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「勇者様、聖女様、この度は魔障からこの国をお救いいただきありがとうございます」


「……何か用なのか」



いつものように、勇者は自分の背に聖女を隠し聖女はその後ろで酷く怯えたように震えていた。

私は魔物か何かなのか、と聞かなかったことを褒めて欲しい。

ただでさえ、近づく度に酷くなる周囲の囁き声に胃が痛くなりそうな思いだったのに、明日からの私を見る目がどうなるか簡単に想像がつく。


「そんなに構えないでください。危害を加えるつもりも問い詰めるつもりも毛頭ございません。ただ話がしたいだけです。お2人も私たちには会話が必要だと分かっておられますよね」


私はつとめて優しくできうるかぎり友好的に微笑んで話したつもりだった。

なのに彼らの表情はみるみる引き攣り、これは誰がどう見ても私が笑いながら何か嫌がらせか嫌味を言っていると思うに違いない。

いったいなぜなの……。もうこれ以上どうしたらいいの……。

もう本当にお手上げだ。勇者の後ろで聖女は真っ青な顔をしている。

私が一体何をしたというの。なにか嫌なことを言った?言ったなら教えてくれないかしら、治すよう努めるから。


途方にくれてティリアを見ると彼女の微笑みながらイラついているし、アレックスに至っては眼光が鋭すぎて直視出来なかった。

これってもしかして、私のせいじゃなくてアレックスのせいなのでは無いかしら?



「ここでは人目もありますし、どこか場所を変えて。いかがです?」


「ジル様、ぜひゲストルームをお使いください。オベリアから取り寄せた花茶がありますの!」


「まあ、素敵ね。ぜひお願いするわ。ね、勇者様、聖女様、よろしいかしら?」



さすがは貴族。先程とは打って変わって瞳をキラキラさせたティリアに同意して先を促すと、勇者は意を決したようにようやく頷いた。

何をそんなに決心する必要があるのか全く疑問だ。


とにもかくにも、ひとまず前進である。

いい加減このモヤモヤする関係をどうにかしたいところだ。










「………で、話っていうのは?」



そう遠くないゲストルームにつき、席に座ると勇者は厳しい顔でそう言った。

話すことなんて1つしかないのに、と顔を見合わせる私とティリアはまだいい、もっと悪いことにアレックスはついにため息をついた。


「私と勇者様の婚約についてですが」


「……ああ」


サラリと言った私に、なぜだか聖女は泣きそうな顔をし、勇者は宥めるように優しく微笑んだ。

だからいったい私が何をしたと??



「突然のこと過ぎて私達はいまいち状況をうまく飲み込めていないのです。代々魔障から国を守る旅に出た勇者様と聖女様はご結婚されるか、良き友として素晴らしい関係を築いてこられました。特に勇者様と聖女様がご結婚された時世は魔障の出現が極めて少なく、天災や魔物の被害も減少し更に農作物は良く実ります。それにお2人は愛し合っておられますのに、例え神託だからといってその利を捨ててまで私と勇者様が一緒になるべきでしょうか?」



私は穏やかに優しく微笑みながらそう言ったつもりだった。


まあ、私の薄水色の瞳は冷淡だと言われることがあるし、眩いばかりの金髪は威圧的だと言われることもある。顔は確かに守りたくなるような愛らしさはなく、気が強そうな印象が強いかもしれない。



「うわぁぁぁあん、ディート〜!!」



だからといって、もう成人した女性が人前でこんなに声を上げて泣くことある??










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