↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
PR

婚約破棄ウォリアーズ

作者: 黄色猫
掲載日:2015/11/16

初投稿になります。皆様宜しくお願いします。


※特殊な単語にルビをふりました。

「アリーシャ・コーダンテ!君の傲慢なその態度、もはや堪忍ならんッ!」


贅を尽くした空間で華やかな男女が歓談する中、突然若い男の怒声が響き渡る。


はて何事か、と騒ぎの渦中を見れば、中心にいるのは数名の男女。

怯えた様子の小柄な女性を庇い何者かと対峙しているのは、先ほど怒声を発した若い男。

その後ろには取り巻きらしい男が複数。

その彼が睨みつけている視線の先には、絢爛な衣装を身に纏い、滝の様な金髪を背後に流した令嬢がただ一人。


ここはゼナム王国の首都アルエスタにあるトリュフォード学園。歴代の王族が卒業生として名を連ね、貴族の子弟も多数在籍している由緒正しき学舎である。

本日は学園の卒業式。途中国王のスピーチを交えて式はつつがなく進行し、終了後は卒業生にとってのメインイベントである卒業パーティーに移行。卒業生が語り合い、招待客が談笑する宴もたけなわの頃、突如それまでの雰囲気をぶち壊すかの様に騒動が持ち上がったのである。


せっかくの晴れの場に何を無粋な、と主犯の面子を確認する参加者達。

しかし次の瞬間、皆一様に呆れ顔に変わる。


ああ、またこいつらの痴話喧嘩か、と。


主犯その1:怒声の男。セリオス・ファーレーン。

この国の第二王子である。眉目秀麗な優男で、正義感が強いと言われている彼だが、自分の都合で場の空気をぶち壊す辺り、その性格は察して余りある。


主犯その2:怯えた女。ルシア・ソルディス。

成績優秀の為特例で途中編入してきた平民出の少女。誰にでも明るく接する健気な性格・・・というのは主に男性に対してのみであり、最近は本命のセリオスに取り入る事に成功した模様。


そして主犯その3:孤立無援の令嬢。アリーシャ・コーダンテ。

この国の政治を担う宰相コーダンテの一人娘であり、セリオスの婚約者。成績・人望共に貴族子弟の模範の様な少女、と讃えられていた彼女だったが、半年前を境に豹変、ルシアに対し数々のいやがらせをしている・・・との噂である。



「まあ セリオス さま わたくしが ごうまん とは なにが きに さわったので しょう、か? 」


ギギギ、とぎこちなく首をかしげるアリーシャ。その顔はまるで能面の様に無表情である。


「衆人の眼前で白を切るかッ!君がこのルシアに行った言うに堪えない数々の嫌がらせの類、忘れたとは言わせんぞッ!」


「ギギギ りかい ふのう です。いったい、わたくしが、ルシア さまに なにを したと おっしゃるの、です、か? とんと みに おぼえ が ございません、わ。」


「あれだけの事をしてまだ無関係とのたまうかッ!この3ヶ月、君が隠れて行ってきた事はすべて背後に控えるズクとゲルグが極秘裏に調べ上げたッ!もはや言い逃れはできぬぞッ!」


ちなみにズクが騎士団長の長男、ゲルグが魔導師団長の次男である。

彼らの人物像や調べ上げた証拠は読者の方々が思い描くものでだいたい合っている。


「まあ わたくしが そんな ことを すると ほんき で おおもい ですか? だいいち わたし は ルシア さまと そんなに めんしきが ございません、わ。それに しょうこ と いっても ぐたいてき な もの は あるのでしょう、か? どうせ りゅうげんひご の たぐい では なく、て?」


「・・・ッ!アリーシャ、君が半年前の事故から生還した時、私は心の底から歓喜した。・・・だが、学園に戻ってからの君はまるで別人の様に変わってしまった。最初は事故の後遺症か、と思い見守るに止めていた。しかし、事ここに至りもはや静観はできない!全生徒の模範とまで言われた君はいったいどこへ行ってしまったのだッ・・・!おまけにルシアに対しての幼子の如き嫉妬と執拗な危害、もう我慢できぬッ!」


半年前、アリーシャは領地視察中に崖から馬車ごと転落する、という原因不明の大事故に見舞われた。

崖下で馬車は全壊、同乗していた従者も即死状態だった為、一時は生存は絶望視されていたが、馬車の残骸から奇跡的に無傷な状態でアリーシャ本人が発見され、セリオスや宰相以下関係者は一様に胸を撫で下ろす。

しかし、療養期間後に学園に復帰した彼女は、誰にでも礼儀正しく明るい笑顔を振りまいていた以前とは異なり、無表情で冷淡な女性になっていたのである。


-そう、まるで人形の様な。


「ギギ わたくし が かわってしまった、と? それは おもいすごし ですわ。 わたくし は なにも かわっては いません わ、よ? しょうしん しょうめい アリーシャ コーダン、テ ほんにん で、す」


・・・と、ここでセリオスの背で怯えていたはずのルシアがおずおずと口を開く。


「・・・あの、セリオス様。ずっと前から言おうと思っていたんですが・・・アリーシャ様のご様子、何か変じゃないですか・・・?まるでロ」

「ルシアッ!君は何も言わなくていいんだッ!数々の仕打ちを受けながらもアリーシャを庇うその優しさ、私は理解しているッ!しかし、今回ははっきりさせておかなくてはならないんだッ!今後の私達の為にッ!」

「え、えぇー・・・」


一気に死んだ目になるルシア(と上座で見ている国王)。

もう早く終わらないかなあ、いっそ帰りたいなあ、という観衆一致の思いとはうらはらに、茶番はさらに過熱していく様相である。


「もういいッ!アリーシャ!君が自らの非を認めないというのなら、私は最後の手段を取るしか他に道は無いッ!」


「ギギ セリオス さま まさか その しゅだん と、は」


グググ、と音を立てうつむくアリーシャ。握りしめられた両の拳はギリリリ、と万力を締め上げた様な音を放ち、その体はブルブルブル、と小刻みに振動し足元の絨毯がえぐれている。


さすがのアリーシャも観念したのか、しかしもう遅い、と決定的な一言を放とうとするセリオス。


頭をかかえる国王。ようやく三文芝居も閉幕か、と弛緩する参加者達。


「いやおかしいよ!どう見ても人間じゃないって!あれ絶対ロ」と一人騒ぎ立てるルシア。




しかし、誰一人として気付いた者はいなかった。

うつむいたアリーシャの表情が、嘲笑で酷く歪んでいた事に。





「ククク・・・愚かな連中よ。無知蒙昧とは、正にお前たちを指す言葉に相違ない。」

一人の男が、広い執務室の中でグラスを片手にモニターを視聴しながらせせら笑う。


ここは、ゼナム王国の隣国に位置している独裁国家シグマ。

その首都シグマグィルの最奥にある城塞化された首相官邸シグマパレス、ここの最上階に位置する執務室で一人ほくそ笑んでいるこの男こそ、今回の事件の影の首謀者、独裁者シグマである。


「クク・・・しかしこうも事がスムーズに進むとはな。これも我が国の諜報部の情報操作と、我が国の科学技術の粋を集めて製造された要人暗殺用兵器、機械忍者『ハニトラ28号』の成果よ。まるで生前のアリーシャ本人と区別がつかんわ。」


何という事だろう!先程まで我々がアリーシャだと思っていた人物は、独裁国家シグマが送り込んだ殺人兵器、ハニトラ28号だったのだ!

これまでの一連の出来事は、アリーシャ、もといハニトラ28号を影で操るシグマがすべて仕組んだのである!


「フフフ・・・後はあのバカ王子が『婚約破棄』のキーワードを言い放てば、ハニトラ28号の自爆によりあの国の中枢は王族もろとも灰燼と帰す。そうなればゼナム王国は労せずともわが手中に・・・」


ここでさらに悪い知らせを伝えねばならない!

ハニトラ28号の心臓部には、超小型の魔導爆弾が内蔵されているのだ!

それはセリオス本人の「婚約破棄」または「婚約を破棄」の言葉がキーワードとなり爆発、半径5kmを跡形もなく吹き飛ばすのである!


今回の事態を引き起こす為、半年前のアリーシャ転落事故を引き起こしたシグマ諜報部は、ハニトラ28号を替え玉として学園に潜入させた後、連携してルシアに対する執拗な嫌がらせを仕組んでいたのだ!

正に人外の所業!


「私は酒でも楽しみながらラストワルツを見学するとしよう。せいぜい無様に踊るといい愚民共よ。ハハハハハハ!」


南無三!もはやゼナム王国の人々の命は風前の灯!




「・・・幼い頃よりの君との縁、なごり惜しいが断腸の思いで断ち切らせてもらうッ!」


「ギギギ・・・ワガ目的、成就セリ・・・」


人知れずほくそ笑むハニトラ28号。見えない断頭台の刃は、すぐそこまで迫ってきている!


「アリーシャ・コーダンテ!君との婚約を破-」

『-そこまでよ!!シグマの機械忍者!!これ以上の悪事は許さない!!』


突如、凛とした声が会場に響き渡る!


「ッ!!」

「ダ、ダレダ!!」


一斉に声の出所を探す参加者達。すると突然、その中の一人が天井付近を指差した!


「あ、あれは何だ!」


会場の天井に吊り下げられているシャンデリア。その上に腕を組み仁王立ちしている人影が!

全身を赤い忍装束で包み、金髪を後ろで束ねているその人物の顔は・・・ハニトラ28号、いや、アリーシャ・コーダンテにうり二つではないか!


「ア、アリーシャ!アリーシャでないか!これはどういう事かッ!」

突然の事態にセリオスが瞠目する。


「いいえ。私は国際平和機構の特殊工作員『緋刃那(ひばな)』。決して半年前に崖から転落したアリーシャ・コーダンテなどではないわ。」

その人物から発せられた返答はとても涼やかであった。


「そ、そうか。他人のそら似か。ならば仕方がない。」

「え・・・あれアリーシャ様でしょ?!ねえ!!だって顔も隠してないし、声もまんま本」

「ギギ・・・キサマ、アノ時死ンダノデハナカッタノカ!死体ハタシカニ激流ヘ打チ捨テタハズ!」

「ちょっと!!最後まで言わせてよ!!」


うろたえるハニトラ28号に、緋刃那はギン、と射殺す様な視線を投げ付ける。


「たしかにあの時、私は油断して馬車ごと崖から転落したわ。・・・しかし、落下途中に馬車から脱出、岸壁に生えていた木につかまり九死に一生を得たの。その後表沙汰は死んだと見せかけ、裏であなた達シグマ暗躍の証拠を調査していたのよ!ちなみに死んだと思っている従者達は全員救出しているわ。落下途中にすべて人形にすり替えておいたの。忍術を応用したちょっとしたトリックよ。」


「ギギギ・・・トリックナラ仕方ガナイ。」

「あー、そこ、本人だって認めちゃうんだ・・・」


死んだ目をした人物1名を除く全員が注目する中、王国の運命を掛けた戦いが始まろうとしている!


「ギギ・・・イカニモ私ハシグマノ機械忍者、ハニトラ28号。国際平和機構ノ犬メ、コンナ所マデ首ヲ突ッ込ンデクルトハ、相変ワラズ正義ノ味方キドリカ?」

「・・・たとえ犬と誹られようと、のさばる悪は許さない!私が相手よ!ティヤッ!!」


シャンデリアから飛び降りつつ、目にもとまらぬ動きで緋刃那の懐から苦無が放たれる!

飛燕の如き速さでハニトラ28号に襲いかかる4つの影!


ガシィィィッ!

しかし、必殺と思われた苦無はすべて受け止められていた!

ハニトラ28号の両腕、そして、突如背中から生え出た一対の毛むくじゃらの獣の腕によって!


「ギギ・・・スベテ急所ヲ狙ッテクルトハ。コウナレバワタシモ本来ノ姿デ相手ヲスルトシヨウ。」


ピシリ、と縦の亀裂がハニトラ28号の体の中心に走る。次の瞬間、頭から全体が左右に裂け、中から出てきたのは・・・背中に「28」と書かれた巨大な蜂の巣を背負う4本腕の虎の怪人だ!


「ゲーッ!!アリーシャ様が化け物になったぞ!!」

「もうだめだぁ・・・おしまいだぁ・・・」

「いったい本物のアリーシャ様はどこに?!」

「でもあの怪人、なんだかモフモフしてる・・・。ちょっとでいいから触りたい・・・。」


遠巻きに見ていた観衆は大混乱に陥る。しかし、その中で相手と対峙している緋刃那だけは冷静な目でこの奇怪な怪人を分析していた。


「なるほど・・・虎の獰猛さを蜂蜜でコーティングして相手の油断を誘い、隙を見て一撃で葬る。シグマも恐ろしい兵器を作ったものね。」


「ギギギ・・・果タシテソノ通リカナ?オ前モワタシノ肉球ニカカリ死ヌノダ!」


「たとえいかなる相手だろうと、悪には屈しはしない!ティヤッ!!」


緋刃那は背中の忍刀を抜き放ち跳躍、頭上からハニトラ28号に襲いかかる!

(身体能力もさる事ながら、気になるのは背中の蜂の巣。初手で潰させてもらう!)


ギィィィィン!!

しかし、疾風の様な彼女の抜き打ちも交差した両腕に阻まれてしまう!


「ギギギ・・・貴様ガ背中ノ蜂ノ巣ヲ狙ッテクルノハ予想済ミダ。」

「く・・・・ッ」


一旦距離を取ろうと後方へ飛ぶ緋刃那。しかし!


「バカメ!ソノ行動モ予想ノ内ヨ!クラエ!シグマ忍術『蜂蜜天国(ハニームーン)』!」


ドドドドドドドド!!!

突如、轟音と共に打ち出された無数の黄金のきらめきが空中にいる緋刃那めがけて殺到する!

「グ、グァァァーッ!!!」

ドゴォォォ!!!

直撃を受けた緋刃那が壁際に吹き飛ぶ!受け身も取れず叩きつけられた瞬間、衝撃で壁が崩壊!瓦礫と共に大量の粉塵が舞う!


・・・煙が晴れた時、全員の眼前に広がっていたのは-

大量の瓦礫にまみれて倒れ伏す彼女の姿だった。


(うう・・・体が動かない。しかし、何と濃厚な甘さ・・・)

体の自由が効かない中、必死で意識を繋ぎ止めようとする緋刃那。

この恐るべき結果を生み出したシグマ忍術『蜂蜜天国』とはいかなる技なのか?


それは、ハニトラ28号の背後の蜂の巣内で超濃縮蜂蜜を大量生産、巣穴から球状に排出されたそれらを四本の腕を利用して間断無く相手に投げ付ける、想像を絶する殺人技である!

さながら機関砲の如く連続で打ち出された蜂蜜を受けた者は、濃厚な蜂蜜の甘さに舌鼓を打ちながら死んでいくのだ!

正に悪魔が成せる技!


「ギギギ・・・我ノ本懐ハ暗殺ニ非ズ。下手ヲ打ッタナ、国際平和機構ノクノ一。シカシアレヲウケテモ死ナナカッタ者ハ、貴様ガハジメテダ。ホメテヤルゾアリーシャ、イヤ緋刃那。」


そう、常人よりもはるかに身体能力の高いくの一である緋刃那だからこそ死を免れたのである。

しかし、深刻な身体のダメージに加え、頼みの忍刀は先程の壁の崩壊で紛失してしまっている!

あやうし緋刃那!もはやこれまでなのか?!


(忍刀を探す隙をやつが見逃すはずがない・・・一体どうすれば・・・)

その時、緋刃那の頭の中にかつての師匠であるワン老師の顔が浮かんだ!


『よいか緋刃那よ。忍びの最大の武器とは刀や手裏剣の類に非ず。己の肉体そのものが最大にして最後の武器なのだ。窮地に陥った時、己自ら刃となり生を拾えると知れ。』


(己自ら刃となる・・・!!)


おお!瓦礫をかき分けついに緋刃那が立ち上がった!

しかし、忍者装束は埃と蜂蜜で汚れ、足元もおぼつかない。立っているのがやっとの彼女に、果たして勝機は有るのか?!


「ギギギ・・・アノママ果テレバ楽ダッタモノヲ。自ラ進ンデ地獄へ行クカ。」

「さ、先程行ったはず・・・悪に屈しはしない、と・・・」

「ナラバ望ミ通リアノ世ヘ送ッテクレル!-シグマ忍法『蜂蜜天国』!」

「死中に活有り!!ティヤッ!!」


またもやハニトラ28号から蜂蜜が放たれようとする刹那、緋刃那は跳躍した!

-ハニトラ28号がいる前方、床すれすれに低く!


「ナ、何ダト!!」


まるで魚雷の如き速さで地面と平行に滑空、ハニトラ28号の股の下を潜り抜けた緋刃那は急速に反転、背後からハニトラ28号を羽交い絞めにした!


「これで蜂蜜は使えまい!」

「グ、グオーッ!貴様、何ヲスルツモリダ!」

「忍びの奥義、今こそ見せる!テェイヤァーッ!!!」


大地を蹴り跳躍!空中で目にも止まらぬ速度でハニトラ28号と共に縦回転し、天井に向かって上昇していく!もしや自爆覚悟の特攻か?!

否!天井に激突する瞬間に緋刃那は離脱、シャンデリアが吊り下げられた鎖をつかみそのまま横回転で勢いを相殺した!


ドグワァァァーン!!!

ハニトラ28号はなすすべもなく天井へ激突!

「グェェェェーッ!!!」

周囲をすり鉢状にへこませながら大の字にめり込んだ!


「・・・四十八の殺人技の一つ、『逆飯綱(さかさいずな)』。冥途の土産とするがよい。」

シャンデリアに寄りかかり、緋刃那はつぶやくように言った。


「ギ・・ギギ・・身体ダメージ想定値ヲオーバー、作戦続行不可能・・・最終手段ヲ実行スル」

突如、ハニトラ28号の体が光りだす。当初の予定通り自爆をしようというのか!

「!!させないっ!!」

一足飛びに緋刃那は跳躍、ハニトラ28号の体をむんずと掴むと、重力にまかせて天井から引きはがす!

「地獄へはお前たち(・・・・)だけで行け!テェイヤァァァァーッッッ!!!」

そのまま空中で体を限界まで捻り、力の限りに窓に向かって投げつけた!

「ギュェェェェーッ!!!」

会場の窓を突き破ったハニトラ28号は、解き放たれた矢の如く空の彼方へ飛んでいく!




「おのれ!作戦失敗か!」

床にグラスを投げ付け、ブラックアウトしたモニターを忌々しげに睨みつけるシグマ。

「奴らの腕がこれほどのものとは!許すまじ緋刃那!許すまじ国際平和機構!次は必ず」

ドゴォォォォーン!!!

突然、音を立てて執務室の壁が何かに突き破られる!

「な、何事だ!」

このシグマを驚かすとは万死に値する、と崩壊した壁の方を見れば・・・そこにいるのはボロボロになったハニトラ28号!

緋刃那は会場の外へハニトラ28号を投げ付ける直前、瞬時にシグマパレスの方向を察知していたのだ!

「ま、まさか!と、止めろぉーッ!!!」

「ギピ・・ガガ・・ジバク、じっこ、う」

「ウボアァーッ!!!」

次の瞬間、ハニトラ28号は爆散!独裁者はシグマパレスごと吹き飛んだ!

正義は守られたのだ!




「夜中の夜明けね・・・いっそ花火だったら綺麗なものを・・・相変わらずツイてないわ。」


まるで真昼の様な明るさのシグマグィルの方角を見ながら、緋刃那は一人つぶやく。

激闘の後の疲労か、さすがに会場の床にしゃがみ込んでいた彼女だったが、意を決したかの様に立ち上がると、しっかりとした足取りで破れた窓の方へ歩いていく。


「待ってくれッ!」


その彼女を呼び止める者が一人。セリオスである。


「ありがとう、緋刃那。もう少しで会場の者達どころか国民全員を危機にさらす所だった・・・。」

「いいえ、礼には及ばないわ。私は任務を果たしたまでの事。」

振り向かずに緋刃那は答える。

「・・・そ、そうか・・・ところで、アリーシャはどこへ・・・?」

「・・・彼女は無事よ。でも、この国には二度と戻ってこないのではないかしら・・・彼女は旅に出たのよ。そう、長い旅に・・・」

「・・・もう、会えないのか?」

「そうね、もし・・・将来ほんの気まぐれで彼女がふとこの国を思い出したのなら・・・立ち寄る事もあるかもしれないわ。確証は無いけど、ね。」

「・・・緋刃那、いや、アリーシャ。私は君に!」

「これ以上の長居は無用。忍びは闇に潜んでこそ忍び。再び歴史の裏へ戻るのみ。・・・さらば!」


赤い影は大きく跳躍すると、窓の外へと姿を消した。


「・・・ありがとう、アリーシャ。もし・・・もしも、また会う事ができたら、私は今度こそ・・・」




こうして一つの野望が潰えた。しかし、この世にはまだ苦しむ人々がいる。走れ緋刃那!戦えアリーシャ!

この世から不当な婚約破棄が潰える、その時まで!


「あの・・・私の婚約ってどうなったんですかね?おーい・・・」


皆様の評価やブックマーク、本当にありがとうございます。

近いうちに緋刃那を帰ってこさせようと思っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 それとお約束破りかもしれないけど、これだけの戦闘力を持つハニトラ。プロトタイプ含め28号までの全機を投入してたら、正攻法で国を落とせた気が少々、、、
[一言] あ、ホンマもんのハニー虎なんですねw 肉球にかかってなら殺されたいかもしれないw
[良い点] 「ウォーリアーズ」「ロボット」「クノイチ」って忍者ウォーリアーズかよ! 懐かしいなぁ、本物アリーシャvsロボアリーシャシーンでZUNTATAサウンドの三味線ソロが脳内再生されました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。