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サイハテの国  作者: ヤブ
第一章
14/93

すべての作戦6-3

 カジュイはしばらく唸り声を上げながら考える。

 モーテルの考えは、あり得ることだ。行動力のある姉リティア、頭脳明晰な弟ライト。二人が揃えば、そうならないと考えるほうが難しいかもしれない。昔サイハテの国に行ったことのあるのならば、行動力のあるリティアはそうするだろう。考えるよりも行動するリティアを止める役目になるのがライト。危険をすぐに察知し、的確な行動、指示を出す。


「モーテル、もしそうなれば我々はどうすれば良いのだ? 先にサイハテの国に行かれてはひとたまりもない。それに、サイハテの国がどこにあるのか分かっていない。先に行かれるのは確実だ。その点に関して、お前はどう思う?」

「はい、その点は危ういと考えます。その事に関して、提案があります」

「ふむ、言ってみよ」

「はい」


 モーテルはカジュイを焦らすように間を開ける。カジュイは貧乏揺すりをし、少しずつ苛立ちを募らせる。


「……モーテル、早く言ってみよ」

「リティア・オーガイトをこのまま野放しにするのです」

「なっ、何故だ」


 予想外の展開に、カジュイは驚きしか出すことが出来なかった。リティアを特別部隊に入れたいと言っているカジュイの話を無視し、むしろ野放しにするというのは、カジュイの納得のいく話がないと通らない。


「そんなことをして、何か意味があるのか」

「意味があるのか、と言うより、そうなることで我々が有利になると考えています」

「どういうことだ」

「リティア・オーガイトがいない今、私たちの敵はサイハテの国に集中しております。いくら先に行ったからと言っても、サイハテの国が強い兵器を所持していたとしても、それらを破壊すれば後は楽勝です。それに、こうなってしまった今、リティア・オーガイトを部隊に入れても、裏切る可能性があります。そうなれば、部隊は少なからず損害を受けます。人が必要になるこの作戦ならば、むしろリティア・オーガイトは入れるべきではないと判断できます」

「ふむ……」

「それに、リティア・オーガイトは何度かサイハテの国を訪れています。もしサイハテの国に兵器があるのならば、リティア・オーガイトは兵器があることを知っているはずでしょう。なにしろ、祖母が暮らしていたんですから。何かあれば困るため、祖母が言っていた可能性は十分あります。それなのに、リティア・オーガイトは向かった。それは何故か。……サイハテの国には我々の部隊に対抗できるものが無いからではないでしょうか」


 そう言うとカジュイはその事に気づき、目を見開いた。


「た、確かにその通りだ。サイハテの国に兵器があるのなら、リティア・オーガイトはいかないはずだ!」

「ええ、そのとおりです」

「モーテル、何か作戦はあるのだろうな?」

「ええ……もちろん」


 その返事を聞き、カジュイは立ち上がった。


「よし! 今すぐ会議を始めるぞ!」


 椅子の背もたれにかけていた白のマントを肩に羽織り、モーテルに向かって歩き出す。


「王、今すぐに――」

「おい」


 カジュイは突然モーテルの胸ぐらを掴み、顔のギリギリまで持ち上げる。


「っ」

「わしに逆らうのは今回で最後にしろよ」


 カジュイの目は漆黒で、他の色は何も入っていない。

 黒は、どんな色でも自分と同じ色に変えてしまう。

 カジュイも、そんな力を持っているのだろうか。

 その漆黒に、モーテルは一瞬、自分が漆黒に包まれた感覚に陥った。だが、それは本当に一瞬のこと。

 モーテルを投げ飛ばすようにしてカジュイは手を離す。モーテルは意識するのを忘れ、そのまま床に転げてしまった。

 その姿を見て、カジュイは優越感に浸る。

 いくら攻撃部隊第一団隊長でも、わしには逆らえない。

 カジュイの目はそう言っているようである。

 そのまま浸りながら、カジュイは堂々たる歩きようで扉から出ていった。モーテルはその間、少しも動くことはなかった。

 扉の閉まる音が部屋に響いた。

 すると、モーテルは何事もなかったかのように立ち上がり、服についた埃を手で二回ほど払う。


「ふう……。王は乱暴でいらっしゃる」


 吐き捨てるように言った。

 そして、カジュイが出ていった扉を睨み付けるようにして言う。


「……だが、操りやすい人間だ」


 先程までのカジュイを慕う表情から一変し、今のモーテルには反抗の意思しか見当たらない。

 モーテルは扉に近づく。扉が閉まる直前にモーテルは中を見つめる。

 そして、怪しい笑みを浮かべた。

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