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日本語→英語→日本語 自動翻訳で綴るテンプレなろう小説  作者: フェフオウフコポォ


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18話:迷宮


だんだん適当さが増してきました。



「角を曲がったら豚3匹と接敵ワン。ローリー、ケイティ準備は?」

「は、はい。大丈夫です!」

「も、問題ありません!」


 花子の呼びかけにすぐに答える2人。

 そして回答を聞き視線をクォンへと移す花子。クォンはアイコンタクトを受けただけで意図を理解して一つ頷いて返し、花子もクォンの頷きを見て視線を前に移す。


 花子がじりじりと角に近づいて行き、一瞬目視で敵を確認する。そして振り返った花子が顎で『行け』とジェスチャーをすると、ケイティさんとロレッタが動き出す。


「聖なる光よ!」


 薄暗いダンジョン内にケイティさんの魔法の光が灯り、照射された光で豚のようなモンスターの目を眩ませる。


「えいっ! えいっ!」


 光はモンスターだけを照らし視認しやすくなり、すぐにケイティさんの脇からロレッタが次々と石を投げつける。

 モンスターは、びぃびぃ、と鳴き声上げて威嚇するが目が眩んでいるせいか動き出してはいない。石が3匹すべてに当たる軌道に乗った事を描くにした花子とクォンが動き出す。


 同時に飛び出したはずなのに花子の身体は既にモンスターの前にあり、軽く小突いていく。

 小突いただけにも関わらずモンスターは行動不能になり、その場に倒れ小さくうめき声を上げるが、その声も長くは続かない。クォンがナイフで止めを刺していくからだ。

 急所を抉られ死体となったモンスターを花子が回収し、数秒前に居たであろうモンスターは一掃された。


「よし。次いくワン。こっちワン。」

「「「 はいっ! 」」」


 モンスターの位置や地形が分かる花子が次へと案内を始めた。


 迷宮に入ったのはもう2時間も前の事だけど、30分を過ぎたくらいからこんな感じの非常に効率の良い狩りになっている。

 いや『狩り』というのは生温いかもしれない。むしろモンスターの虐殺……殲滅と言っても良いのかもしれない。


「……どうしてこうなった。」


 先導する女性陣の後に続きながら一言そう呟き、こうなった原因を振り返るのだった。



--*--*--



「――副リーダー?」


「そうワンご主人。

 ここに居る全員リーダーはご主人で異存はないワン。

 ただ、他のメンバーについては序列をしっかりとつけておいた方がいいワンよ。」


 首を傾げた私に花子がいつもの念話のように補足説明をしてくる。

 ただ念話と違い、きちんと言葉になっているので他の人も聞き取れておりクォンが頷いて口を開く。


「私も花子さんの意見に賛成です。

 私はご主人様の盾として動きたいところですが、ご主人様の命令……いえ『お願い』でしたね、申し訳ございません。

 ご主人様の『お願い』を聞くとなれば、私はローリーさんの指導などの対応でお側を離れる事もあるかと思います……そういった時に何か起きた場合の為に、誰が命令や指示を出すべきか、そして全員が誰の命令を聞くべきなのかを認識しておくのは大事な事かと。」

「そう……なの?」


 クォンの後にケイティさんが続く。


「私も他のパーティの方に参加させて頂く事がありましたが、人が増えた場合などには改めて序列を決める事は確かにありました。

 タローさんは納得されてないみたいですが、序列を付ける大きな理由としては……まぁタローさんに限ってないとは思いますが指揮を執るべきリーダーが倒れたりした場合……毒に当てられたり昏倒したりした場合や、他にも崩落なんかでパーティが分断されたなど状況に著しい変化があった場合に素早く指揮系統を復活させるという意味合いが大きいみたいです。

 混乱は死に近づく罠といいますから……指揮系統を全員認識しているだけで、いざという時に違うようです。」


「なるほど……言われてみると確かにその通りかも。」


「今回はローリーは依頼主でゲスト扱いだから序列を付ける面子はハナとクォンとケイティという事になるんだワン。まぁこの面子だと、もちろんハナが一番ワンよね? ご主人?」


「む?」

「ん?」


 ケイティさんとクォンが言葉にすかさず反応し、花子に同時に顔を向けた。

 花子は一番背格好が小さいのに全く動じていない。


「まぁ……確かにハナは私よりも強いし付き合いも長いから信頼してますしね……正直なところリーダーがハナでいいんじゃないかとも思ったりするんだけれど。」


「それはダメワン。」

「それはダメ。」

「それはダメです。」


 3人から同時に拒否の言葉をもらう。


「おぉう……何故に……」


「ご主人はご主人だからワン。」

「私の御主人様……だから。」

「タローさんだからです。」


 3人から同時に理由が告げられる。

 理由のはずなのに理由になっていない気もするけれど、ロレッタ以外の言葉を放った女性陣は顔を見合わせてウンウンと頷いている。


「というわけで、ご主人がリーダーは揺るがないワン。決定事項ワン。

 だからリーダーとして、ハナとクォンとケイティを好きな女の順番で序列をつければワン。」


「えっ!? 好きな順番!?」

「「 えっ? 」」


 私の疑問ケイティさんとクォンが同時に花子を見る。


「そうワン。ご主人から見て魅力的だと思う順番で序列を付けたらいいワン。

 ……まぁ? ご主人はハナを選ぶってわかってるからこその余裕ワンけど。」


 突如しなを作って頭を胸に擦りつけてくる花子。

 その姿を見てクォンが慌てて口を開く。


「ご、御主人様! 今回の依頼に対する貢献度なら私が一番にはなりませんか!?

 今回の依頼内容はレベリングです! 私なら『コーチング』のスキルもありますしローリーさんを成長させるという意味合いでの依頼達成であればしっかり貢献できるものと!」

「わ、わわ、私は! えっと、わ、私は! そ、そうだ! ご飯を美味しく作れます! 野営とか野宿する時とか! 進んで見張りに立ちますし除霊は得意です! ほら、陰ながら頑張る人って名もなき英雄って呼ばれる事もありますし、感謝されない仕事って意外と大事だったりしますよね!」


 ぐぐっと詰め寄ってくる2人。

 花子は二人が詰め寄ってくるタイミングを見切って身をひるがえし、背中への抱き着きにシフトしている。


「ふふん。今回の依頼はレベリングだワン。その達成ならモンスターがいる場所が分かるからクォンよりもハナの方が効率いいワンよ。

 ケイティの言ってる事も、ご飯はストレージに仕舞ってあるし見張りは気配でわかるし、なーんにも問題なーいワン。」


「むぅ、私もモンスターの場所は分かります。それにダンジョンに潜った経験もありますから罠の注意なんかも理解しています。」

「わ、私だってダンジョンに付き添って入ったことありますし! ちゃんとダンジョンでも眠れます! あ、そうだ! 聖魔法で光とか作れます! ……ちょっとくらいなら。」


 言葉に熱が入り、言い争いが始まりそうな雰囲気になって来てしまった。

 止めるにしても序列を付けるなり何かしらの結論を出した方が良いように思える。

 ロレッタの顔を見れば、どこか白けたような空気が滲み出てきている気がしないでもない。


「じゃ、じゃあとりあえずはさ! 暫定の副リーダーはローリーという事にしないか?」


 3人がイラっとしたような顔を向けてきて一瞬ビクっとしてしまう。

 3人はこちらを見た後すぐにロレッタの方を向き、見られたロレッタもビクっと驚いていた。


 変な誤解が無いようにすぐにフォローを始める。


「いや、あのさ、今回の依頼はあくまでもローリーのレベリングだしさ……それにこういうリーダー云々っていうのは、集団で行動して互いに認め合ってないとあまり意味は無いんじゃない?

 まだお互いに能力的な事や人柄とか、まだよくわかっていない事も多い状態だから、序列を決めるのは、まずはとりあえず行動してみて、そこでの動きを見てからの方がいいんじゃないかと。」


「ふむん……ご主人の好みは反映したつもりだったワンけれど、まだロリ具合が足りなかったかと心配になったワン。」

「確かに実力を見ずして判断は難しいですよね。押し付け的な物よりも、しっかり理解できて良いと思います。」

「人柄でも!? と、ということは美味しいご飯を作ればチャンスがあったり? あったり?」


 3人がそれぞれ呟くように言葉を放った。

 とりあえず花子だけは今回の依頼が終わったら一度叱っておこうと思う。


「……よし、こうなったらとりあえずローリーのレベリング作業を頑張るワン!

 そんでもってご主人に序列を付けてもらうワン! それじゃあさっさと動くとして……クォン? ひとつ確認ワンが、戦闘に参加していると認識されればレベルは上がるワンよね?」

「えぇ。その理解は間違いないかと。」

「そうしたら、こういうレベリングはどうワン? ローリーには投擲とかで――」



--*--*--



 こんなやり取りがあってレベリングが始まったのだ。

 そして私はなぜ黙って後に続いているかと言うと、下手に何か話せば序列の話題に戻りそうな気がしてならないからだ。


 基本的に花子は何かに夢中になると、結構それにのめり込む事が多い。

 追いかけっこしていて、いつの間にか置いてけぼりにされた事がなによりの証拠だ。


 今、実際にレベリング作業に熱が入っている感じがするのも、なんとなくそれぞれの役割分担が決まり、それが機能し始めたのが楽しくなってきているからに違いない。


 それにしても、ちゃんとローリー並みに弱いケイティさんや、クォンのレベル上げも頭においている動きなのが花子らしい。

 なんだかんだ言っても仲間外れを作らないようにしているのだから花子は優しいのだ。


 だからこそ私は影に扮する。しっかりと回っている歯車に対して水を差す事は控え影に紛れているのだ。

 なんせこっそり鑑定しているとロレッタのレベルがぐいぐい上がっている。

 ひょっとするとそんなに時間もかからずにレベリングの依頼を達成する可能性だってあるのだから、可能な限り気配を消そうと試みる。


 そんな事に集中していると『気配制御』のスキルが増えていた。


 もちろん、更に気配を消すのだった。



--*--*--



「くっ……つい夢中になってしまったワン。」

「いえ素晴らしい動きだったと思います花子さん。足捌き、勉強になりました。」

「私もレベルが沢山上がった気がします! それに聖魔法の幅も広がりました! 有難うございます。」


「もうだめ……」


 ロレッタが一人その場にへたり込む。

 それも当然だろう。休みなくモンスター殲滅しながら最深部に到達しているのだ。

 冒険者と言われる部類の人間と、一般人並みの身体能力で箱入り娘だったロレッタの差は大きい。


 今いるのは祭壇らしき物がある部屋。

 途中で花子が隠し通路を見つけて進みはじめ気が付いたらこんな所まで来ていたのだ。


「あの祭壇はなんなんでしょうね?」


 ケイティさんが首を傾げる。


「ああいう祭壇には近づかない方が良いです……私が呪いを受けた時もダンジョンのああいう祭壇を不用意に調査したのが原因でしたから。」

「そうだったんですか……では何かありそうでも余り近づかない方がいいんでしょうね。」

「大抵の場合はお宝があったりします。なのでここは私が行きましょう。」

「えっ?」


 ケイティの疑問符を背に受けながらクォンが祭壇に向かって動き始めた。流石に心配になり止めようとすると花子に止められる。


「大丈夫ワンよ。もし罠以外で呪いを受けたとしてもご主人が解呪できるから、きっと問題ないと考えての事だワン。」


 確かに呪いが関係なければ罠などの知識のあるクォンが適任……いや、一番適任なのは罠をくらっても物ともしないだろう花子だ。


「戦闘でハナが上を行き過ぎたから、せめて別の面でご主人に役に立つところを見せたいという乙女心だワン。それと過去のトラウマを乗り越えようという気概もあるワンね……こういうところはきちんと空気を読んだ方がいいワンよご主人? もちろん何か起きそうだったらハナが助けるワン。」


 花子の気遣いに伸ばしかけた手を戻す。 


「待ってくださいクォンさん!」

「なんです?」

「聖魔法が呪いの解呪に役立つ事を知りました……ですのでクォンさんに使えるようになった聖属性の加護を。」


 目を閉じて祈ったケイティさんから光がポワポワと飛び立ち、それがクォンに触れると体を包み込むように軽く光った。


「役に立つかは分かりませんが、呪い避けになれば嬉しいです。」

「…………ありがと。」


 クォンがどこか納得のいかないような顔をしながら礼を言った。

 その表情と言葉を見てケイティさんがニッコリと微笑みながら口を開く。


「タローさんにまた解呪の手間をかけさせたくないですからね。」


 一瞬クォンは眉を動かし、すぐにクォンは祭壇へと向かい始めるのだった。


「ご主人的には……呪われた方がおっぱい揉めるから嬉しかったワンか?」

「いや当然何も無い方が良いよ。それにもしやるとしても次は背中に触ります。」

「くっふっふっふ。」


 クォンは何事もなく一冊の本を手にして戻ってきた。

 ただ何事もなかったはずなのに、なぜクォンは不機嫌なのだろうか。

 ……あまり深く考えない事にする。


 とりあえず本をクォンが差しだしてくれたので受け取ってストレージに仕舞う。

 最深部だろう祭壇も調べつくした事で、花子が鼻を高くしながら口を開く。


「さてさてご主人! もうこのダンジョンの魔物はほぼ狩り尽くしたワン! くっふふふふ、普通ならここまでのレベリング1~2週間かかっててもおかしくない成果だワン!」

「あ、うん。えっと……ローリーのレベルもなんかかなり上がってるっぽいし、街を出たばかりだけど、一度街に戻ってもいいかもしれないね。」


 鑑定すればレベルは分かるのだが、鑑定できる事を言うとまた問題が増える可能性もあるので言葉をぼかしておく。


「賛成だワン! そして副リーダーを誰にするか決まったワン?」


 花子の言葉にケイティさんとクォンの注目が集まる。ロレッタはまったく無関心にヘタリこんだままだ。


「そうだなぁ……実力や能力的にはハナが適任だということは、ケイティさんもクォンも理解してくれたと思う。」


 花子が大きな胸を盛大に張りはじめ、ケイティさんとクォンが仕方ないといった雰囲気で目を伏せた。


「……ただ、ハナは一度夢中になると、それ以外が目に入らなくなることがあるのも後ろで見ていてよく分かった。」

「え?」


 花子の張っていた胸が少し萎む。


「もちろんケイティさんやクォンのレベルが上がるように工夫してあげたりする優しいところも見ていてよく分かったんだ。だけど、一番レベルが低かったローリーが動けなくなるようなペースはちょっとまずかったんじゃないかな? ケイティさんがローリーを、よくフォローしてくれていたように思う。」


「タローさん見ててくれたんですね……」

「うっ。」


「クォンは視野が広かったように思う。罠の知識や戦闘での活躍とか全体的にバランスが良かった。」


「ご主人様……嬉しいです。」

「うぅ、ご、ご主人?」


 なんとなく不利になってきたのを感じ取ったのか花子の声と態度が小さくなった。

 こうも素直に反応されると少し苛めているような気持ちになってしまう。


「というわけで、其々、得手不得手があると思うから、副リーダーとかじゃなくて部門を割ってリーダーにする形はどうかな? 例えばケイティさんは休憩や食事など非戦闘に関するリーダー、ハナは戦闘に関するリーダー、クォンは探索に関するリーダーとかさ。」


 もし全て込みでの序列を作れば、きっと関係にも影響してくるだろうと思ったからの妥協案だ。

 正直なところ花子は全部のリーダーをできるだろう。だけれど、それを大きな声で言ってしまって他の人が委縮して動けなくなるのはあまり望んでいないのだ。


 その事をこっそりと念話で花子に伝える。

 すると花子は少し微笑んで見せた。


「はぁ……仕方ないワンねぇ。それでいいワン。」


 ケイティさんとクォンもどこかホっとしたように微笑んだ。

 柔らかい空気が流れる。


「暫定だった副リーダーからいいですか?」


 そんな中でロレッタが小さく手を上げた。


「どうかした?」

「一度休んだらもう一歩も動けなさそうな事に気づいてしまいました。なので、帰るとかじゃなくて、休ませてもらえませんか?」


「あ、うん……」


 迷宮で野宿する事になった。

 そして、野宿をしたことで、早々に帰るのもやっぱりまずいと認識を改め、クォンのコーチングでナイフ投げや魔法をロレッタに教えて日数を少し消化してから街へと戻るのだった。


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