スェ( •̀ᴗ•́ ) ̖́-
とあるBARの角っこ。
「俺の頼んだクレヨンが食えねぇってのか!?」
オシャンティーな空間に男の怒号が響いた。
「食えないね、あんたみたいな腐れチンポのクレヨンなんざ腹の足しにもなりゃしないよ!」
どうやら男はこの老婆に「あちらのお客様からです」をやろうとして失敗したようだ。
「あぁん!? 誰が腐れチンポだクソババア! 見てから言えや! この俺のトーキョービルみてーなチンポをよぉ!」
ベルトに手をかける男。酔うとこうなる男は少なくないのだ。
「黙んなさいな! あんたのそのチンポかどうかも疑わしいチンポもどきがトーキョー様の仲間入りなんかできるわけないんだよ!」
「なんだとオ。」
「なんじゃア。」
ついには掴み合いになり、マスターのデコピンによって店外に放り出される2人。
「ねぇマスター、あの人たちいつも喧嘩してるね」
カウンターで逆立ちで飲んでいた女が言った。
「ああ、パツキンのヘドロユンボ。ハゲ庭のハゲジジイさ」
「ふぅーん」
女は泣いた。
「ガラガラガラガラガラ」
いつも彼女は、
「ぺっ」
独りだからだ。
「なぁスリースリー、それやめてくれよ」
女の吐き出した酒にまみれたカウンターが言った。
「ねぇマスター、ここのカウンターはお客に文句言うのぉ? これってどぉなのぉ?」
「3+6=ガイアの夜明け」
「ふぅーん」
スリースリーは笑った。
「クチュクチュクチュクチュクチュ」
先週後輩にこちょこちょされたのを、
「ぺっ!」
思い出したからだ。
「なぁマスター、このモンダミン女に何か言ってやってくれよ」
カウンターが涙ながらに訴えた。
「エサを買うてこい。話はそれからじゃ。来週は日曜日じゃぞのう」
カウンターは店を出て、釣具屋へ向かった。
「立ち飲み屋の逆になっちゃったよぅ」
椅子だけあって机がない。スリースリーの言う通り立ち飲み屋の逆であり、とうもろこしのお父さんである。
「ねぇマスター。あたし、来月結婚するんだぁ」
「おめでとう」
そう言ってマスターがひまわりの種を差し出した。
「オイオイ、なんの冗談だ? こりゃあハム公の食いもんじゃなかったか?」
スリースリーはそう言ってひまわりの種を受け取り、魔法でエリンギに変えて齧った。
「この絹のような歯ざわり⋯⋯北海道産だね?」
「メイドインチャイナでございます」
「あちゃらさんのキノコは旨いんだねぇ」
スリースリーは嬉しそうな顔でそう言うと、逆立ちをやめて立ち上がった。
「おいしかったポヨ。またくるポヨ」
「あらとっしゃっしゃったぁーっ!」
マスターの元気のいい挨拶を背に外に出ると、男とババアが掴み合いの喧嘩をしていた。
「まだやってたのね」
スリースリーはそう言って煙を吐いた。
「口から煙なんか出して、煙突かい? あんたは」
「おいババー、いくらこの女がグミだからって、しょんばりポッポシュッポッぽ」
「気が合うねぇ」
「おうよヨヨ」
仲良く肩を組む2人。スリースリーは依然として煙を排出し続けている。
「分かった! あんた、トーマスだね?」
ババアが回答ボタンを押して答えると、スリースリーが口の中から銀ピカの物体を2つ吐き出した。
「焼き芋だ、食いな」
「俺、帰るわ」
「あばよ腐れチンポ」
ババアと男が手を振り合う。スリースリーはその隙に焼き芋を1つ、口の中に仕舞った。
「さ、食いな」
別れを済ませたババアに声をかけるスリースリー。
「寝転がって食ってもええかの?」
「いいよ」
「おおきに」
芋を片手に店先に寝転ぶババアと、それを見て微笑むスリースリー。これがこの街の華金である。