おうじょ
王女が目を覚ますと急いで朝食をとり、お城に出発する準備をして宿屋の外に出ると、そこには馬車が停まっています。馬車の中からはお城の兵士が出てきました。
「王様の使いで、王女様と勇者様をお迎えに上がりました」
馬車の扉を開き、兵士は敬礼をします。どうして王女が助け出されて、ここにいることがわかったのか不思議に思っていると、王女の肩にオレンジのカナリアが留まりました。
「まあ、ジャックが案内してきてくれたのね」
カナリアは嬉しそうにさえずります。
二人は馬車に乗り込んでお城へ向かいました。歩いてずいぶんかかる道のりも、馬車だとあっという間に通り過ぎてしまいます。
そして、その日の昼過ぎにはお城にたどり着きました。お城の門の前では、国王が王女の帰りをいまかいまかと待ちわびています。その周りは王女の帰りを待ちわびる大臣や、乳母や、先生で取り囲まれていました。
王女が馬車から降りると人々から歓声が上がり、勇者が馬車から降りると大きな拍手が巻き起こりました。
国王は王女を抱きしめたあと、勇者の手を取って握りしめて言います。
「良くやった。望み通りわしの後継ぎとして、クラクス……そなたを城に迎えようぞ」
「ありがとうございます」
勇者は誇らしげに微笑み、王女を見ました。王女は隣で静かに微笑んでいます。
その夜、城では夜通し盛大なパーティが開かれ、まるで国中の人々が王女の戻ってきたお祝いを囁き合っているような賑わいでした。
勇者が恐ろしい魔法使いを倒した経緯を説明することから解放されたのは、みんなが疲れ切ったころです。ようやく王女と二人きりになれると、勇者は王女をその腕でしっかりと抱きしめて言いました。
「やっと……捕まえた」
Fin.




