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終乃刻  作者: コトノハ
6/14

1.OOO 03

「そういえば時邦、夏休みって暇なの?」


 今年で受験生の俺としては暇はない。林倉高等学校の方針としては、受験生は自ら勉学を行い、必要であれば教師に助けを求めるべし。そんなわけで教師たちはこの夏休みも生徒たちからの連絡、相談を受ける為に絶賛労働中。

 とはいえ社会人にとって夏休みなど一週間程度の物。爺さんは学生のうちに青春を謳歌しておけよ、と豪快に笑って背を叩いてくれた。一緒に模索した謳歌の方法は、あんまり役に立つことは無かったのが残念だ。


「まあ受験のために勉強はするけど、暇かと言われれば……余裕はあるな」

「ああ、受験勉強の時期だもんね。どこの大学に行くの?」


 何でもないような口調でこっちのパーソナルデータを引き出そうとしてくるんだよなぁこの人。


「さぁ、どっか適当に。そもそも行くかどうかも決めてない」


 なので適当にはぐらかす。一応大学には行くつもりではいたが、うん、赫利うつしについてこられると怖い。

 実際のところ、勉強というものはとても役に立つ。なので勉強はしているし、センター試験も受けるつもりでいる。ただ、将来については何も定まっていない。クラスメイトの皆が語る明るい未来はどうにもいまいち不鮮明。努力が全部報われるなら、世の中は芸術家とスポーツ選手だらけになる。


「うん、そっか、暇なんだ。じゃあちょっと聞きたいんだけど、OOOって知ってる?」

「何ソレ、一昔前のゲーセンの筐体?」


 間違いなくパニックになるだろうし、ゲーセン自体行ったことが無いが、一応応じる。


「そんなのあったっけ。略称なんだけどねワン・オン・ワン! 今流行ってるゲームなんだよ」

「知らねぇ。なに、バスケ?」


 即答する。先ず大人数のいる場所ってのに行かないし、今の流行なんてものには鈍感だ。人と関わらずとも生きていける今の時代は、きっととても優しい時代なのだろう。

 受験生ではあるが、俺は俺の将来というものに然程の展望を抱いていない。入る大学を選ばなければ入れる程度の学力はあると自負しているし、余裕が無いわけではない。

 少なくとも高校二年生の終わり、こっちに引っ越してくるまでは引き籠って勉強以外やること無かったしな。


「もう、ノリ悪いなぁ!」

「んで、何? OOO、何処でやってんの?」


 興味は全くない。ただし自衛の手段として知識は必要。最大の自衛手段は、危険というものそもそもに近づかないことだ。


「ほら、ニュータウンの空き地。まだ沢山あるでしょ?」


 ド頭に危険な情報出てきたなぁ。さっき夜やってるって言ってなかったっけ?

 ニュータウンって今なお建造中。確か再建って計画によると後五、六年は先。

 勿論そんなニュータウンには大量のメッシュシートが被せられた建物がある。大きいものから低いものまで様々だが、大抵のものには工事用の足場が建てられていた。つまり危険な場所なのだ。事故が起きる可能性は大いにある。

 そして空き地には様々な資材が置かれている。無論のこと建築している皆様方は許可を取っていることだろう。とりあえず出てきたのは呆れの顔だけでしかなかった。


「あそこで『鬼ごっこ』やってるの」

「鬼、鬼ごっこォ?」


 多少声が裏返る。いや、遊んだことはねぇが……覚えていない位幼少の頃ならもっと遊んだことあったかな。朧気な記憶には存在しない。多分、そんなに走り回った記憶自体が無い。


「あれか、一人が鬼になって、タッチしたら鬼交代、ってあの鬼ごっこ?」

「そうそう。ただ、ちょっとルールが通常と違うのは、タイトルの通り一対一でやるの。鬼側は制限時間内に相手にタッチしたら勝ち、できなければ負け」


 鬼ごっこがリアルになったらそんな感じじゃないかな。鬼に捕まったら喰われるのが関の山だろうし。

 ルール自体は至ってシンプル。けれども熱中できそうなルールでもある。何せ駆けずり回るだけだ。汗みずくになり、泥にまみれながら駆けずり回った少年時代を思い出し、あの時よりも遥かに性能の上がった自らの肉体で追いかけ合う。それはひょっとしたら、とても楽しいのかもしれない。


「範囲は基本的に視界が通る広場。制限時間は色々あるみたいだけど、三分から五分程度、どう?」

「どう、って言われてもな」


 カレーを喰いながら生返事を返す。興味があるかどうかで言われれば、全くない。

 何せ俺が住んでるのは林倉市林倉町の中でも古い地域だ。お陰で人は余り居ない。家を持っている人たちが手放さず住んでいる程度のもの。その人たちもニュータウンへと少しずつ移動している。空き家の放置問題はここ、林倉市でも加速している。


「ていうか、なんでアンタ俺を誘うんだよ。俺、別に走り回るのが得意って訳じゃないぞ」


 むしろ苦手だ。


「あれ、興味ない? 大勢いるところ、君は好きだと思ったんだけどな。特にそれが夜なら」


 ……否定しきれない。確かに俺は昼より夜の方が好きだ。互いの顔が見えない暗い場所なら猶更に。それでいて人が大勢いるのならば、自分が会話をしなくても落ち着く場所になる。静寂よりは騒がしい方が好きだ。

 とはいえ現代ではそういう場所は無くなりつつある。神秘というものを人は嫌っていた。霊峰、深海、樹海、闇、なにかが潜むであろう場所の悉くを彼等は暴いてきた。その果ては宇宙の向こう側。星々にさえ神秘を認めないあり方は潔い。

 だが林倉市ニュータウンは建設中だ。街灯もそんなに無い。未だに暴かれない闇の中ならば幾ら騒いでも問題にならないと、熱意と気力を持て余した若人達が集まるのは不思議な話ではない。俺もまあそんな若い連中の一人なわけだが、そこまでの熱意を持て余したりはしていないのだ。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

よろしければブックマーク、評価などよろしくお願いします。


時間が足りないんでもっと早く書ける手段無いですかね。ないですね。

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