彼の得意技
「ねぇ。同窓会どうする?」
「同窓会?」
携帯をいじりながら、
自分のベットでくつろぐ樹に、来月行われる高校の同窓会についてたずねてみる。
「A組のラインで言われたじゃん。来月やるって」
「あー、そういえば。まぁ基本俺暇だし行くよ。真奈美は?」
「んー」
「いっつも来てないよな」
「バイトが忙しくて」
そうは言っても万年人手不足のバイト先なのだ。
休むのはなかなか難しいだろう。
それに、
「樹行くんなら私いいや」
「はぁ?」
「だって、お酒入ったら樹なに言うかわかんないし」
合コンのときを思い出してそういうと、なにやら彼は不服らしい。
事実を言ってるだけなのに。
「なんか言ったら困るの?」
「え、付き合ってること言う気?」
「うん」
「やめてください」
「……なんで?」
あ、樹くん苛ついていますね。
いつの間にかベットから起き上がっていた樹と顔を合わせていう。
「恥ずかしいです」
「俺と付き合ってることが?」
「うん」
「なんで」
「だって、うん。ほら、ねぇ?」
「わかんないんですけど」
むす、としている樹の隣に座ってみる。
うーん。ご機嫌斜めですね。
「……樹の彼女が私とか、どうなんですかね」
「どうもなにも、俺がいいんだからいいんですよ」
「いやいや、女子の目とか男子の目とかあるわけですよ。あれ、なに相川いきがっちゃってんの?的なさぁ」
「そんなこと思うような人たちだったっけ」
「……、……思いそうもないけど」
「じゃあいいじゃん」
「……でもイヤなの!樹と付き合ってることがいやなんじゃなくて!知られるのがイヤなの!」
「……」
「まぁ……、彼女いるのって聞かれたらいるって答えてね……」
「……なんで?」
「だってさー……。樹、意外と人気あった……ような気がするし……森川くんには負けるけど……」
「おい」
「それに!今のほうが、……なんでもない」
「言いかけたことは言いましょう」
「なんでもないです」
「真奈美ちゃん?」
「……」
「ちゅーするよ」
「言います言います。今のほうが樹かっこいいからなんかいやだな……っ」
人が何かを言ってる途中なのに。
黙らせるように樹はいつも、キスしてくる。
多分これは、彼の得意技なんだろう。
「だから!人がしゃべってる途中になんでキスしてくるの!」
「真奈美のやきもちがかわいくて」
「や、きもちじゃないし……」
「やきもちですよそれ」
「ちがう」
「そういうのやきもちって言うんだと覚えといてください」
「……分かりましたー……」
なんだか不服だけど、うなずいておきましょうかね。
「うん。素直素直」
そうやってにっこり笑う樹。
……ま、いっか。