表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サイハテの国  作者: ヤブ
第三章
34/93

夜のサイハテ5-3

 辺りが明るくなった。

 灯りを持った者が一番上まで上ってきた証拠だ。それと同時に話し声も多くなる。


「ふう。年を取るとこの階段もきつくなるのお」

「そうですなあ」

「年を取るんだけは勘弁やわあ」


 その言葉に笑う人々。

 どんな言葉も聞き逃さぬよう耳を澄ませ、人々を壁を通して睨み付ける。

 まだ昨日来たばかりだが、何となく聞いたことのある声もある。広場で言った時に聞こえた声を覚えているのだろう。


 まさか二日目にしてこんな状況になるとは思わなかった。

 秘密を知るには時間がかかる。別に目的は秘密を知ることではない。国に攻撃のことを伝え、出来るだけ被害を最小限に済ませること。それが本来の目的だ。

 ミマーシ王国で聞いたサイハテの国の秘密のことは、ただ国を守る上で必要ではないのかと判断をしたもので、それはまだ本当に必要かは分からない。やはりこの国にとって秘密を探られるのは厄介かもしれないが、それが何かの役に立つと言うのならば、二人は放っておけないのだ。


 リティアの肩を叩く。顔を見なくても、誰かは分かる。


「何でここに?」


 ほとんど口の動きだけで言葉を読み取る。しかし、その返事はリティアには出来ない。


 市場からここへやって来た人々。何故こんなところへやってきたのだろうか。

 まず、人々は今度行われる祠の祭りの話し合いをするために市場へ向かった。マーガレットもリシャンも。それで祠に向かうのなら分かる。祭りを行うということでそこへ参ると言われれば、納得がいく。だが、何の関係があるのか分からないここへ来るのは何故か。

 考えられる理由は一つしかない。だが、確定ではない。

 ただ来ただけと言うこともあるため、慎重に判断していかなければならない。


「さて」


 ロジの声がした。

 先頭を進んでいたロジは松明を持っている。ちらほらと話している人々を黙らせるために声をかけた。


「早速始めようと思うんじゃが、よいか?」


 人々は黙って頷く。

 それを確認すると、ロジは何か分からないそれに向かって何かを言い始めた。

 それに続いて、後ろの人も順に口々にする。


 突然のことで、二人は何が起こったのか分からない。聞いたことのない言葉を口にする人々は手を合わせ、ただひたすらに口だけを動かしている。

 二人はただそれを聞いているしか出来なかった。


 数分続き、最後の一人の声が止むと、誰の声かけも無しで階段を下りていった。

 足音が完全に聞こえなくなるのを待ち、聞こえなくなった瞬間に二人は強張らせていた体を緩めた。大きなため息をはく。


「……そういうことか」


 ライトが前を見つめながら言う。

 しばらく考えた後、リティアは立ち上がり階段の方を見た。

 人々の光景が思い浮かんでくる。あの瞬間を見ていれば、今以上に不思議な感覚に陥っていたに違いない。

 頭の中にまとわりつくそれは、何故か離れない。


「なあ、リティア?」


 ゆっくりと後ろに振り返る。


「これってさ、祀ってんだよな? ……祠の神以上の何かを」


 リティアは頷く。


「そうとしか考えられない。わざわざ祠じゃなくてここに来るってことはな。それに、もしかすると……これから行われる祭りは、ここのやつのため、だったりしてな……」


 国に対して、初めて心に引っ掛かる恐怖感を覚えた夜だった。


 その後、二人は急いで家に戻った。あのあとすぐに会議が終わればマーガレットとリシャンが帰ってくることになる。その時にいなければ、疑われることは間違いない。

 だが、その日、二人が帰ってきたのはリティアとライトが深い眠りについた、その後だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ