弱くて柔らかくて脆い
あたしは自分の弱い部分をこの子に触らせるのが好き。
彼女の手首をつかんで触らせる。
横に一筋の跡がついたあたしの喉に触れる彼女の指先が、緊張しているのかわずかに震えているのを肌で感じた。
時折、はあはあと上がっている彼女の息が、あたしの前髪を揺らす。
さっき一緒に飲み食いしたジュースやお菓子の匂いがした。
彼女の指は、あたしの喉仏の凹凸を上から下に優しくなぞっていく。つばを飲み込んでわざと喉仏を動かしてみたら、彼女の指がさらにビクッと震えた。
喉のその固い部分から、指先がすぐ隣に移った。
その奥には頸動脈がある。
「少し強く触ってみて」
あたしがそう言うと、指圧が少し高くなった。
「温かい……。トクトクしてる……。速い……」
彼女がつばを飲み込む音がした。
あたしの生きている証である体温と鼓動を、彼女は感じている。
優越感と快感でたまらなくなる。
柔らかいところを触らせているのに、だ。
あたしの体でこの子の脆い感情が動かされているのだと思うと、まだ自分がこの世に生きている価値があったのだ、と思うことができて、とても安心する。
いや、あたしの方がもっと脆いかもしれない。この子はまだ自殺未遂なんてしたことないから。
「私のも、触って、くれますか」
彼女があたしを見下ろしながら、息を絶え絶えにしながら言った。
「いいよ」
あたしは、この世でたった一人の仲間を探すように、重力で垂れる彼女の長い髪を左手でかきわけた。
髪の毛で隠れていた彼女の顔は、真っ赤に染まっていた。
あたしは右手でそっと彼女の柔らかい喉に触れた。
描写の練習で書いたお話です。