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終乃刻  作者: コトノハ
11/14

1.OOO 08

「そう、鬼に追いかけられて殺される怪談なんだけど」

「通り魔って言うんじゃないか、ソレ」

「ところがそうでもないんだ。この鬼はきちんとルールに則る」


 ああ、なるほど。それは確かに怪談だ。

 怪談というのはある程度ルールがある。これに関しては芹川邸に来てから理解したことだ。怪談はルールを破った相手には容赦しないが、ルールの内で出し抜けば見逃してくれるケースが多い。まあ大抵の場合踏み込めば生きて帰れないんだけど。

 怪談なんてそもそも無数のケースが存在する。ものに宿る、場所に宿る、人に宿る。そして大抵の場合、出会ったら何かを喪失する。最悪のケースは命。しかし残りの人生と言われても困る。

 怪談内に出てくる『ばけもの』や『かいぶつ』、『ようかい』は無敵だったり、目が合ったらもう終わりみたいな手合いが多いし、そもそも身体能力がこちらの遥か上を行くケースが多い。ルールの上で出し抜けばいいって言われても、先ず出し抜けないのである。

 まあ怪談は全部が全部そういった命を奪われる話しではない。ただし平和な怪談であっても何かを喪う、あるいは喪ったものばかりだ。なので怪談は恐怖の対象であり、且つ教訓話としても語られる。危険には近寄らないが吉、逃げる時は最小限の荷物で、欲は身を亡ぼす。


「んで、どんなルールに則るんだよ、その鬼は」

「時間さ。時間いっぱい逃げ切れば勝ち。鬼は夜にある物を身に着けている相手に襲い掛かってくる」

「へぇ、あるもの? 身に着けてないとダメ……指輪とか首飾りとかか?」


 軽く返事をしながら既視感。時間いっぱい逃げ切る。あれ、なんか似たような話をどっかで聞かなかったっけ?


「腕輪だよ、銀色の腕輪。どうにも、それが鬼にとってのルールらしくてね。今のところ、犠牲者は三人。銀色の腕輪を身に着けた人物ばかりが襲われている。ここ一週間でね、結構多いだろう?」

「マジでただの通り魔じゃないか」


 銀色の腕輪を身に着けている相手を狙う通り魔、という方が正しい。しかも目撃されてるし。確かに怪談じみているが、どうにも怪談というほどのものではない気がする。


「その鬼、通り魔、他になんか特徴はあんのか? つーか、お前が怪談って言うんだし、まだなんかあんだろ?」

「御明察。時邦、病葉の夜については知ってる?」

「林倉町大火災だろ。こっちに来てから散々聞かされたよ」


 十年前に起きた大火災。病葉発症者が引き起こしたものとされるこの大火災は、『病葉の夜』と呼ばれ忌避されている。特に現在ニュータウンと呼ばれている側の被害は酷く、一夜にして何もかもが灰になったのだという。そして今現在はニュータウンとして新築中。

 割とマジで気化爆弾でも叩き込まれたのか。何もかも灰にするって凄いぞ。ただ、病葉発症者の新患部は時々現実を容易く無視する能力を発揮する。高崎某は視線があった相手の視界を奪うという新患部を発揮していた。


「そうそう、あれは本当に酷くてね。まだ覚えてるよ、ここからも火柱、っていうか、火の壁が見えたよ。真昼みたいな明るさだった」

「こっちにまで火災が広がらなくてよかったな」

「良くない。あっち側でも土地幾らかあったのに、手放すことになっちゃった。まあ火で炙られたし、持っててもしょうがなかったけど」


 軽く口を尖らせる芹川。不機嫌になった様子。

 芹川邸は昔は大地主だった。当然駅向こうにも土地は幾らかあったのだろうが、再開発するにあたって土地を売り払ったらしい。


「線路も暫く使えなくて本当に不便だったんだから……」

「お前何歳だったんだよ……」


 見た目俺と同い年くらいの年齢なんだけどな。ていうか、普通に今高校三年生だろ。十年前だと七歳とかじゃねぇのかな。電車使うのか? 

 ああ、まあでも今時学校まで通うのに電車つかう小学生いても不思議じゃない。でもコイツ引き籠りだろ。子供の頃からそうだったのかなんて確証はないけど、なんか今と特に変わって無さそうだ。


「まあとにかく、目撃者の誰もが言うんだよ。アイツは死んだはずだって、病葉の夜に炎に巻かれて、って」

「へぇ、十年も経ってからようやく出てきた亡霊か。幽霊団地の住人かね」

「君、隣だったよね。よくもまああんな場所住まう気になるなぁ」


 しょうがねぇだろ、爺さんの家がそこだったんだから。

 泣く子も黙る幽霊団地。林倉町五丁目に存在するマンション群。つまりほぼ隣である。林倉ニュータウンが建設中の今、段々と駅向こうへと引っ越しをする人々も増えていて、それはマンションに住んでいる人たちも例外ではない。

 けれども不思議なことに、この林倉マンション群は今なお部屋が埋まっている。だが誰かが引っ越してきたという記録は無い。更に不思議なことに、この団地の住人は何人かが既に死んでいるはずの人物だという。管理人が杜撰というだけなのかもしれないが、それでも夏になると定番の怪談の一つとして語られる。


「幽霊団地の話は置いといて、その死人は何しに蘇って来たんだ? 銀色の腕輪を付けてる相手を殺してまで」

「それが不思議なことにね、この鬼は何かを探しに来てるらしいんだ。お前が持っているのか? なら寄こせ、そして奪ってみると違う、だから殺してる」

「……何? 特定の銀色の腕輪を探してて、違ってると殺すの? 理不尽っつーか通り魔より性質悪いっつーか……」


 あ、これ確かに怪談だな。通り魔よりもかなり性質が悪い。ただそれを認めてしまうのが少し悔しくて、芹川から少しだけ視線を逸らして茶を貰う。

OOOというタイトルを変えるべきかどうか悩みますがサブタイトルを付けたりしたほうがいいのでしょうか。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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