突っかかってくんじゃねぇよな!」


イライラしながらもTVのリモコンを付けると、そこにはRAISE FLAGの特集番組が流れていた。


 「今年の注目チームはやはりフランチェスじゃないでしょうか。特にエリック・カミール選手の高性能E-GEARといったらすごいですよ。」

 

 「いやいや、インディアナの選手もすごいですよ、彼らのベースとなる身体能力といったら脅威でしかありません。」


胡散臭そうなコメンテーター達の会話が続き、嫌気がさしたタイガはチャンネルを変えようとするが、


 「そういえば今年はジャイアントキリングはあるんですかねえ?例えば最下位のイーストメトロポリスとかどうなんでしょう?」


 「10年連続最下位のイーストメトロポリスじゃぁ無理じゃないですか?可能性ゼ・ロー!」


  辛口コメンテーターのギャグに一同の笑い声が流れる。


 「まぁまぁ全国ネットなんでそんなこといわないでくださいよ。来月このチームの模擬戦もあるみたいですし、注目したいと思います――」


TVを切りベッドのほうに向かうおうとすると、ふとベッドの脇にある写真に目が止まる。そこには幼い頃にRAISE FLAG選手権を観客として見に行ったときの自身の写真が飾ってあった。


 「…………………」


昔の記憶がよみがえり少しばかりに物思いにふけるも、少し間をおいてから立ててある写真を倒す。そのままベッドに倒れこみながらはぁ…っとため息をつき眠りについた。




◇    ◇    ◇



◇イーストメトロポリス・RAISE FLAG代表候補者の選出会場


普段はRAISE FLAGの実際の競技が実施されている大きなスタジアムのフィールドに、コツコツとお金を貯めてやっとの思いで購入したE-GEARを持ったレンの姿がはあった。数百、いや数千はいるであろう大勢の受験者の数に圧倒されながらも、イーストメトロポリスの代表候補者が決定されるその試験に挑もうとしていた。自身を鼓舞するように両手で頬を叩き気合いを入れたレンは、左腕にE-GEARを装着しながら自分の順番が回ってくるのを待っていた。


E-GEARと呼ばれる身体能力強化装置は、それぞれの選手の個性に合わせて腕・足・腰などといった好きな部位に装着ができる仕組みになっている。ただし、使用時にはその出力に応じた身体エネルギーを大量に消耗するため、強化したいポイントに部分的に装着することが一般的となっている。また稼働に際しては身体エネルギーと同時にカートリッジ式の燃料が必要となり、競技中フィールドに疎らに設置されている燃料をどのタイミングで補充していくかが、勝利を左右するポイントとなる。


自分の夢に向けた第一歩をやっとの思いで踏み出せるこの瞬間に興奮と緊張が入り混じるレン。幾分かの時がたつと受付の人間から声をかけられる。


 「――次、387番、風間レン」


 「はいッ!」


 「個人登録ということでいいかな?ではまず基礎身体能力のテストを行う。その後E-GEARを用いた特性テストを行い、最後に仮チームで実施する4対4の模擬戦を行う。」


 「よろしくお願いします!!」


走力、筋力、持久力などの基礎身体能力のテストを順調にクリアしたレンは特性テストを実施することになる。

特性テストはRAISE FLAGの特殊なフィールドを再現する形となっており、攻撃を専門とするフラッガーは「スピードラビリンス」「ストロングジャングル」「ハイマウンテン」、守備を専門とするガーディアンは「ガードクリフ」といった合計4種類フィールドに応じた特性テストを選択できるようになっており、レンは左腕につけたE-GEARを用いて「強さ」が試されるストロングジャングルを選択することにした。




 「3・2・1、はじめ!」




さながらレースのスタート合図のような発信音と共に特性テストが始まった。



この試験では本番同様のジャングルのように入り組んだ鉄のフィル―ドの奥にあるFLAGを、



鉄塊を破壊しながらどれだけ早く手にいれられるか、そのタイムが問わる内容となっている。




 「はぁッ…!!」




拳を振り抜くレン。ひとつひとつのパンチに威力はないが、



その拳のスピードは他の追随を許さない程の速さであった。



スピードを活かした連続コンボによりどんどん鉄塊を破壊しながら進んでいく。




 「おい、あれ見てみろ!」


 「すげぇ………」


 「何だあいつ!?」




レンの圧倒的なスピードに気づいた他の受験者達がザワつき始める。



そんな観衆のザワつきも集中しているレンの耳に全く入らない。



  (この調子だ、これならいける!)



心の中でそう確信したレンはさらにフィールドの奥へ進んでいく。


何重にも重なる鉄塊を破壊し続け、ゴールとなるFLAGへ直進していく。


恐ろしい速度で突き進んでいたレンが、このまま順調にゴールするかと思われたその瞬間、とても大きな鉄塊が目の前に立ちはだかる。





 「くッ……!」





先ほどまでと同じように連続コンボを繰り出すレンだが、



あまりの大きさと分厚さに中々破壊することができない。



 (何て硬さだ…!くそッッ、、、)



時間をロスしていることに次第に焦り始めるレン。



しかし無慈悲にも時間は過ぎ去っていく。



 (こんなところで躓いていられるかよ…!)



そう考えたレンはチラッと残りのカートリッジ式燃料の残量を確認する。



 (未だ余裕はありそうだし、こうなったらやるしかない!!)



そう考えたレンは覚悟を決めてあることを決心する。




 「ギア・アクセラレーション!!!」




そう叫ぶと左手に着けていたE-GEARに変化が起きる。



ガシャンガシャンとタンクに入っていた燃料が丸々1本なくなり、空となったカートリッジが吹き飛ぶ。



ゴォーといった音を立てながらE-GEARの構造が変形しはじめた。



変形したE-GEARには通気口のようなものが3ヶ所でき、そこから勢いよく風が噴射される。



実はE-GEARを一定量の燃料を一気に消費することで、一定時間の間変形強化形態に進化するのだ。



 「いっけぇぇええええ!!!」



そう叫ぶレンは魂のこもったその左腕を、分厚く頑丈な鉄塊に全力で撃ち込む。



ピキピキピキ…ドゴァァァン



するとその大きな鉄の塊に大きな亀裂が生まれ粉々に砕け散る。



砕け散った鉄塊の先にはTVで見るよりも一段と赤く見えるFLAGが設置されていた。



その勢いのまま一気に駆け抜けFLAGを手に取ると、プオーンッとブザーのような音が鳴り響いた。



見事にその日の最速をタイムをたたき出したレンに対し、



他の受験者や審査員からから暖かい拍手が送られた。




 

 「……………………………」





その光景を偵察するように怪しげな男達が遠くから眺めていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ