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第48話 地下への扉

「……知りたい?」


シオンの声は静かだった。


玲花は日記を見る。


薄い文字。

震えた字。


——地下は危ない。


怖い。


でも。


「……知りたい」


迷わず答えた。


「……」


シオンは少しだけ目を伏せる。


「そっか」


怒らない。止めもしない。


だからこそ、怖かった。


「玲花」


シオンがゆっくり近づく。


「地下に行ったら」


少し間を置く。


「戻れなくなるかもしれないよ。それでも行く?」


玲花はシオンを見る。


「……なんで」


「なんでいつも」


声が震える。


「私に選ばせるの」


シオンは黙る。


「止めたいなら止めればいい」


「隠したいなら隠せばいい」


「なのに、いつも……」


玲花は拳を握った。


「私に決めさせる」


長い沈黙。


やがてシオンが口を開く。


「……玲花が」


静かな声。


「いつか俺を恨むから」


「……え?」


「俺が全部決めたら」


少しだけ目を伏せる。


「玲花はずっと、自分じゃない誰かのせいにできる」


「だから」


小さく笑う。


「自分で選んでほしい」


その言葉は優しい。


でも、どこか怖かった。


玲花はゆっくり立ち上がる。


日記を閉じる。


「……行く」


シオンは止めなかった。


「分かった」


それだけだった。


廊下。


夜の屋敷は静まり返っている。


普段誰も近づかない場所へ、玲花は歩いていた。


隣にはシオン。


近い。


でも、もう前みたいに安心だけではない。


階段を下りる。


一段。


また一段。


空気がどんどん冷たくなる。


やがて、地下へ続く扉の前に着いた。


古くて重い扉。


「ここ……」


玲花が呟く。


「うん」


シオンが答える。


「昔からあった」


「……なんで教えてくれなかったの」


少し間。


「聞かなかったから」


「嘘」


玲花はすぐ返した。


シオンが少しだけ驚いた顔をする。


ほんの一瞬。


初めてだった。


玲花が、シオンの言葉を疑ったのは。


シオンはふっと笑う。


「変わったね」


「前は、そこで終わってた」


その言葉が引っかかる。


前。


またその言葉。


玲花は扉を見る。


鍵穴。


そこに、持っている鍵がぴったり合った。


震える手で鍵を差し込む。


カチ。


小さな音。


扉がゆっくり開く。


冷たい風が流れてくる。


暗い奥。


その瞬間。


奥から何かが落ちる音がした。


カラン。


「……っ」


玲花の体が固まる。


隣を見る。


シオンの表情が変わっていた。


ほんの少しだけ。


驚いている。


「……シオン?」


沈黙。


そして。


「……誰か入った?」


その一言で、玲花の背筋が冷える。


シオンは地下の奥を見る。


さっきまでの穏やかな顔ではなかった。


「玲花」


「……なに」


低い声。


「ここから先」


少し間。


「俺の知らないものがある」



――第48話 終――

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