1.OOO 04
「いや、確かに暗い夜は好きだし、この街の連中は嫌いにはなれないけど」
本質的には人は一人では生きられない。赫利うつしがどれだけ不気味であり犯罪者であろうと、俺が彼女を拒否しきれないのはそういう面もある。この街の不気味な点を受け入れきる事ができなかった頃、彼女と知り合いそのままの関係が続いていた。
今はこの街の不気味さにも慣れつつあるが、彼女との関係は俺の好感度をマイナスに振り切りながら続いている。何せ不法侵入者でストーカー。警察に相談もしたが被害は出ていないので様子見。俺の精神面から見ても強くは言えない。最初の頃は頼りになるお姉さんだった気がするんだがなぁ。
「それはそれとして夜に出歩くのはやめるようにしてるぞ、俺は。凪原の二の舞になりたくないし、そいつらの中に病葉感染者だっているだろ」
「まあいるだろうけど、彼等は健全だよ。そう簡単に発症なんかしないって」
健全な面々なら先ず夜中に集まったりしない、とは言わない。毎日を充実させるものは真っ当に健全なものだけではない。どんな危険な場所で、遊戯であろうと、その魅力に取りつかれたアウトローたちにとっては真剣に取り組むべきもの。勝つために自らの身体と精神を健全に保つ必要があるならそうするし、作戦を建てる必要があるならばそうするのだ。無論のこと、危険すぎないものに限る。人死にや怪我といったものとは無縁の世界である方がいい。
周りからどう見えていようと彼らにとっては健全な遊戯。夜の遊戯場はそういうものなのだろう。祭りでもあるまいに、大勢集まる場所を想像すると少しだけおかしくなる。その端っこに自らが居ても不自然でない場所は嫌いにはなりきれない。
「んー、倉光さんと練間君もいるんだけどなぁ。友人でしょ?」
「友人じゃねぇんだが……アイツら何やってんの?」
素っ頓狂な声が出た。アレは別に友人という訳ではないが、共通の経験を経てはいる。
共通の経験を経たからと言って友人になる訳ではない。そもそも倉光さんは年齢が違う。あの人二十四歳だぞ。にやにやした笑顔と無精ひげの顔が思い出される。
「優勝賞金がねぇ、百万とか出るらしいから」
「……は、賞金? しかも百って……どっから出んの、そんなに」
そりゃ出るだろうな倉光さん。あの人年中金欠だし。大人げなく勝ちに行ってんだろうな……。
「さぁ? 参加者から徴税してるんじゃない?」
「しかもそれじゃ毎日優勝者出ることになるんじゃないか」
「あ、決勝戦は二週間後だよ。月曜日から土曜日までやって、一人ずつ決勝戦に選出していくの。で、日曜日に決勝戦。普段は六人なんだけど、今年の夏は規模を拡大したって」
「何時からやってんだ、そんなの……」
規模を拡大する程度には人気の競技ということだ。それはまあ、多分喜ばしい話なのだろう。誰にとってか、は語るまでも無い。……ああ、そういえば今の時期って暇を持て余した学生は多そうだな。
そして様々な活動も終わるところは終わるはず。熱と力を持て余した学生たちが行く先としては丁度いいという訳だ。副賞として賞金まで出るなら言うことなし。……移気な事だ。いや、それが悪いとは思わないけど。
「去年からやってるみたいだよ。時邦が来たのって冬だったし、知らないかもね」
「おう、そりゃ知らねぇ」
調べる気も無かったし。
とりあえず近づない方針でいいだろう。カレーを食べ終わり、食器を流し台へと持っていく。
洗っておくね。彼女がそう言ってくれるので、とりあえず言葉に甘えることにする。半端な時間に目覚めた自分はこれから眠ることもできそうにないので、適当に勉強でもしていようと部屋に戻ることにした。
「あ、本番予選は来週からだからねー」
「だから――」
行くわけねェだろ。そう答えて二階に上がる。さて、勉強でもするか。
俺が二階に上がっていくのをニコニコ笑って見ている赫利うつしが気味が悪い。まあ、いつもの話だ。
ゲームタイトルワンオンワンを取ってOOOとなります。
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