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第2話

それから途中まで一緒に帰ってきた俺たちだが、軽がコンビニで買うものがあると言ったので、そのままそこで別れてしまった。

俺の家から学校まではそれなら遠く、電車やバスを使っても1時間以上かかってしまう。

別に普通の人達ならそれぐらい普通に登校するだろうが、さっさと家に帰ってアニメを見たい俺は特待生を取ったという事実を使い両親に対して一人暮らしをしたい、と交渉した。

最初こそそんなのはダメの一点張りだったが、約1週間がたった頃に急に態度が急変。

なんと一人暮らしを認めてくれたのだ。

最初こそ怪しいと思ってもいたが、せっかく一人暮らしができるならそれに越したことはないと思い、俺も素直にそれを受けることにした。

そして今日が俺にとって初めて新居を見る日となるため、どんな家なのかと俺の心をワクワクさせた。

まぁどうせ安いボロアパートでも見つかったから一人暮らしを認めてくれたのだろう。

しかしそんな予想は完全に裏切られた。

それもいい意味でだ。


両親から送られてきた地図の指示に従ってやってきた場所を見て俺は唖然としていた。

俺の目の前には、周りから完全に浮き出ているようにそびえ立つ高層マンションが俺のこと見下ろしていた。

いやいやまてまて、これはおかしい。

いやだってあの二人、途中まで俺が一人暮らしするってことに対して渋っていたぐらいなんだぞ?

それがいきなりこんな高層マンションに住んでどうぞって信じる方が難しいっての。

そうだ!こういう時アニメとかだと、実は隣のボロアパートでした。

っていうオチがつきものだ。

なんだそれなら安心だ。

とりあえずそれがどこにあるか探すため、マンションの周りをぐるっと一周してみることにした――



「……ど、どこにも無い」


そうマンションの周りには

周りにあったのは公園だったりスーパーだったり駅だったりと、この土地の価値を上げるようなものばかりだった。

さらにこのマンションと送られてきた名前を見比べたところ、なんと一致してしまったのだ。


「ま、マジでこんなところに住んでいいのか?」


本当に信じられなかったが、場所に加え建物の名前まで一致してしまえばもう否定する材料は持ち合わせてなどいない。

これは両親の優しさと受け取って、素直に受け入れよう。

そうしてここに来て30分完全に貧乏人ムーブをかました俺はやっとの思いで建物の中に入る。

中に入るとまず最初に見えたのはガラスのロックドア。

そこは既に両親から貰っている鍵でどうにかする。

というか、よく見たらこの鍵に705という文字が見える。

ということでエレベーターで7階まで上がり、705号室の前に立つ。

大きな深呼吸し、心の準備を整えると鍵を使って中に入る。

中に入ると最初に通路が見えており、左に空き部屋が2つ、右にはトイレとお風呂があり、それぞれは別々になっていた。

通路の奥に進むと大きなリビングルームにキッチン。

そしてさらに和室まであった。

そしてそこには大量のダンボールの山があった。

その量は、積んだら身長180cmぐらいある翔をはるかに超える量で、つまり言うと多かった。


「めっちゃ広っ!それにこのダンボールの量……もしかして家具とか食料を買ってくれたのか?だとしたら後で電話でお礼言っとくか。それはさておき……一人暮らしだ!」


そうして俺の一人暮らしは始まった――わけではなかった。


ガチャ、


喜びに浸っている翔の元に、玄関から音がする。

そして


「え?なんで鍵空いてるの?後で文句言っとこ。」


という声とトントントンという足音が聞こえてきた。

この声を翔は小さい頃から知っていた。

この声は


「軽!?」


「翔!?なんでここに!?」


そこにはさっきまで俺と一緒に帰っていた軽が何故か汗だくで立っていた。


「なんでってそれはこっちのセリフだ!今日から俺はここで一人暮らしをするんだよ!」


「え?それはこっちのセリフなんだけど……。」


「え?」


「え?」


2人は固まった。

どうやら軽の言っていることは本当らしい。

それは長年の付き合いだからこそわかるのだ。

となると、と思いすぐさまスマホを取り出す。

当然親に事情を聞くためだ。

それは軽も同じ考えのようで、同じタイミングでスマホを取り出していた。

そうして電話をかけた後わずか数コールで電話に出た。


『もしもし翔。そろそろ電話がかかってくる頃だと思ったてたよ。ちょうど横にいる隼人――軽ちゃんのお父さんの方も電話がなったから、恐らく家で軽ちゃんと合流したんだろう?』


今一瞬言った名前は軽のお父さんだ。

俺の父さんと軽のお父さんは幼なじみで、小さい頃からの腐れ縁らしい。

今まで小、中、高そして大学に会社、更には家が偶然隣同士、というほどに。

いっそ仕込んでるんじゃと思いたくなるが、父さん達曰くまったくの偶然らしい。


「あぁもう分かってるなら本題から言う。どうして俺と軽が一緒に暮らすことになってんの?」


『それは軽ちゃんも一人暮らししたがってたし、どうせなら2人を一緒の部屋に住ませちゃえば?という話になってね。そうすれば家賃も少なく住んで楽だし。それにお前家事とかちゃんとできるのか?』


「うっ、」


『まぁ、そういうことだから。嫌なら帰ってきてもいいよ。』


「絶対に帰らねぇ。」


『はいはい、わかってたよ。それと、もちろんわかっていると思うけど1回でも学年1位を取れなかったら今までどうりお前の趣味は取り上げ、その上でこっちの家に戻ってきてもらうかならね。何気にそこの家高いし。』


「だったらなんで選んだんだ?こんな高そうなマンション。」


『いやその周りってアパートとか少ないし、それに2人で住むってことで最終的にそのマンションしかないってことになったんだ。』


確かにこの周辺を見て回った時そういう建物は全然なかった。

それなら納得だ。

……って


「なんで俺と軽が同居前提なんだよ!」


『いや、だから家賃とかの問題で……』


「だったら安いアパート2つの方が絶対に安いだろ!ここめっちゃ高そうだし。」


『……じゃあ、2人の生活楽しんで。』


そう言って追求をすると言い訳できなくなったのか、そのまま電話を切って逃げてしまった。

……怪しい。

なにか裏があるに決まっている。

とは言ってもその事がわからずにうーん、と悩んでいると


「電話終わった?」


と既に電話を終えている軽が声をかけてきた。


「あぁ、一様な。お前はこの生活についてどう思ってる?」


「え?普通に翔と一緒に住めて超嬉しいけど……いやっ違うの!やっぱ何でもないっ!」


その後、「うぅ……」と言って顔を紅くしてうずくまってしまう。

軽はこの同居については本当にただの家賃節約程度に考えているようだ。

正直な俺の感想は、何を考えているのか分からない父さんの手の上で踊らされるようなことはしたく無いため、それだったら長い時間かけて登校するのもやむ得ないと考えているが……。


「軽はどうして一人暮らししたいと思ったんだ?」


ひとまず、俺だけの考えだけで決める訳にはいかない。

俺が嫌と言ってこの生活を拒否れば軽も一緒に元の家に戻ってしまうからだ。

そのためまずは軽の一人暮らしをしたい理由を聞きたかった。



「え?私?私は部活を高校でも続けるつもりなんだど、この学校結構遅くまで部活時間あるんだけど、遅すぎるとお父さんたちに心配かけちゃうし、だったら一人暮らししよっかなって。それがどうしたの?」


……めっちゃちゃまともな理由。

まじかよ軽も軽なりにしっかりと考えているのか。

アニメ見たいがために帰宅時間を減らしたいって思ってた俺がバカみたいじゃねぇか。

これは俺の都合で「嫌だから元に家戻れ」なんて口が裂けても言えない。

くそっ、絶対このことわかってただろあの親父。


「……分かった。ここで暮らすことにしよう。」


「え!いいの!じゃあお父さんたちに言っとく。」


そう言って再び電話をするためにスマホを取り出した軽は俺らが同居するということについて話し、電話を切った。


「じゃあ翔、これからもよろしくね!」


「あぁ。こっちこそな」


そんなこんなで俺と軽の同居生活が始まった。


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