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お喋りオークの聖剣探索  作者: 彌七猫
第一章 オークのオルクス
23/37

23/騎士団長ヘルシング

 地竜ってアレだ、なんか思ったよりも恐竜っぽい感じ。

 てかまんま恐竜だ。ワイバーンよりもさらに図体が小さくて、小回りが利くらしい。騎士団が打ち漏らした地竜を仕留めたが、鱗の硬さはワイバーンとさして変わらない。すばしっこさを考えると、これはこれで討伐するのに苦労しそうだ。


 さっきの兵士が言っていたとおり、鎧やら盾やらを装備した連中がその地竜と戦っている。

 兵士よりもさらに練度が高く、また一人ずつの実力も高いようだ。ほとんどは一人につき一体ずつ地竜を相手していて、ほぼ全員が優勢の状態だ。


「けどいかんせん数が多いな」

「街の入り口から、まだ入ってきているみたいです」


 アーミィベアと戦った時を思い出して、少しうんざりする。


「こりゃ俺らが入ったところで根本的な解決にはならないぞ」

「さらに前へ行ってみますか?」


 イーディスの提案に乗り、俺たちは近づいてくる地竜だけを相手しながら、前方の戦線へ移動する。


「騎士団長ってのがいるはずだ。とりあえずそいつに会おう」

「ここまで混戦になっていると、よほど目立っていないと見つかりませんよ。特徴とか聞いてませんか?」

「それ聞く前にお前が飛び出したんだよ」

「なんと」


 戦線の中心あたりまで来ると、さすがに敵の層が厚くなってきた。イーディスならともかく、俺の図体ではもう通り抜けられそうにない。

 くそ、せめて団長とやらには合流したい。この人数がそいつの統率の下に動いているのなら、こっちが変に動いて被害が大きくなったら最悪だ。

 何か動くにしても連携が取りたい。


「イーディス、探せ! 団長っぽい奴!」

「えっと、そういう人って本陣でふんぞり返っているものでは?」

「お前の国と俺の国ではそうかもな! でもここの団長様はいの一番に突っ込んでるらしいから、後ろじゃなくて前だ! 前――」


 突如、ごうっ、っという音とともに、凄まじい突風が前方から吹き付ける。地竜や鎧の騎士たちは体勢を崩し、俺の巨体も軽く呷られるレベルだ。

 当然イーディスは紙切れみたいに吹っ飛んでしまい、咄嗟に俺の頭部分の鎧を掴んでいた。


「おい、放せ! 頭はやめろ!」

「なら飛ばされそうなのをぼーっと見てないで、手を伸ばすとかしてくださいよ!」


 風は竜巻となり、渦を巻いて空へと伸びていた。

 前方で起こったその災害に巻き込まれた地竜たちが、上空から次々に地面へと叩き付けられていく。

 その竜巻の頂上に、一人の人間がいる。

 騎士の風体をしているその男は、落ちていく地竜たちとは違い傷ひとつ追った様子がない。


「シリウスステラ、ストライク・ストーム」


 おそらく奴が何らかのスキルを使ったのだろう。シリウスはたしか剣技系のスキルだった気がする。

 イーディスは俺の背後に回って風を避けながら言った。


「あの方ですね」

「あいつだな」


 突風で動きが止まった地竜たちの間を抜けて、俺たちはあの騎士の下まで向かう。

 近づいていくとわかる。兵士や騎士たちからは感じなかったプレッシャー。剣気とでも呼ぶのだろうか、離れていても感じ取れる覇気の凄まじさ。

 イーディスも感じているのか、コクリと喉元が動いていた。


「うお、この辺は地竜の死体がすごいな」


 面白いくらい転がっている地竜を跨ぎながら進んでいくと、さっき竜巻を起こしていた騎士が、他の騎士たちに指示を出しているのが見えた。


「門を塞ぐため、これより私は前にでる。全員ここを死守せよ、地竜を一匹たりとも民の下へ行かせるな!」


 雄叫びを上げる騎士たちを背に、その騎士は盾を前に構えてまっすぐ門へと駆け出した。


「シリウスステラ、ソニック・チャージ」


 それは風を起こしているのではなく、おそらく周囲の空気を操作しているのだろう。足の回転を速め、空気抵抗を減らしながら加速を続けていく。そして向かってくる地竜を吹き飛ばして進む、まさに破壊的なチャージ。俺の力任せな突進とは違い、スキルを上手く駆使した攻撃だ。


「イーディス、ここ頼めるか? 俺はあっち手伝ってくるから」

「わかりました。お気を付けて」

「そっちもな」


 道は今のチャージで大穴あけてくれたおかげで、すっかり通りやすくなっている。たまに襲ってくる奴を適当にあしらいながら、門の前で地竜に集られている騎士の下へ向かった。


「手伝おうか?」


 俺は雷鎚豚頭で騎士を襲っていた三体を叩く。包囲網が緩んだところで、騎士が大剣を振って残りを斬り捨てた。


「すまん、恩に着る!」

「門を閉めるんだろ、方法を教えてくれ!」

「楔を外せば門が降りてくる。私が地竜たちを止めている隙に楔を――」

「いやそれなら俺が止めとく! 楔とか正直ピンとこないからな、任せたぜ!」

「お、おい!」


 俺は門の正面に立ち、続々と入ってくる地竜を棍棒で叩きのめす。イーディスに付いてきてもらえばよかったか、とか思ったが、後の祭りだ。

 せめて鎧が外せればもっと動けるのに。


「よし、これで大丈夫だ! 下ろすぞ!」


 騎士の声が聞こえた直後、上に固定されていた門が降りはじめた。

 地竜は構わず入ってこようとしている。門と地面との間が残り僅かになっても滑り込もうとして、間に合わない数匹がぺしゃんこに潰れた。

 駆け込みで入ってきた数匹を仕留め、ひとまず門の周りは静かになる。打ち漏らした何匹かは後ろに行ってしまったが、たぶん他の騎士やイーディスが対処するだろう。


「尽力感謝する。貴殿は冒険者なのか?」

「一応、Aランクの冒険者やってる。オルクスだ」

「私は王家騎士団団長のヘルシングだ。クリスティ殿の下でAランクなら信用に足る。重ね重ね感謝する」


 イングレントとも知り合いらしいな。王家の関係者に顔が利く人間も珍しいようだが、あいつは能力の高さでも認められているらしい。


「門の外にもまだ結構残ってたな」

「ああ、だがまずは中に残っているものを対処しよう。王や王城に逃がした民たちに危険が及んでしまう」

「守る者が多いな」

「当然だ。そのための騎士だからな」


 そう言ってヘルシングは来た道を戻っていく。

 俺はギシギシと音を立て続けている門に後ろ髪を引かれながら、ヘルシングの後を追った。

 

 

 

 

次回『正体見たり』

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