お勉強【魔法】
ルイと二人で家に帰って来て、ルイはテーブルに置いたカバンの前で言う。
「買ってきた物をしまうから、カナも手伝ってね」
「はい‼」
「まずはカナの物からね。新しい服と櫛と鏡……は、大きいから後でカナの部屋に出そう。それに蜂蜜に卵に砂糖……」
カバンから出てくる物に目を見開く。
服だけでも10着以上……それに瓶に入った蜂蜜や、篭に入った卵等々、明らかに入らない量の荷物が次々と出てくる。
私は思わずルイに訊ねる。
「え!? 何でそんなに入っているの!? カバンの大きさ変わらないのに」
「ん? あぁ。カナは初めて見るかい? これは空間魔法が付加されたカバンなんだよ。そんなに珍しくもない物だよ」
「空間魔法?」
「そうだね。まだ夕飯には早いから、カナが疲れてなければ少しお勉強しようか?」
「する!!」
「なら急いで片付けようか」
ニコッと笑いながら言ってくれたルイの提案に、私は思わず力一杯返事をする。
キッチンに食材を運び終え、自分の部屋に服と小物を置いて戻ってくると、テーブルにハーブティーが入ったカップを置きながらルイが待っていた。
テーブルに座って、いよいよこの世界の話を聞く。
「まず魔法には、火・水・土・風の基本的な魔法がある。自分の相性によって使える大きさが違うけど、誰でも使える基礎みたいなものだね。それから、適正があれば使う事が出来る魔法が、光・闇・空間・付加・結界の魔法。さっきのカバンは、カバンに空間魔法を付加する事で内容量が増えてるカバンだったんだよ」
「そんなに魔法があるんだ。魔法を使えるようになるには、どうしたらいいの?」
「魔法を使うには、まず自分の魔力を感じる事だね。子供には身近な大人がちゃんとした魔法の知識を教えるんだけど、中にはカナの様に知識を知らない子もいるんだ。知識がない為に、稀に魔法を暴走させてしまう子が出る。カナ、まず目を閉じてごらん」
ルイに言われて目を閉じる。
「生き物はその身に血が流れている。そのまま体に血が巡るのを想像してごらん」
目を閉じたまま、血液が体を流れる事を考える。
「イメージ出来たら、今度はその流れを手のひらに集める事を想像するんだ」
手のひらに集まっていく感じを思い浮かべると、手のひらが温かくなってきた気がする。
「カナ、一度庭に出よう。その感覚は忘れないでね」
ルイの声に目を開け頷いてから、私達は庭に出る。
「さっきの感覚を思い出して手のひらに集まったら《ウォーター・ドット》って唱えてごらん」
「《ウォーター・ドット》」
また手のひらに温かい何かが集まった気がして呪文を唱えると、温かい何かが水で出来たボールの形になって出てきた。
「すごい!! ルイ、何か出た!!」
「魔力が集まるのを感じたから言ってみたけど、まさかすぐ出来るとはね。魔力は血液と同じように体を巡ってるんだ。水魔法の初歩だけど、それが出来たって事は魔力の感覚は分かったかい?」
「うん。何か手のひらに温かい何かが集まる感じがしたの!! すごいね!! 私も使えたよ!!」
ルイは苦笑いしながら言ってるが、私は初めての魔法に大興奮してしまって、水の玉を出しては投げ、出しては投げを繰り返す。
「そんなにやったら、魔力切れになっちまうよ」
ルイが私を止める頃には、まるでマラソン後のような疲労感に襲われてその場に座り込む。
「魔力は無限じゃないんだ。自分の魔力分しか魔法は出せないから、自分の魔力量に慣れていこうね。今日はここまで。続きはまた明日ね」
ルイは笑いながら言うと私を抱き上げ、家の中に入っていった。