恨まれやしないだろ?
その日がやってきたのは、青空が広がる真昼過ぎのことであった。
どこからか音がして、人々は空を見上げた。その音は、不穏を渦巻いていた。
空に現れたのは、ミマーシ王国王家を乗せた飛行物体。それに続いて特別部隊を乗せた小型飛行物体が三機、姿を現した。
リティアとリシャンは自らの剣を持ち、ライトとマーガレットは国民に避難指示を出すため、先に家を出た。
「リティア・オーガイト」剣を取りに来たリティアを追って、モーテルがやってきた。「私は王の元へ戻る。出来るだけ安全な指示へ促そうとは思う」
「……その言葉、信じていいんだな?」
剣を腰にぶら下げ、モーテルを見遣る。その後ろにクロンがやってきた。「……ああ。もう王に危険な指示はさせない」
リティアは頷くと、モーテルの横を通り過ぎる。後ろにいるクロンの頭に手を置いて、「クロンも戻るんだな」と言った。クロンは頷き、「僕も出来るだけお父様に頼んでみます!」と意気込んでいた。
リシャンと共に家を出た時には既に、特別部隊が着陸していた。国民に容赦なく剣を振るい、叫び声をあげている。
すかさず剣を抜き、兵士に剣を下ろした。呻き声をあげて倒れていく兵士をよそに、怪我人に声をかける。
「大丈夫か!?」足に掠り傷を負っているだけだが、逃走に少し影響が出てしまうだろう。「とりあえず、北へ逃げてくれ。森の中でもいい。姿を晦ませ」
怪我人の背中を送り、やってくる兵士たちの相手をしていく。
獣と戦ったことは実習であるが、人を斬りつけるような実習はしたことがない。人相手に戦ったことがあっても、自分の命を懸けて本気で戦ったことはなかった。人を斬りつけたことなど、幼い時のことを抜けば、一度もないだろう。
人を斬りつけるのは、獣の肉を斬りつけるよりも簡単だった。しかし、重みを感じた。鎧の隙に剣を差し込み、相手を斬りつける。獣を倒しているのとわけが違う。
「リティア!」相手をしながら、リシャンが近くまで来た。「……殺してよいのかわからない。いくら国を守るためだといっても、僕は人を斬りつける戦いをしたことがないから、手加減の仕方が分からない」
「私だってしたことないさ。けど、人の命を守ろうとしているんだから、代わりに誰かの命が亡くなっても可笑しくない。それに、相手は命を懸けてこの地に来たんだ」リシャンは見ると、不思議そうな表情をしていた。「殺したって、恨まれやしないだろ?」
リティアの考えに驚いたリシャンだったが、頷くと兵士に斬りかかる。
ミマーシ王国一の剣使いリティアと、サイハテの国一番でありリティアと互角で遣り合ったリシャン。二人という少ない人数だが、次々と兵士を倒していく。兵士全員の数はおよそ三百人。一人で百五十人の相手をしなければならないことになる。まだ地に下りている兵士は半分だ。簡単には終わらない。
相手は鎧を身に着けいるのに対し、二人は防具を何もつけていない。鎧は隙が小さい為、油断できない。そして、自分の身の危険を感知すればそちらに集中を移さなければならない。隙を与えることは許されず、少しの傷でも足手まといとなる。
二対三百で、勝てる勝算は数パーセントだ。
六章からタイトル形式を変えてみました。




