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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

掌編集

弱くて柔らかくて脆い

作者: 和田喬助

 あたしは自分の弱い部分をこの子に触らせるのが好き。

 彼女の手首をつかんで触らせる。

 横に一筋の跡がついたあたしの喉に触れる彼女の指先が、緊張しているのかわずかに震えているのを肌で感じた。

 時折、はあはあと上がっている彼女の息が、あたしの前髪を揺らす。

 さっき一緒に飲み食いしたジュースやお菓子の匂いがした。

 彼女の指は、あたしの喉仏の凹凸を上から下に優しくなぞっていく。つばを飲み込んでわざと喉仏を動かしてみたら、彼女の指がさらにビクッと震えた。

 喉のその固い部分から、指先がすぐ隣に移った。

 その奥には頸動脈がある。


「少し強く触ってみて」


 あたしがそう言うと、指圧が少し高くなった。


「温かい……。トクトクしてる……。速い……」


 彼女がつばを飲み込む音がした。

 あたしの生きている証である体温と鼓動を、彼女は感じている。

 優越感と快感でたまらなくなる。

 柔らかいところを触らせているのに、だ。

 あたしの体でこの子の脆い感情が動かされているのだと思うと、まだ自分がこの世に生きている価値があったのだ、と思うことができて、とても安心する。

 いや、あたしの方がもっと脆いかもしれない。この子はまだ自殺未遂なんてしたことないから。


「私のも、触って、くれますか」


 彼女があたしを見下ろしながら、息を絶え絶えにしながら言った。


「いいよ」


 あたしは、この世でたった一人の仲間を探すように、重力で垂れる彼女の長い髪を左手でかきわけた。

 髪の毛で隠れていた彼女の顔は、真っ赤に染まっていた。

 あたしは右手でそっと彼女の柔らかい喉に触れた。

描写の練習で書いたお話です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 想像しながら読みますと、すごくドキドキします…(*´▽`) 素敵な作品をありがとうございました!
2021/05/20 19:28 退会済み
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