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サイハテの国  作者: ヤブ
最終章
92/93

ゆっくり眠りな

 戦場に戻ったリティアを送り出したライトに、マーガレットが声をかける。

「ライトは戦いに行かないの?」

「俺は行かない。俺の役割は、リティアを戦わせる事。逆に俺が戦ったら、余計に足手まといが増えるだけだろう?」


 その通りね、とマーガレットは微笑んだ。ふたりにはどこか、余裕に表情がこぼれていた。



 リティアは足元に近い手を斬っているカリナに加勢する。


「カリナ! 状況は?」

「他の手が邪魔で切り落としにくい。だけど、あと少しで出来そう」

「分かった。私は邪魔が入らないようにするから、カリナは切り落としてくれ」


 リティアはカリナに攻撃しようとする手を斬っていく。何度も斬られ、それぞれの手には傷が残っている。カリナが斬っている手は半分まで斬られている。すぐに斬れそうだ。



「リティア、次の一手で斬れる。危ないから避けて」


 そう言うと、カリナは最後の一手を加えた。リティアも最後に傷をつけると、横へ避けた。


 体を支えていた手が斬り落とされ、人龍はバランスを崩した。同時にリシャンとモーテル側の手も切り落とされたようだ。


 支えとなっていた二本の手が同時に斬り落とされ、人龍は地面に倒れた。砂埃がうっすらと舞う。


 すかさずリティアは人龍の首に近寄り、頭に乗る。

「随分と迷惑をかけてくれたな。だけど、国を守ってくれたことには感謝する。……ゆっくり眠りな」


 そしてリティアは、人龍の首を一斬りで落とした。




 人龍の首を斬り落とした後は、静かになった。戦いが終わり、そして、全てが終わったのだ。


「終わったな」


 人龍は灰になり、潮風に吹かれ消えていった。

 するとリティアは地面に倒れ、仰向けに寝転んだ。


「あー、終わった終わった……。こんなに戦ったのは初めてだ」


 人龍が灰になったのを見て、ライトとマーガレットは森から出てきた。ライトはクロンを背負い、顔色は大分良くなっていた。



 モーテルは、機体の下地気になっているカジュイの元に向かった。既に拳銃を下ろし、ぐったりとしている。


「……王、大丈夫ですか」

「あぁ……モーテルか。倒せたのか?」

「はい。リティア・オーガイトが最後の一手を」

「…………彼女には悪いことをしてしまった。あの化け物を狙っていたのに、まさか当たってしまうとは」


 そう言うカジュイの近くで、モーテルは地面に転がっている拳銃を手に取った。

「そうですね、貴方は悪いことをしてしまった」




 人龍を倒し、サイハテの国を襲うものはいなくなった。避難していた国民は地上に出て、建物がぼろぼろになっていることに驚いてはいたが、無事倒すことが出来たことに安心していた。


「みんな、ありがとう。感謝しても仕切れんわ」

「いいんだよロジ、みんなが無事で良かった」

「ああ。避難していては様子が分からなかったが、大変だったことは振動でよく伝わった。何度も感謝する、ありがとう」


 そう言ってロジは頭を下げる。




「なあライト。私さ、今回のことで分かったことがあるんだ」 

「何だ?」

「……人龍の封印を解いて、ここへ戻ってくるとき、見たんだ。先の海の上を、船が浮いているのを。それってつまり――最果てがないってことだろう?」


 ライトは溜め息をつく。「今頃気付いたのか?」

「何だよライト、お前は知っていたのか?」


「当たり前だろ。世界は丸いんだ、それなのに、最果てが存在するわけないだろ。……そんなこと、小さい頃から知っていたさ。大人たちは、信じたくなかったんだ。果てがあることでしか世界に安心を抱けないんだからな」

次回、最終話エピローグです。

明日の午前中に投稿予定です。

最後までよろしくおねがいします。

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