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抗議とため息




悪いことは重なるとはよく言うけれど、控えめに言って最悪だった。



「はぁ……ジリアン」


「陛下……申し訳ございません……」



ばんっと、机に投げ出された新聞から視線を外して国王である父は頭を抱えた。



「あの聖女が厄介なことは分かっている。だから、コレが全て事実だとは思わないが、付け入る隙を見せたお前の落ち度だ。分かるな?」


「……はい」


コレ、と顎をしゃくって新聞を指す父に私は深く腰を下げた。


今朝方、ひとつの記事が出された。

絵写真には泣き崩れる聖女と傍らで支える勇者、それの前に仁王立ちし、冷たい表情で詰め寄っているように見える私……らしき人物が描かれていた。


タイトルは「王女ジリアン様、婚約者の真の恋人に嫉妬!!」。

根も葉もなさすぎて目玉が飛び出そうになったが、絵写真は上手いこと描かれている。



「王女ジリアン様は、平民出身の勇者様と聖女様に苦言を呈し、更には聖女様の持つ聖力や技量に疑念を抱かれたようだーーーー事実か?」


「いいえ、陛下。私はこの婚約をどう皆が納得のいく形で進めるかについてお話したかっただけです」


「聖女様によると、王女ジリアン様は王城から出たことがなく、国民生活に関しての知識が乏しいためか、勇者様の魔を鎮める旅やロエリーア神についても何か釈然としない思いを抱えておられるとのことーーーーそうなのか?」


「いいえ、いいえ、陛下! 断じて! 私は勇者様と聖女様が結ばれた場合の前例をお話しただけです」


「また、塞いだはずの大穴のあるドゥロティエの谷近くから再び魔障が発生していることが発見され、聖女様と教会によると、王族の信仰心の薄さが何らかの形で関与しているのではないか、と」


「まさか!! 私は12歳でロエリーア様の泉に髪を捧げ、毎朝教典を読み祈っています! そんな適当な!」


「ロエリーア教会はこの件について王家に正式に抗議をするとしている。ーーーー今朝、日が昇るより早く、ロエリーア教会大神官のエベックが抗議文を送ってきた。それによると、ロエリーア信仰、聖女、または国民の生活を深く知り理解するため、魔障を抑える巡礼の旅に出てほしい、と」


「はい!?」



何もかも信じられない。

まさか昨日の今日でこんな記事が出て、無いことに重ねて無いことが書かれ、果てに旅に出ろ?!

怒りと訳の分からなさでぷるぷる震える両手を握りしめる。


絵写真はどう見ても聖女様の同情を誘うように描かれているし、聖女様のコメントは暗に、私が民衆やロエリーア信仰を蔑ろにしているように書かれている。


通常ならば、こんな王家のゴシップめいた記事、新聞社が出せるはずがないが、今や聖女様は民衆に絶大な支持を受け、更にそのバックには勇者様もいる。

彼は伯爵位を賜り、彼の強さは国随一。その勇者様と民衆のほとんどがロエリーア教の我が国で聖女様の所属する教会が手を組めば、民衆を扇動するのは容易いだろう。



「してやられたな。ジリアン。私とて今は教会や聖女、勇者を無下にできない。民意が傾きすぎている」


「そんな、……陛下、でも私は」


「お前に非が無いのだろうということも理解しているが、ここでお前が巡礼に出なければ民衆の暴動騒ぎにまで発展しかねない。それほどまでに今や勇者と聖女は支持を得ている」


聖女様、まさかこのために毎日飽きもせず色々な場所でしくしくと泣き、悲劇を演出していたの?

そしてティリアの茶会さえも、わざと参加して私が話し合いをするように仕向けた?

……いえ、そんなまさか、考えすぎね。

だいたい一体なんの目的があって……。


「まあ、とにかく。魔障の大穴は既に塞いであるのだ。ドゥロティエの谷がうんぬんもそう大したことではなかろう。民衆と教会の為に行ってくれるな」


「もちろんです」


「アレックスや、他の騎士も必要ならば連れて行くがいい」


「陛下、ありがとうございます」



私が再び腰を折ると、陛下は厳しい顔を引っ込めて、一瞬隙のある父親の顔で眉を下げた。










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