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サイハテの国  作者: ヤブ
第四章
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掃除6-2

 リシャンの言葉に固まったのはリティアとライトで、言われたマーガレットはいつものように問い返した。


「何が駄目なの?」


 マーガレットが首をかしげる。それを見て、リシャンは息をはいてから言葉を放った。


「マーガレットも知っているだろう。そのことはこの国の秘密だ。他国の者に話してはいけない」

「でも、ばれなければ良いじゃない」


 リシャンに比べて、マーガレットが秘密に関して軽視しているようだ。


「駄目だ、そういう問題ではない。決まりなんだ。ちゃんとそのことは知っているだろう? 簡単に誰かを信じては駄目だ」


 放たれた言葉は、次々とマーガレットを黙らせた。

 マーガレットは俯き、「でも……」と、言葉を探している。


「でもじゃない」


 続いてリシャンは視線を下ろし、リティアとライトを見下ろした。


「いいかマーガレット。ふたりは攻撃してくることを伝えてきてくれた優しい人かもしれない。だけど、もしかしたらミマーシ王国から派遣(はけん)されてきた諜報員(スパイ)かもしれない。むやみに情報を与えてはいけない」


「諜報員だなんて……。二人がそんなわけないじゃない。リティアは幼い頃よく遊んでいたのよ? リシャンも一緒だったじゃない。それに、リティアは嘘をつくのが下手くそよ。隠し事だってまともに出来てないわ」


 マーガレットはリティアを手助けしているつもりなのだろうが、リティアの心を(えぐ)っているばかりである。本当のことではあるが、本人がいると分かっていながら目の前で言われると、少し辛い。


 わざとではないのだろうが、逆にそれも辛い。


「それでも、二人を疑うの?」

「リティアはそうであっても、ライトは分からない。今回が初見である以上、どんな人物なのか分からない。ライトだけが諜報員かもしれないだろう」


 本当のことを言われ、マーガレットは喉を詰まらせた。

 信じがたいが、それが嘘であるとはマーガレットの口から断言することは出来ない。だからと言って、リティアやライトが口を出せるようなことでもない。


「ライト、お前はマーガレットを取ろうとしているから嫌いだ」


 一瞬納得しかけたが、すぐに疑問に思い、リシャンの顔を見た。その場にいた全員が疑問を感じたのである。

 しばらく呆気にとられる三人。


 真っ先に口を開いたのはライトでもマーガレットでもなく、リティアだった。


「ライトがマーガレットを……」


 ライトがマーガレットに惚れている。

 このことは自分だけが知っているものだと思っていたのだが、リシャンにはばれていのだ。


 本当は、ライトがマーガレットに近づきやすくするために言ったことなのだが、リティアはそのことにまだ気づいていない。


 マーガレットが作っているということを知ることが出来た以上、嘘であったことはリティアに伝えるべきなのだが、忘れていたのである。


「俺? 俺がいつマーガレットを取ろうとした?」


 ライトの問いに眉をひそめると、マーガレットに顔を向けた。


「マーガレット、最近ライトとよく話しているだろう」

「そ、そんなに話していないと思うけれど……」

「いいや、よく話している。マーガレット、お前から話しかけているじゃない」

「それは……。ライトのことはリティアからよく聞いていて、話してみたいと思っていたから――」

「呼び捨て」


 リシャンの言葉に、心臓が跳ねた。そして、鼓動が少し早くなる。


「え?」

「はじめは、『くん』をつけて呼んでいた。なのに、いまでは呼び捨てだ。何かあったのだろう。如何(いかが)わしいことか?」


 その言葉に、マーガレットはすぐに言い返した。


「なっ……何を言っているの!? 私はただ、親近感が湧いたから……」


 それを言ったら駄目だろう。ライトはそう思い、自分の額を軽く叩いた。


 マーガレットの言葉は、墓穴を掘ってしまうだけである。

 案の定、「親近感とは何だ」と問うてきた。


 やっとのことで自らの行為を知ったマーガレットだが、今では到底遅い。ライトを見るが、なにもしてやれない。自分で掘った墓穴は、自分で埋めなければ。


 マーガレットがライトを見ていることに気付いたリシャンは、「言えないことなのか?」と問い詰める。


 そのことを口にすれば、マーガレットは自分を作っていることがリシャンにばれてしまう。婚約者であるリシャンにばれてしまうも、本人の解釈によっては騙したということになってしまう。


 どうにも言えなくなったマーガレットに変わって、声がした。


「リシャン、もう止めときなよ」


 そう言ったのは、リティアだった。三人の視線がリティアに集まる。


「あんまり問い詰めても、悪化するだけだと思うけど?」


 その言葉は、リシャンに注意しているわけではなかった。軽く、少し優しく放たれていた。


「確かに、少し怪しいところがあるかもしれない。けど、リシャンの知っているマーガレットは、そんな事をする子だったか?」


 リシャンは目を逸らした。リティアは何もなかったかのように岩を拭き始めた。


 顔を上げ、少し見つめ合う二人。

 意を決すと、リシャンは口を開いた。


「……突然、悪かった、マーガレット」


 謝ったリシャンを見てマーガレットは安心、笑顔を浮かべた。


「いいのよリシャン。私も、疑われるようなことをしてごめんね」


 マーガレットは良い奴だ、リティアはそう思った。



 掃除を終え、四人は家へ戻る。その途中で、ライトが話しかける。


「どうしたんだ急に」

「何が?」

「マーガレットとリシャンのことだよ。面倒なことには関わらなさそうなのに」

「それはライトだろ」

「うるさい」


 リティアは前を歩く二人を見て、微笑んだ。


「面倒なことだからだよ」

「え?」


「放っておいて悪化しそうなことは、今のうちに治めておいた方がいいんだよ。あの二人は素直だから、他の人が言えばすぐに仲直りするんだよ。本当は、言い合いなんてしたくないだろうからな」


 リティアは二人を見ながら言った。

 どこを見ているのかとライトも視線を前にすると、手を繋いて歩く二人の姿が目に映った。

視力が落ちてきた今日この頃(T-T)

リシャン、それはまさか、嫉妬なの?(。-∀-)

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