プロローグ:終焉、そして始まり
魔王城——
その玉座の間には、二つの影が対峙していた。
一つは、金色の髪をなびかせる美しき少女。世界を救う使命を背負い、幾多の苦難を乗り越えてきた歴代最強の勇者——セリシア・ヴァン・アーデルハイト。
そしてもう一つは、深紅の瞳と漆黒の髪を持つ、荘厳な気配を纏う存在。かつて世界を恐怖で包んだ闇の頂点、魔王・ルシア=クロウであった。
「ぐっ……さすがは歴代最強の勇者……。この我をここまで追い詰めるとは……」
ルシアの膝が折れ、血が地に滴る。
「魔王……これで、貴女も終わりよっ!」
セリシアが剣を構え、最後の一撃を放たんとした、その時だった。
「——ふっ」
魔王が不敵に笑い、掌を掲げた。
その瞬間、空間がうねり、巨大な魔法陣が床を這った。
「ぐっ、こ、これは……!? 魔法陣……?」
「セリちゃん!!」
「セリシアぁっ!」
「セリシアさん!!」
その場に駆け込んできたのは、共に旅した仲間たち。
弓使いリア・フローリス、騎士団長グレイ・ヴァルフォード、聖職者シェリア・エルネスらが叫び声と共に駆け寄る。
しかし——
「また、会おう……勇者」
そう言い残すと、魔法陣が光を放ち、勇者と魔王の姿は一瞬にしてかき消えた。
ただ、虚ろな静寂だけが、その場に取り残された——