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サイハテの国  作者: ヤブ
終章
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エピローグ

「おいライト! いい加減起きないと遅刻するぞ!」


 何度起こしても布団から出てこないライトを遂に、その布団を引き剥がした。


「止めろよリティア!」

「じゃあさっさと起きろ」

「今ちょうどティアラちゃんとデートする夢を見ていたのに……」

「デートすれば良いじゃねぇか。ここに戻ってきたんだから」


 サイハテの国から、戻ってきた。

 しばらく無断欠席していた二人にとって、今日は久しぶりの登校だ。そうだというのに、ライトは早速遅刻しようとしている。


「早く着替えて。私先にいくよ?」


 ライトは面倒臭そうに立ち上がり、朝食を食べるために部屋を出た。「……ところでさ、リティア」

「ん?」

「その傷でも、行くのか?」


 人龍と戦ったときの傷は、もちろん癒えていない。服を身に付けていて見えはしないが、肩には包帯を巻き、尾を掴んだときに出来た掌の傷も残っている。リシャンと戦ったときに負傷した首の傷は、跡が残っている。


「まあな。そう言えば、サイハテの国に行っていつも以上に怪我をしたよな」

「ああ。良かったじゃねぇか、痛みに慣れたんじゃね?」

「んなものに慣れたくねぇよ」




 準備を終えた二人は、早速登校する。


「この道も久しぶりだな」

「そうだな。まずここが久しぶりだからな」


 リティアは肩に剣をのせて歩いている。血や傷がついていた刃の部分はリティアによって綺麗に手入れされているが、傷がついてしまった部分は自分では直せない。休日に武器屋に行って手入れしてもらうつもりだ。


「おい、リティアー!」


 ミマーシ学園に近づいた時、声が聞こえた。振り返ると、リティアと同じ二科の男子生徒だった。


「マルモス! 久し振りだな!」

「お前、今までどこに行っていたんだ? 見つけたとき、幽霊かと思ったぜ」

「死んでねぇよ。ちょっと用事でな」


 久しぶりの再会で会話が弾む二人を見て、ライトは「先に行くからな」と告げた。

「え、ああ……」


「どうした?」


 ――作っていなかった。

 ここにいたときはいつも、作っていた。どんな時でも、外にいるときはずっと。

 それなのに、今回は作っていなかった。


 リティアは急に走り出すと、ライトに飛び付いた。リティアの表情は笑っていた。ライトは顔を歪めたが、安心したようだった。


 ――頑張れよ、ライト。




 国に戻ったミマーシ王国の王カジュイはぐったりとした様子で椅子に座っていた。彼の向く方向は、いつもは見ないはずの、青い空の下にある我が国である。


 部屋の扉がノックされる。カジュイが返事をすると、モーテルが入ってきた。


「失礼します。サイハテの国突撃による被害者リストを作成いたしましたので、拝見お願い致します」


 机に置くが、カジュイは目も向けない。

「……王、どうかなさいましたか?」


 しばらくして、王はぽつぽつと話しはじめた。「わしがまだ王の位を受け継ぐ少し前に、一人の子供と出会ったんじゃ。その子は不思議そうな顔で、わしに、サイハテは存在しないと言った。サイハテの国がある以上、サイハテも存在すると言うことを伝えると、子供は不服そうにしておった」


 モーテルは頷くこともせず、話を聞いている。

「星は丸い、だったらサイハテもない。……その子の言う通りであった。丸いものに、果てがあるわけがない。それでも人が、果てがあると信じたのはきっと、恐れていたからだ。何処までも続く世界に。何処までも何処までも、道が続く。それをきっと、恐怖だと思ったんじゃろうな」


 カジュイはモーテルを見た。そして、「強くなれ」とだけ言って、リストに目を通し始めた。





「なあライト。お前、サイハテがないことを知っていたって言ったよな?」

「ああ言った」


「サイハテがないってことはさ、つまり、限界がないってことだろ? ……運動、上手くなろうとは思わないか?」

 リティアは、にやりと笑った。即答で嫌だと言おうとしたが、ライトは言い返す。「お前も、頭を良くしようとは思わないか?」


 互いに見つめ、笑い合う。これほど近くで相手の顔を見たのは、どれくらい振りだろう。


 二人でいるところに、マルモスが手紙を持ってやってきた。何でも、ついさっき学校に送り主が来て、二人に渡すよう言ったようだ。


 手紙の封を切り、中を取り出す。手紙の冒頭には、『リティア、ライトへ』と書かれていた。



『リティア、ライトへ。


 元気していますか。こちらは、復旧作業に追われています。壊れた家や、神祠を協力して片付けています。


 今、カリナと一緒に住んでいます。二人も暇が出来たときにまた、サイハテの国に遊びに来てください。もちろん、モーテルを連れてくるのも忘れないでね。


 話したいことがたくさんあるし、手伝ってもらいたいので、出来るだけ早く来てくださいね。


マーガレット、リシャン、カリナより。』



 これを届けに来たのはジュンだろう。彼にはミマーシ王国の人々を送り届けるのに手を貸して貰った。またお礼の挨拶に行くべきだろう。


 読み終わった二人はまた顔を合わせる。考えはおそらく同じだろう。

 ――サイハテの国に行こう。


 リティアは立ち上がると、「よし!」と言った。

「おいまて、まさか今行く気か? まだ一昨日帰ってきたばかりだろう?」

「ライト、行くぞ」


 まっすぐと見つめる目は、きっと、曲がることはない。

 ライトは溜め息をつくと、微笑み返した。それが返事だ。



「――じゃあ行くか、サイハテの国に!」


                   _fin_

 約六ヶ月半、このサイハテの国はやっと完結いたしました。学業の方もあり、毎日更新出来ないときがありましたが、何とか最後まで持ってくることが出来ました。ありがとうございました。

 最後をどのようにすれば良いのか、自分なりに考えたのですが、やはり最終的にはまたサイハテの国に向かう、という流れにしました。


 次のことを考え、次に推理ものと言いましたが、その前に純文学を入れてみようと思いました。それで一度落ち着かしてから、推理ものに取り掛かりたいと思います。


 約六ヶ月半の間、本当にありがとうございました。

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