トイレには秘密?が?
「うっ。」
トイレは想像できないような悪臭だ。
「うちマジでここなん?
てか、どうやってココ掃除すんねん…。」
「それで良くない?」
ミキはバキュームを指定した。
「えっ!これ?無理やろ。」
「なんでもいいからしろや。」
高良はしぶしぶバキュームを持ってブツを
掃除しようとした。
その時……、
「うわっ。」<バナナンヌ>
わっと驚くぐらいの臭いに思わず、
持っていたバキュームを手放してしまった。
大量に排出された―臭いの原因であるそのものの中に
見事にバキュームはまるで浸かるように落っこちてしまう。
うんこ……それが臭いの元。
今となっては自分が世界で一番憎きもの。
「な。な、なんてことだよぉ!!」
大声で叫ぶと現状突破出来るかなと思いっきり絞り出してみるが、
現実世界はそう甘くなく、
私のバキュームたんは未だまみれたまんま。
……ま、まさかな。
柄の部分から先まで全部うんこまみれに
すっぽりフィットしているなんて…ええぇ!?
えらいことや…。
やってしもうたわ。
私、死のう、いや…死のう。
「うわっ…うんこまみれや!!!」
やや後ろから聞こえた声に便器から視線を向けると、
マコトが自分を憐れんだ目で見ていた。
タンバリンでどつきまわしたろか、ムカツク。
苦しい胸の内を明かさず笑顔を見せる私、
ガチで主演女優賞頂けるわ。
「わー。これはヒサンや。」
「やってもーたな。高良。ご愁傷様。」
「まぁ、きったなっ。キモイ。」
いろんなコメントを残して皆が
見下した目で自分を見ていく。
苦しすぎる…うんこまみれバキュームどうしよう。
うんこついたまま手で掴む?
無理………いや、考えてみろ……
イヤ、考えてもやっぱ無理やろ…。<カイトン>
泣きそうになっていると、
廊下から先生の声がトイレ内に響いた。
トイレの各個室からも声がかかる。
「高良、急げよー。」
周りを見回すと、
既に手を綺麗に洗った皆が立っていた。
あぁ、清潔そう。
羨ましい…というか、
若干綺麗なトイレを掃除した点から恨めしい。
「高良。」
催促するようにアヤが声をあげた。
よし。
女、高良、心に決めて…手は洗えばいいんだし…。
勢いよくバキュームを手に取り、引っ張った。
スポン―
と抜けてくれれば良いのに、
ぴったりくっ付いてしまったらしく、なかなか抜けない。
ほんま腹立つ。
あまり触りたくない柄をもう一度きつく握り直し、
先ほどより力を入れて引っ張った。
ポコン―
スポンよりポンより間抜けな音がトイレ内に響く。
「え…ちょ…。」
思いの他、力を入れすぎたみたいで
後ろによろめく。
いや…。
トイレでこけたくない。
あっ…。
つるんと後ろに尻もちをついたはずなのに、
そこは床ではなかった。
「えっ…ちょ…。何やのん?これ?」
的確に言うと空間。
下にすぅーと伸びている。
まぁ、正直下を見たわけじゃなかったが、
落ちている感覚で。
でも…、なんか、
落下速度が異常に速い。
自分の短い髪が上に靡いている。
叫ぶように出す声も上に流れ、消えていく。
なんか、アリスとか読んでも、
こんな落下じゃなかった様な気がする。
周りに机があったり、イスとかおやつとか、本とか…
「ぎゃっ。」
色々と頭の中で巡らせているうちに
下に落ちた。
下に着く前にゆっくりになるとか、
下に敷物があるとか、
全く心遣いが感じられない床に…。
高良はじんじんと鈍く痛むお尻を撫でながら立ちあがった。<のぶてる>