突然
鳥の鳴き声で目が覚める。
昨日は初めての魔法に興奮し、かなりの魔力を使っていたようで疲労感のまま早めに寝ることになった。
魔力は自然に回復するらしく、疲労感はない。
(今の私は7歳くらいかな? 初めて今の体をちゃんと見たけど、大人の感覚でいたら違う所でも迷惑かけちゃうかも……もっと慎重にならないと)
ルイが、買ってくれた鏡を寝る前に部屋に出してくれた。
昨日はちゃんと見れなかったが、目が覚めてから改めて自分の姿を確認してみると、黒い髪の赤い瞳の子供が映っている。
以前の自分とはまったく違う容姿になっていた。
私は服を着替えて身嗜みを整えると、部屋を出た。
キッチンでは、ルイとシルキーさんが朝ごはんを作ってくれていた。
「おはようございます」
「おはよう、カナ。体調は大丈夫かい?」
「もう元気。心配かけてごめんなさい」
「良かった。今日も魔法を使うから、魔力量に注意しながらやろうね」
ルイもシルキーさんも安心したように、ニコッと笑う。
私も笑顔で頷いて、出来ていたお料理を運んだりしてから、ルイと朝食をとった。
「さて、今日はカナの適正を見るよ。水は相性が良さそうだから、それ以外をやってみよう」
ルイと一緒に庭に出て、魔法を使ってみる。
・【火】 魔力を指に集中させてマッチ棒でつけたくらいの火が出た。
・【風】 魔力を手のひらに集中させて小さなつむじ風が出た。
・【土】 地面に魔力を流し土で雪だるまの形の人形を作る事が出来た。
「ちょっと休憩しようか。基礎魔法についてはどれも使えるね。使ってみて何か感じた事はあるかい?」
「使う時の魔力の量かな? 火を出す時は他の魔法の時より魔力を沢山使わないと火が出なかった」
ルイに言われて考えてみると、火の魔法を使う時だけ魔力を特に集中させないと出ない気がしたのだ。
「やっぱりそうか。魔力の流れを見ていたけど、火魔法の時は特に魔力量が大きかったからね」
「ルイは魔力が見えるの?」
「あたしは……ちょっと特殊なんだ」
ルイは私の問いに少し悲しそうな笑顔をした。
あまり触れて欲しくなかったのかと少し不安になって声をかけようとした時、ルイが森の方に顔を向けた。
私もつられて森の方を見ると、クロヒョウがこちらに歩いてくるのが見えた。口に何かをくわえている。
「よっぽどカナが気になるんだね」
ルイは笑いながらクロヒョウを庭に招く。
クロヒョウがくわえていたのは普通のサイズよりかなり大きなウサギだった。
ウサギを地面に置くと、尻尾を振ってこちらを見る。
「カナに贈り物みたいだよ」
「え? いいのかな? あなたが取ってきてくれたの? ありがとう」
ルイに笑顔で言われて、私はクロヒョウの頭を撫でる。
「せっかくだから下処理して何か作ってくるよ。カナは休憩しながら一緒にいてあげな」
ルイはウサギを持って家の中に入っていく。
私はクロヒョウの側に座って撫で続ける。
「あなたが私を見つけてルイに教えてくれたって聞いたの。ありがとう。お陰でこの世界でも生きていけそう」
クロヒョウに向かって話しかける。
「そうか。良かった」
男の人の声が聞こえて、私は驚いて撫でる手を止めた。
「え!? あなた今しゃべった!?」
「……私とした事が気持ち良くて、つい声を出してしまった」
驚いて身動き出来ない私の前で、クロヒョウは二本足で立ち上り私にお辞儀をする。
「驚かせてしまって申し訳ない。私はネコの国の第三王子。名をダイアという」
私は驚くばかりで、ただその姿を見つめるしか出来なかった。