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子供同士親同士

作者: 小波


 久しぶりの同級生はそれぞれの子供の親になって幼稚園の保護者同士として再会した。


今は実家に住んでるの?

うん、離婚していさせてもらって‥


保護者会の帰りてくてくと雪を避けながら歩いて帰る私はファミリーカーだろう大きなステーションワゴンから声をかけてもらう。

歩き?乗ってく?

ありがとう。


母は認知症で兄は精神病なんだ。


たった5分ほどの帰り道でなぜこの土地で暮らして車を所有していないのか不思議がられると思い矢継ぎ早に説明していた。彼は両親は健在なのか聞いてくれたのだが頼りがほとんどない事を私は重くならない様にばっさばっさと説明した。


このことをもっと世間話にしてしまいたい私がいたのだろう。話の内容は以前の私から見たらセンシティブなもので緊張と解放を味わっていた。


認知症と精神病と幼児を抱えたシングルマザー‥ちょっと自分でも絶句である。

ただし、兄は病気と言えばそうだけど大変心が穏やかで人を許すことができる仙人の様なキャラでもある。



矢継ぎ早に説明した家族構成に現在からの私がこう言う。



だから子供の頃周りがとても幼く見え馬鹿馬鹿しく見え心を開けなかったのだろう、と。



私は失敗してこなかった。同級生たちの様に堂々と失敗して当たり前だと教師を睨み叱ってもらう、その様な経験を軽く馬鹿にしていたこともある気がする。



いじめだとかいきがるとか、部活や好きな科目に夢中になるとか、恋愛ごとや友人関係、全てにおいて交わらず関われず

ひとり温度の違う場所にいた。それをシングルマザーで割合その日暮らしに見える友達の母が冷めててかっこいーなどと言ってくれた。


小さく馬鹿にしながら透明な分厚い壁の距離を感じながら

なんとか中学卒業までは漕ぎ着けた幼い私。。


それを目の端に捉えていただろう同級生でいいおじさんになった彼。変な言葉を用いると彼は陽キャであり私は陰キャと不思議ちゃんを混ぜた感じだ。



地に足がつかない、つける場所もない私は現実に存在感が薄いことも含めて不思議ちゃんで概ね周りを納得させられる気がする。



彼は余り印象が変わらず今も役員なんかを引き受けて人を和ませたり笑わせたり出来るリーダータイプに見える。決して優等生ではなくサッカーが上手くて全体をまとめたり、引っ張っていく力があると感じる。金髪だったしやんちゃだった。それを私は外側からしか知らない。小中合わせたら何年か同じクラスだったのに殆ど話せなかった。あの世代に出てくる価値観で耳馴染みがある、住む世界が違う、ヒエラルキーで階級が離れている、なにかあれだ。誰が言ったか知らないが陽キャと喋ると緊張した。彼は平和な性格なのであの価値観はなんとなく知っていても興味なく屈託なく誰とでも話せそうだ。


こんな風に周りを観察する目だけは達者で人間関係を不得意とする私は若年寄りとも呼ばれた。



保護者会の帰り道の車の中の僅か5分。

そんな付き合いの同級生にここまで聞いてもらってしまうのだった。自分を開く。私は今から転ぶ。転ばない方法ばかり目ざとくて自分でできるからと人を避け優等生の鎧を着ていたぼろぼろの私。転んでないのに心が重体の私。



小さなきっかけから私が見える。

車持ってなくて良かった。

決して行き届いていないシングルマザーの暮らしは

私に周りと繋がる練習をさせている。

ありがとうございました。

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