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サイハテの国  作者: ヤブ
最終章
88/93

身を滅ぼしてでも

 暗闇の中を走っていく内に目が慣れて、暗い中でも少しは見えるようになった。だが前がうまく見えず、危うく封印された岩にぶつかるところだった。


 ――この全てを剥がせばいいんだよな。


 リティアは早速、まず札を剥がし始めた。前ではなく後ろにも貼られており、封印されている化け物がどれほどの力を持っているのかがよく窺える。


 みんなが代わりに戦ってくれている。こんなところで無駄な時間を食うわけにはいかず、どんどんと剥がしていく。


 次に、結ばれている太い縄をほどく。結び目に手を添えて、目一杯力を込める。ゆっくりと動き、結び目がほどけた。


 すると、岩ががたがたと動き始めた。


「封印が、解けるのか……!?」


 次の瞬間、岩から熱を持った風が吹き出した。

 リティアは風に押され、一番端の壁まで飛ばされてしまった。身体中に痛みが走り、ゆっくりと意識を失った。




 封印が解かれた後、地上ではしばらく地面が揺れていた。何が起こったのかと、剣を持った者たちは動きを止めて辺りを見回す。


「……解いたのか」


 クロンを運び、マーガレットが治療してくれている。「ライト、手伝って! 貴方が無駄に怪我人を増やしたのよ?」


 マーガレットは揺れに目もくれず、治療を続けている。確かに、敵が止まっている今が有効な時間だ。リシャンは治療を終え、ある程度は回復している。それも、マーガレットが処方した薬草のお陰だ。


「……マーガレット、クロンの様子はどうだ?」

「まだ駄目よ、動かしては。傷口が開く」

「もうすぐここも危険になる。森の中に避難しよう」


 傷が開かぬよう慎重に運び、地下に避難しなかった四人は森の中に身を潜めた。ライトは争いが一時中断しているのを見て、カリナにも避難するように伝えた。


 しばらく揺れ、何も起こらないと緊張を解いた者も中にはいた。地面が揺れているだけだ、何も起こらないじゃないか、と少し安心しているようであった。だが森に身を潜めた五人は気を緩めなかった。


 揺れが治まったと思った次の瞬間、これまでで一番強い揺れに見舞われた。地面を蹴られたように大きく揺れ、立っていた人々は尻餅をついた。


「何だ……何が来るんだ……?」

「ライト、どうなっているの? 知っているんでしょう?」


 問いかけるマーガレットに、ライトは手短にでも分かりやすく、リティアが封印を解いたことを伝えた。するとマーガレットは形相を変え、ライトに掴みかかった。

「どうしてそんなことさせたの!? あれは、誰も触れてはいけないのよ!?」


 見たことのないマーガレットの行動だ。それほど、あれは守られているという事だ。恐ろしさが身に染みて分かる。

「こうすると決めたのはリティアだ。こうと決めたリティアを止めることは出来ない」


 ライトは腕を掴むと、諭すように言った。

「こんなこと、本当はリティアだってしたくなかったと思う。大切な国の(おきて)だからな。だけど、それを守ってまで国の壊滅は望んでいない。どんな手を使ってでも、国も守りたいんだ」

 マーガレットの表情が緩んだ。そして、視線を泳がせる。そう思っているのは、リティアだけではないのである。


「封印を解くのだって、安全だとは限らない。今実際揺れているし、リティアのいる場所がどうなっているか分からない。――リティアは身を滅ぼしてでも国を守りたいと、誰よりも思っているんだ」


 マーガレットは、「そんなの、私たちだってそうだわ」と、ライトを睨みつけるようにして言った。

「いいわ、もう決まりなんてどうでも良いって事ね」


 吹っ切れたマーガレットを見て、ライトは微笑んだ。

「私たちも、リティアの想いを背負いましょ?」




 神祠から、地面が割れだした。それはどんどんと広がり、膨れ上がった神祠は噴火寸前の火山のようになっている。


 そして――。

 地面の割れ目から砂埃(すなぼこり)を上げて、化け物が姿を現した。それは、何とも異様な形をしていた。

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