幸せな気持ち
ダイアと私の様子を見ていたルイは、ダイアに問いかける。
「あんたは何でそんなにカナを気にかけるんだい?」
「カナは他の者とは魔力の質が違う。カナの魔力はとても心地が良い。私はこれ程澄んだ魔力の持ち主に出会ったことがない」
「確かにカナの魔力の質はあたしも気づいていたが……それほどか。カナは魔法も使った事がなかったようだから、正しく魔力を扱えるようにさっきまで初級魔法の練習をしていたんだ」
「何故これ程澄んでいるかは分からないが、可能性の話として負に堕ちた者達に目をつけられる可能性がないわけではないだろう」
「成る程ね。お姫様を護る騎士ってわけかい」
ルイはダイアをニヤニヤと笑って見つめ、ダイアは顔を赤らめてそっぽを向く。
二人の様子を交互に見ていたが、私にはなんの事だか分からない。
「魔力の質って?」
「あぁ。魔力ってのは人それぞれ個性が出るんだよ。カナはまだ魔法の勉強を始めたばかりだから、ゆっくり勉強していこう」
ルイにニコッと笑顔で言われて頷いて答える。
「話も一段落した事だし、ダイアの贈り物で食事にしよう。ダイアも今日からウチに住むかい?」
「いいのか? 『森の魔女』は他人とあまり関わらないと聞いていたが?」
「関わりを持たなかったのは本当だが、たまには悪くないだろう。客間は昔作ったのがまだあるし、ウチに住む代わりにやって欲しい事もあんたにはあるしね。それからあたしの事はルイって呼んでおくれ」
「分かった。ルイ、よろしく頼む」
ルイとダイアは立ち上がって握手を交わす。
「わぁ!! ダイアも一緒に住むの? 嬉しい!!」
嬉しくて笑顔になって拍手している私を見て、二人は優しい顔で微笑んでいる。
その後、シルキーさんが作ってくれたダイアが持ってきてくれたお肉と野菜の煮込とパンを食べながら、私は幸せな気持ちになった。
(家に誰かが居る。私に関わろうとしてくれる人が居る。二人の優しい気持ちが伝わってくる。父さんや母さんがいなくなってから、同情や遠慮される感情でしか見られる事がなかった私が、この世界で幸せだと思う事が出来るなんて……ありがとう)
私は頭に浮かんだ管理者のアルの顔を思い出しながら、そっと心の中でお礼を言った。
食事の後は、ダイアの部屋の準備をしたり、クロヒョウの姿になったダイアの毛並みを思う存分堪能したり、スライムは魔物と聞いてビックリしたりしながら穏やかに一日が過ぎていった。