お勉強【この世界の国】
「カナ~。何か食べたい物あるか……って、何だ。あんたもう話したのかい?」
ルイが窓からこちらを見て、ダイアに言った。
「あぁ。つい言葉を話してしまった」
「まぁ、その内話すだろうとは思ったが……早かったね」
「修行が足りなくて申し訳ない」
私はお互いに苦笑いしながら話している二人を交互に見る。
「ルイは知ってたの?」
「助けた時に話してるよ。なかなか会う機会はない相手だから、カナみたいに驚くのは普通だよ。もう話したんなら、庭じゃなくて家に入りなよ。ダイアは今のままだと大きすぎるから人化でヒトになってね」
ルイがダイアに言うと、ダイアの体が光り始めた。
光が収まると、そこには黒髪でオレンジ色の瞳をした若い男の人が立っていた。
驚きで頭が追いつかない私は、瞬きも忘れて人になったダイアを見つめてた。
「固まってるね。ダイア、カナを連れてきてくれるかい?」
「驚かせてしまって本当に申し訳ない」
ルイの声に、ダイアは困ったような顔をしてから私をお姫様だっこで家に運んでくれた。
椅子に降ろしてもらうと、ルイがホットミルクを入れたカップを人数分持ってきてくれた。
大きく深呼吸して少し落ち着いてきた私を見て、ルイとダイアも椅子に座ってから、ダイアが口を開く。
「改めて、私はネコの国の第三王子のダイアだ。世界を見てみたくて、国を出てからあちこちを旅していたが、怪我をしてこの森にたどり着いた時に『森の魔女』に助けられた」
「カナ、ダイアはケット・シーの一族なんだよ」
「ケット・シー?」
ルイの言葉に私は首をかしげると、ダイアが答えてくれる。
「ケット・シーはネコの国の王族だ。我らの国は《獣人の国》の中にある小国の一つで、ネコ科の獣人が住む国だ」
「そうなんだ……あ、王子様に失礼しました。私はカナと申します」
「いや、普通にしていて欲しい。王子と言っても私は王政に関わっていないし、国の中よりも国の外に興味があって旅に出たくらいだから。ダイアと呼んで欲しい」
慌てながら言うダイアに、私は思わずクスクス笑ってしまった。
ルイはそんな私を見て笑顔で言う。
「せっかくだからこのまま勉強としよう。《獣人の国》はダイアの小国の他にも様々な獣人や亜人がそれぞれの小国を築いているんだ。『大都』と呼ばれる中心都市で、各小国の代表が話し合いをしたり、それぞれの特産を売ってたりする。ヒト族ともそこで貿易があるんだよ」
「ルイは行った事があるの?」
「昔、あたしも色んな国を旅した事があるんだ。あたし達のいる《ヒト族の国》以外だと、世界には《獣人の国》、《魔族の国》、《龍の国》、《エルフの国》があるんだよ」
説明してくれるルイに、私はある疑問を問いかける。
「そんなに色んな国があって戦争になったりしないの?」
「大昔はあったみたいだけど、今は条約があるから戦争はないね。ただ《エルフの国》だけはほとんど他国と交流しない。妖精達と関わりが深い種族だから、国の中に妖精の国もあるんじゃないかと言われてるけどね」
ルイの言葉に平和な世界なんだと私はホッとした。