エリルシアの2月14日
本当に思い付きです。
頭空っぽで1時間ほどで書いたものなので、突っ込みは御容赦を!ww
この世界の元ネタなんて、あるのかないのかわからない。
少なくともエリルシアの記憶の中にはなかった。
まぁ、なければないで、何の問題もない。
でも……思い立ってしまったのだ。
目覚めて間もなく1年…。
まだ寒さが身に染みる2月の……そう、今日は14日だ。
エリルシアはラフィラスの目を、なんとか掻い潜って厨房へやって来た。
突然やって来たエリルシアに、目を丸くして困惑する料理人達に、シーッと唇の前に指を立てて、静かにするようにお願いする。
ラフィラスにバレたくないのだ。
だって折角だから驚かせたい。
別にする必要はないのだが、忍び足で調理人の一人に近付く。
「(どうされました?)」
意図を察してくれた様で、潜めた声で料理人が尋ねてくる。
「(忙しいのにごめんなさい。
あの…チョコレートとか余ってないですか?)」
「(チョコ……レ……?
それって、何ですか?)」
想定外の反応だ。
まさかと思うが、この世界にチョコレートはないのだろうか……。
一瞬頭が真っ白になりかけたが、何とか踏みとどまって『エリルシアとしての記憶』をひっくり返す。
(領ではお菓子なんて当然食べる余裕なんてなかったわ…。
王宮では料理長がケーキやクッキーを焼いてくれたけど……そう言えば使われていたのは果物にスパイス……。
目覚めてからも……。
え……マジでチョコレートないの…?
あぁ、でも名称が違う可能性があるわ!)
その可能性に一縷の望みを賭けてみる。
「(カカオって……あぁ…これも名前が違うかもしれないわ。
えっと、掌くらいの実の中に入ってる種で、まず発酵させたものなのだけど)」
「(種を発酵ですか?
ぅ…ん?
おい、お前ら知らないか?)」
他の料理人達にも小声で尋ねてくれる。
が……みな首を横に振る。
「(そう……急に思い立ったから仕方ないわ…ごめんなさい。
じゃあ別の甘いモノでも作ろうかしら)」
バレンタイン等と言うイベントは、少なくともロズリンド王国にはない。
だからチョコレートを諦める事は仕方がないが、せめて何か甘いものを作ってラフィラスに贈りたい。
「(隅っこで良いから、ちょっと借りて良い?)」
「「「………ぁ」……ぅ」」
料理人達の邪魔になる訳にはいかないので、端っこで静かに作ろうと思い、料理人達に尋ねたのだが、彼等は何故か固まってしまった。
「(あの、じゃあ後でい「後で……何をするのかな?」………)」
固まる料理人達の視線を辿り、エリルシアがゆっくりと振り返る。
そこにはにっこりと笑うラフィラスが居た。
「ぁ、ぇ…その……」
「エリ、厨房は危ないよ。
さぁ部屋に戻ろう?」
「ぇ、あ、ぁの……甘い…もの、でも…」
床に足が張り付いてしまったように動かないエリルシアに焦れたのか、ラフィラスの方から近付いてきて顔を覗き込んでくる。
美青年のドアップ……眼福だが心臓に悪いと、そっと目線を泳がせれば、そのまま視界が揺らいだ。
「!」
「甘いものが食べたかったの?
厨房に頼みに来る程だったなんて……ごめんね、気付かなくて…。
直ぐに用意して貰えるよう頼んでおくね」
満面の笑顔でラフィラスがエリルシアを姫抱きに抱え上げる。
エリルシアは…と言うと、恥ずかしいのか真っ赤になりながら、必死に解放されようと抵抗しているが、それさえも愛おしいといわんばかりに、ラフィラスはエリルシアの頬に口付けた。
見せつけられる彼等は急なラフィラスの登場に驚きはしたものの、この邸では日常茶飯事の事である。
そんな主人達を微笑ましく眺めているが、エリルシアの方は抗う事に必死で、そんな視線に気付いていない。もし気付いて居たら、恥ずかしさで一杯になっていた事だろう。
結局体格差もあって逃れる事は叶わず、そのままイチャラブ状態でお持ち帰りされてしまうのを、料理人達はただただ見送る。
「あ、甘い…」
「甘いなぁ…でもいつもの事だよな」
「本日も平穏だな」
「うんうん、そうだな」
チョコレートなどなくても良かった、そんな一日……。




