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サイハテの国  作者: ヤブ
第一章
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決断5-1

 そのまま進んでいくと格技場の前へと出てきた。人が多くおり、リティアがどこにいるのか分からなくなった。

 時計塔の時計を見ると、剣使い大会の決勝戦が終わってもうすぐ三十分が経とうとしている。みんな、授賞式を見に来たのである。リティアが三連覇したこともあり、その栄光を讃えるために昨年以上に人が集まってくるのだろう。三連覇がどれほど凄いものなのか、リティアがどれほど強いのか、ライトは改めて思い知らされる。

 リティアの姿を探すも、たくさんの人でどこにいるのか、さっぱり分からない。


「リティア!」


 そう叫んでも、声は人混みを掻き分けてリティアの耳に入ることはない。

 リティアのことだから、この後どこへ行くのか全く検討がつかない。まず家に帰ることはないだろう。こんなことになって、呑気に家に帰ることは絶対にしないし、これから剣使い大会の授賞式が行われる。それを放っておいて、そして一緒にいたライトを放っておいて勝手にどこかへ行くことはないだろう。

 ある音に気づき、ライトは振り返った。

 第二玄関から、ライトの前に出てきた兵士達が出てきたのである。

 ここで攻撃することはないとは思うが、ここで捕らえられるのはまずい。ライトは関係なくとも、リティアを部隊にいれるための罠として利用されるだろう。ライトも足手まといにはなりたくない。


「あ、ライト?」


 そう呼んだのは、一つ上の女子生徒だった。

 金髪のウェーブした髪を左右で結び、制服のスカートはぎりぎりまで短くおってある。階段を上っているとき、男子が喜ぶ女子生徒である。

 ライトのことを気に入っているのか、見かける度に話しかけてくるのだ。

 ライトからすれば、迷惑極まりない。ライトが好かれたいのは同級生か後輩であって、先輩などは興味がない。年上の女は妙に自信を持ち、年下の男を気に入ると自分のモノと言うよりおもちゃという風にしか思っていないだろう。そういうところが嫌なのだ。男からすれば、やはり女は弱くてなんぼである。だから、ライトは年上のリティアを好きになるわけが分からないのである。

 ため息をついた後、ライトは女子生徒に笑顔を向けた。


「先輩。こんにちは」


 少しぎこちない笑顔に、機嫌が良い女子生徒は疑いもしない。


「やっほー。どうしたの? なんかー、ライトの声がしちゃったから気になっちゃったんだよねー」


 女子生徒は暑い中、少し大きめのガーディアンを身に付け、手を袖で隠す萌え袖をしている。

 その姿がライトの癪に触る。可愛いと思ってやっているのだろうが、ライトは魅力を感じない。


「あ、すみません。姉の姿が見当たらなかったので、つい……」

「お姉ちゃんって、リティアだっけ? 今年の剣使い大会でも優勝してたよねー。みんな話してるよー、『オーガイト姉弟は凄い』って。姉は剣使いだし、弟は賢くてイケメンだし。でーもー、私はライトにしか興味ないよー?」


 女子生徒は顎に人差し指を当て、首を傾げる。

 こんな時に年上の女に捕まったのは悪運なのだろう。ライトが探しているのは女だが、こんな女らしい女ではない。

 ライトのはその言葉をしれっと無視する。


「すいません、失礼します」

「あっ、ライトー」


 少しトーンの上がった声で言う。

 あの女子生徒は、よくいるモテたがりの女だ。みんなが注目している男を奪うようにして自分のものにする。女の前ではこいつはどうだ、ああだと可愛い顔で愚痴を漏らしている。

 そんなことを言わないで、あいつが可愛い、こいつも可愛いと話している方が気分は良いだろう。

 人混みは一行に消えることはなく、リティアの姿は見つからない。

 余計な邪魔が入ったせいで、時間を無駄に使ってしまった。焦る気持ちがどんどん募っていく。


「くそっ。どこにいるんだよ……」


 その時、リティアの馬に似た黒髪が人混みをすり抜けていくのが見えた。

 ライトはすかさず手を伸ばし、その黒髪を握った。


「リティア!」

「いたっ」


 その声に、ライトはすぐに間違いだと気づいた。しかも、また女に捕まってしまう。

 振り返った女は、同じクラスの女。リティアと同じ黒髪を持っている。いつもは結ばずストレートなのだが、今日は剣使い大会があったため結んでいたようだ。


「あっ、ごめん」

「ったー、もう誰?」


 頭を押さえながら言う。


「何だ、ライトか」

「ごめん。人間違いだった」

「それでも髪を引っ張るのはどうかと思うけどなー」


 先程の女子生徒よりはすこしさっぱりしている女子。しかしこの女子もやはり女子だ。

 女子の人間関係は難しいもので、少しの嫉妬や苛立ちからもう仲良くしなくなることが多い。この女子はそれを嫌って、他人がいう悪口によく頷いている。少しの否定もせずに、相手の悪口を付け加えて返事をするのだ。


「ところでさ、ライト。今度の休みにデートしない? 部活休みになったからさ。久しぶりにどう?」

「あーっと、ごめんね。今、人探してて」

「そういえば、人間違いとか言ってたね。誰探してるの?」

「いや、あの……」


 ライトは女子生徒の話などまともに聞いていない。リティアを探すのに必死なのだ。


「本当にごめん!」

「え、ちょ、ライト!」


 女子生徒の手を払い除け、ライトはまたリティアを探しだす。

 とんだ災難だ。こんなところでモテているのが逆に出るなんて。二人を合わせても数分の時間がとられただけだが、今は相当なロスだ。

 人混みを掻き分け、波に逆らうように進む。


「リティアー!」


 何度も呼ぶが、返事はない。


「くそっ。何で返事しねえんだよ!」

「おいっ、いたぞー!」


 ライトの背後から兵士の声がした。振り返ると、兵士達が続々とライトを追いかけ始めた。

 舌打ちをすると、ライトはとりあえず人混みを抜け、時計塔に繋がる森へと走っていった。

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