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サイハテの国  作者: ヤブ
第五章
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告白1-3

 夜、リティアは眠れないのではと少し心配していたが、何の問題もなく眠りについた。おそらく、明日になれば忘れているだろう。


 だが、モーテルはライトとクロンを挟んだ先で眠る。

 ライトは寝付けず、クロンに声をかけた。


「クロン、寝たか?」


 返事はない。代わりに、反対側から声がした。


「クロン様は眠るのが早い。朝日が昇るまで基本、起きられない」


 モーテルだった。

 まだ起きていたのか、と思い、体を向ける。モーテルは背中を向けている。


「まだ寝ていなかったのか?」

「……ああ」


 一つ息を吐いてから、続ける。


「なあモーテル。ミマーシ王国は本当に攻撃してくるのか?」

「何だ、信じられないのか? お前はその耳でそのことを聞いただろう」


 ライトは口を閉じた。

 確かに聞いた。だが、聞いてみたかったのだ。本人に、本当なのかどうか。


 真実が変わるわけではない。運命が変わるわけでもない。

 それを問うことで、緊張感を高めたかったのだ。実感が湧かなかったのは確かだ。こうやって、モーテルが日が近いことを伝えてくれ、心配しクロンが来たことも、時間の経過を表している。


「……ああ、確かに聞いた」

「なら、聞く必要はないではないか。私は寝る」

「待て待て。もう少し付き合ってくれよ」

「私はミマーシ王国から徒歩でやってきた。疲れているんだ」


 その言葉に、ライトは驚いた。

 海を渡って来ても半日では来れない。今日、かかった時間を聞いたが、それほどかかっていないと答えた。モーテルにとって「それほど」とは、どれくらいの時間なのだろうか。


「……そうか。どれくらいの時間、歩いていたんだ?」

「覚えていない」

「嘘だろ」

「本当だ」


 モーテル相手は手強い。どう聞いても、答えてはくれないようだ。

 ライトは諦め、最後の質問をした。


「……お前、ここに来たことあるか?」


 返事が来ることはなかった。眠ったようだ。




 ゆっくりしている時間はなかった。

 日が昇ったのち、モーテルはすぐにリティアとライトを起こし、眼を擦っている二人に問うた。


「ここへ来て、何か分かったことはあったか?」


 昨日の夜からは想像も出来ないほど、しっかりとした口調で話している。


 攻撃部隊隊長に話さなければならないとは思っていたが、いざとなると口を閉ざしてしまう。それは、ライト限定であるが。


「分かったこと……神祠のことかぁ?」


 寝ぼけているリティアは、そう言った。もちろん、モーテルがそれを聞き逃すわけもなく、朝食後、三人で神祠へ向かった。



「別に俺らまで来る必要はないんだよな。神祠は、モーテルと再会した場所なんだから」


 その通りである。

 わざわざ案内するまでもなかったことは、途中で気付いたことである。引き返しても良いかと思ったが、野放しは危険だと考えた。


「……これは何だ?」

「これには、何か分からないモノが埋まっているらしい」

「何か分からないモノ?」


 モーテルは視線をリティアに向けた。

 その反応は予想通りである。説明するのに抵抗があるが、説明しないわけには行かない。


「……何か、神様が埋められているらしい。ここを救ってくれたらしい」

「神を埋めた? それは、随分と失礼なことをしているな」

「私も思った。助けてもらったからと言って埋めるだなんて、独り占めしている。そんなことが世界に知れ渡ったら、非難の声が集まるだろうな」

「それは、本当に神なのか? 普通の人間ではないのか?」

「恐らくそうだろう。相手を敬いすぎて、神だと言っているんだろうな」


 頷きながら、モーテルは再び神祠を見る。


 今にも倒れそうな岩。こんなものに神を祀っていると思うと、だんだんと敬意が失われているのではと感じる。本当に神だと言うのならば、もっと大切にするべきだ。神を独り占めしておいてこの扱いでは、信者が怒りを露にしそうだ。


「これは私らの予想だけど……。ここには祭りがあるんだ。それは、高台と長老の家に間にある小さな誇らのための祭りなんだ。だが……どうやらここのために行われているようだ」

「……つまり、偽っていると言うことか?」

「まあ、そういうことになるな。秘密にしているようだが、マーガレットが話してくれた。まあ、本当かどうかは怪しいが、頭の隅にでも入れといてくれ」


 モーテルは返事をしなかった。ただ神祠を見つめる。



「……ところでリティア・オーガイト。お前の家族は、殺されたんだったな」


 唐突な言葉に、すぐに言葉がでなかった。


「……ああ、そうだ」

「突然で悪いが」


 モーテルは振り返ることなく、それを告げた。


 それは、本当に唐突で、そして、心に突き刺さった。

 驚愕の真実に、思い出したくない過去が脳裏を過った。




「お前の家族、私が殺した」

 衝撃の事実です。

 ここからは、私が今まで書きたかった場面が登場します。リティアとライトの過去です。

 血の繋がらない二人、親のいない二人がどのようにして出会ったのか、ここから明かされます。まずはリティア編です。

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