雨宿りの恋情
はじめまして。よろしくお願いいたします。
醜いからとスラムに捨てられたアーネストが公爵家で働くことになったのは、辻馬車に轢かれそうになっていた子どもを庇って怪我を負った際、孤児院に慰問に行く途中だった公爵家の娘であるシンシアが通りかかって助けてくれたおかげだ。
シンシアは変わっていてアーネストを拾った翌日に熱を出し寝込んだかと思うと、治るなり自分は悪役令嬢に転生したが、あなたを手先にして男爵令嬢を襲わせるために拾ったのではないと泣きながら抱きついてきた。
しかも公爵家の一人娘だというのに自分は将来、家を追い出されるから平民の生活能力が必要なのだと言って下男として働くことになったアーネストの後を嬉しそうについて回るようになったものだから、アーネストは胸の奥底をかき回されるような気がして落ち着かなかった。
その十年後にシンシアは王子の婚約者に選ばれ、王子と学園に通うことになり、やっとアーネストは平穏な気持ちを取り戻すことが出来るはずだったが、彼女が毎日悲壮な顔つきで学園に通うようになったため、アーネストの胸は一向に落ち着かなかった。
ある雨の日。王子が公爵家の茶会を無断欠席した。アーネストはシンシアが庭のガセボで一人、雨宿りをしているのを見かけ、傘を届けに行った。
「好きな人はいる?」
「醜い上にスラム育ちの俺を好いてくれる女はいません」
「私、あなたが好きよ」
「誂うのは止めて下さい」
「子どもを命がけで助けたアーネストの勇気と優しさに一目惚れしたの。だけど、もう誰かのために命は賭けないでね。愛してる。最後に言えて良かった」
瞳を潤ませ微笑む姿にアーネストの胸は甘く高鳴ったが、世界で一番美しく優しいシンシアには一番身分が高い王子こそが相応しいと思い込んでいたため、彼女の言った最後という言葉の意味に、彼女が学園の卒業式で断罪され、そのまま毒杯を飲まされ命を落とすまで愚かにも気づけなかった。
王子と男爵令嬢の結婚式当日。アーネストは彼らがシンシアを陥れた証拠を手に結婚式を襲撃した。アーネストは逮捕されたが、シンシアの死を不審に思っていた貴族達や他国の国賓が正当な裁判を望んだ為、彼らの卑劣な罪状は白日の下に晒され、王子達は絞首刑となった。
「命を賭けないでねってお願いしたのに」
「賭けますよ。だってずっと愛していましたから。俺も一目惚れだったんです」
復讐を果たしたアーネストは毒を飲み、天国でシンシアを抱きしめ、愛し合う二人は永遠に結ばれた。
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