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お喋りオークの聖剣探索  作者: 彌七猫
第一章 オークのオルクス
26/37

26/VS ワイバーン2

 なんてことだ。

 ヘルシングは声にならない言葉を心中で呟いた。

 それは時間にして僅か数分の出来事。

 実力を持った頼もしい冒険者と思っていた人物がモンスター、しかもオークだった。理路整然と人のように喋っていた彼が、オークだった。

 そしてそのオークが、空を飛翔するワイバーンを、ただの殴打(、、、、、)で地に落した。


「これは現実なのか?」


 もはや何から驚けばいいのかわからない。

 城壁の上の兵士など、驚愕の余り顎が外れている者もいた。


「あっ!」


 誰かが叫んだ。

 それと同時、地面に沈んだワイバーンが眼光鋭く落ちてくるオークを睨んだ。

 マズいッ、とヘルシングは咄嗟に次の展開を察する。歴戦の騎士であるヘルシングだからこそ、誰も目で追えないワイバーンの動きを捉えていた。

 ワイバーンは自らの尻尾を鞭のようにしならせて、まだ空中にいた無防備なオルクスを叩き落とした。

 隕石でも落下したかのような衝撃音が響き渡る。

 城壁の方で悲鳴が上がる。まるで自分が攻撃を受けたかのように、いずれ我が身に降りかかる力の一端を受けて、皆の心に生まれた恐怖心が吹き上がってしまった。


「し、死んだのか。死んでしまったのか!」


 まるで虫を叩き潰すように。そんなに簡単に死んでしまったのか。あのワイバーンを棍棒で地上へ墜とすような存在が、そんな簡単に死んでしまったのか。

 ワイバーンはオークを叩き付けた場所へ歩み寄っていく。きっとその中では悍ましい状態の死体が転がっている。いや、あんな攻撃を食らって姿形を保てる筈がない。

 なんて理不尽だろう。

 いや違う、この一瞬が異常だったのだ。

 だって当たり前の事だ。

 王都の城壁よりも高く、人が五十人いても囲えないほどの巨体。それをちょっと人より大きいだけ、少し力が強いだけのモンスターが打倒できるわけがない。ましてや、さらに小さな人間が……。


「いや、違う」


 そうだ。違うはずだ。

 彼はヘルシングに約束した。ワイバーンを必ず地上へ墜とす、と。

 そして見事にそれをやり遂げた。

 人の天敵であるモンスターが、人間との約束を守ったのだ。拘束力など何もないただの口約束で、およそ人間には達成できない成果を叩きだした。

 見ろ、不可能と思っていたことがすでにふたつも起こっている。


「これは奇跡だ。一人の男が起こした奇跡。この機を」


 ヘルシングは高らかに剣を掲げる。その切っ先にはこの王都を襲う災害、竜種。その打倒を胸に、彼は災厄の戦場に立つ。


「逃してなるものか!」


 その高らかな宣言と同時、彼の傍らに二人の少女が現れる。

 一人は確信を胸に。

 自分の直感に間違いがなく、あの男こそ他ならぬ、自分が一番倒したい相手であった。

 ならば殺させてはならない。まだ生死を判ぜぬなら、ここで剣を振るう意味がある。

 奴が倒せなかった敵を倒し、己が力を証明するためにも。

 一人は使命を胸に。

 手にはその者の在り方を表れる。少女はこの街で、自らの審美眼を満足させる手に出会った。

 ならば殺させてはならない。その人生、その人格、あの手を守るためなら命を賭ける意味がある。

 人に言わせれば馬鹿げた使命でも、それが少女の生きる理由なのだから。


「Aランク冒険者、イーディス・デュパン。伝承に名を連ねる者よ、その素っ首を貰い受けに来た!」

「同じくAランク、コリー・ペイシェンス。右に同じ」

「き、君たち」

「私たちだけではありません」


 突如湧き立つ声に振り返る。するといつの間にか開門していた王都の門から、大量の騎士、そして兵士たちが飛び出してきていた。

 誰も彼も、その顔に僅かながら恐怖を滲ませているが、それを押し退けて勇気を奮い立たせているのがわかる。

 その姿を見て、ヘルシングは覚悟を決めた。

 騎士団長の彼には多くの部下がいる。守るために戦うという以上、常に死と隣り合わせだ。当然、彼らの命を背負わなければならない。

 一人も死なせてはならない。その覚悟を常に持っていた。

 だがいま決めた覚悟は、まったく違う。

 彼らの命を、そして自らの命さえも、使い捨てる覚悟だった。


「次鋒、頂戴します!」

「ちょっと、だから生き急ぎすぎだってぇ」


 先に駆け出していく少女たち。

 出遅れたが、ヘルシングは再び剣を掲げる。

 どんな犠牲を払っても、必ず打ち倒す。その信念を胸に。


「止まるな兵共! 敵は神話に名を刻む竜種が一体、相手にとって不足無し! 皆、全速で接敵せよ! 必ず倒せ!!!!」


 ――オオオオオオオオオオオオオォ!!!!


 雄叫びは高らかに。もはや隊列や戦術などはない。そもそもワイバーンにそんなものは通用しない。

 ただまっすぐに走り、到達し、剣を突き立てるだけ。


「桃人一刀流」

「触心――。骨格診断。

 うへぇ、骨ふっと、浸透率ひっく」


 イーディスとコリーはそれぞれワイバーンの足下に辿り着くと、それぞれ必殺の構えへと入る。


人型・鬼首狩人ひとのかた・おにこうべ!」

拳闘術式・γオペレーションアーツ・ガンマ


 二人に続いて、ヘルシングは横合いからワイバーンを狙う。スキルで上空へ飛び上がり、ワイバーンの目線と同じ高さまで昇った。


「我が奥義をくらえ!

 ユニークスキル、白銀剣士(しろがねのけんし)

 魔断の白銀(シルバーズ・レイ)!!!!」


 魔に属するモンスターに対して絶大の威力を発揮するスキル、ヘルシングが持つ魔性特攻。魔物の頂点に君臨する竜種になら、必ず届く。

 いや、届かせてみせる。

 その一心で剣を振る。

 この場でもっとも力を持った人間たちが、三者三様に攻撃を仕掛けた――。


次回『VSワイバーン3』

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