美術って何さ
「美術って何さ?」
「そういう哲学的な事はわからないなぁ」
提出する画用紙に、絵の具で色を塗りながら、隣のたわけの言葉を聞き流す。
「哲学的な事ではなく、人生において、必要かな?」
「補習終わらせないといけないという点では必要だな」
「そういう事でもなく、学校の授業で必要かな?」
「必須科目には、入ってないという点では不要かもな」
「そもそもあやふやなものを習った所で、写真でいいじゃん、スマホはもう普及している時代に、美術とか必要かな?」
「知的な女がタイプなら必要なんじゃない?美術鑑賞とか西洋かぶれの趣味とかさ」
「日本の画家すら、知らないわからない、なんだったら歴史の偉人ぐらいしか出してこねぇような日本人に、そんな女性はごく一部だろ」
そこは日本の教育の敗北だろうけど、そこまで怒れるエネルギーは、中々のものだとおもう。
「漫画家だって美術家の一種だろ」
「漫画家と美術家を一緒にするな!」
「うわっめんどくせー」
そこで、線引きするのめんどくさいなぁ。
「美術鑑賞デートしようぜって誘って、アニメの原画店に知的な女性の心が掴めるわけないだろ」
「理解ある彼女なら、ワンチャン行けるはずだって」
「ごく一部の女性のワンチャンスって宝くじばりの確率だろ、そんなのノーチャンスだろうが」
知的な女性諦めろよ。
美術否定しているんだから。
「こうさぁ美術をやる意義ってのが、いまいちわからないとやる気もでないし」
「美術はほらあれだ、体力、知力の他に感受性ってやつを育てるみたいな、いわば多様性だよ」
「すごくやる気でないし、プレゼン下手か」
「ざっくりいうと人気者になりたい奴なんかがとる手段だよ、音楽やってりゃモテる、スポーツできりゃあモテる、勉強できれば、モテる、絵が上手ければモテる、モテる要素増やせるじゃん、やったねぐらいに思っておけよ、もうめんどくせーな」
学校の授業でやる意味なんて、美術の時間に求めるなよ。
そもそもこっちだって、美術の時間にサボっていたから課題提出を、放課後居残ってやったいるんだから。
美術なんて将来金持ちになって壺とか絵とか買うか、美女に喫茶店でお薦めされるぐらいじゃないと縁ないわ。
「何お前モテるために学校来ているの?」
「お前に話を分かりやすくするためだ馬鹿」
描き終わったし、乾かせば終わりだ。
「うわっ下手か」
「描いていないお前が言うな、提出期限過ぎるぞ」
「筆が乗らなかったとかダメかな?」
「何でそこだけ芸術家気取りなんだよ」