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管理者と出会う

初めて小説書きます。

未熟者ですがよろしくお願い致します。

 この日は朝から雨だった。

 毎日の繰り返しのように電車に乗って仕事に行って、終わればまた電車に乗って帰る日々……。


 今日も同じように仕事も終わって駅に向かう。駅の入口に着いて傘を畳む。地下のホームに向かうため階段を降りている途中で急に立ちくらみがおきた。


(あ……)


そう思った時にはもう遅かった。

 足元は濡れてる階段……そのまま意識は暗い世界に包まれていった……。


 ……意識が戻ってきたけど目が開かない。

 不思議と痛みはなくて、プールに横になったまま浮いてるような感覚だった。


(やっちゃった……私は死んじゃったのかな。

 元々貧血持ちだったから気をつけてるつもりだったのに……)


 何度も貧血で倒れた事がある事と、運がなかったと諦めとして受け入れてる自分がいた。

 もうしょうがないと……まわりの人を巻き込んでいない事を願いながら……


「なぜそんなにもあっさりと受け止めてるの?」


 男の子の声がした。


 私はびっくりして目が開いた。

 ――そこは何もない真っ白な世界だった。体の感覚も戻っていく。

 横になってる状態だと気づいてゆっくりと上半身を起こす。

 そこには茶色の髪に青い瞳の黒い甚平を着た男の子が立っていた。


「もっと怖がったり、泣いたり、取り乱す子が多いのに君は静かだからこっちが戸惑うよ」

 男の子は首を傾げながらこちらを見ている。


「元々貧血で何度も倒れてるし…それよりもあなたは誰? 私は死んじゃったんじゃないの?」


 私の問いに彼は一度頷くとこう答えた。


「確かに君は死んでるよ。僕はこの世界の管理者の一人。名前はアルだよ。君は自分の死が恐ろしくないの? 悔しくないの?」


 ……アルに言われて考える。

 私にはもう肉親もいないし、私が居なくなって困るという人はいないだろう。


 元々小さい頃から病気がちだった私はただ生きる為に仕事して毎日を業務のように生きてきた。


 昔はよく『何で私だけ』と思った事もある。


 体が弱くて小さい頃から思うように遊べない時…いじめられた時…恋が実らなかった時…そして両親が事故で亡くなった時……。


 元々消極的な性格だった私は両親が居なくなってからは特に世界に対して何かを求めなくなった。失なっていくくらいならば求めるのを止めてしまったから……。


 私はアルを見ながらほんの少し笑って言う。


「もうずいぶんと前に感情的になるのを諦めてしまったから。だから自分が死んだとしても終わったんだなぁとしか思ってないみたい。」


 アルは目を見開いて私を見た後、困ったような顔をした。


「普通はここで僕が納得するまで慰めてあげるのが一番の仕事だったんだけどね」


 アルの言葉に私は苦笑いしか出来ない。


 アルはもう一度私を見つめた後、真剣な顔で話始める。


「なかなか君みたいのは稀なんだけど、僕達管理者はそれぞれの担当魂があって、もう一度生き直す事を選ぶ事が()()()子だけがこの空間に飛んでくるんだ。僕達管理者には君が生きてた世界とは別の世界も同時に管理してる。その別の世界にいる僕担当の魂の子が繋がりを求めるほど強く願った魂が君って事。だから君はその世界で新しい生活をする事を選べるんだ。もちろんこのままこちらの世界でまた産まれ直す事も出来る。もし君が別の世界の魂の子の所に行くならば僕からはそれなりのプレゼントはするからね」


 アルの話に私は頭がついていかない。


「生き直す事を選ぶ? 別の世界?」


「もう1つの世界は人間以外にも様々な種類の生き物がいて魔法がある世界だよ」


「え? よく物語とかゲームとかの世界?」


「こっちの世界だとそうだね。でもその物語も君と同じようにこっちの世界の子があっちの世界の子を求めて、こっちに来た子が居たから出来たお話なんだよ」


 混乱しながらもアルの話に質問しながら聞いていく。


「でも何で私なの?」


「それに関しては魂の相性とタイミングの問題かな。たまたま君の死のタイミングとあっちの子の魂が求めるタイミングが一致したって感じ?」


「そんなたまたまって言われても……」


「もしあっちの世界で生き直すなら、あっちの世界で生きる為に魔力は使えるようにするし、今の記憶もそのままだね」


「……もしこっちで産まれ直すなら?」


「その時は世界移動もしないから普通に成仏してもらう感じだね。でも君は最初諦めてきた人生だったって言ってたから、僕としてはあっちの世界でやり直してみて欲しいんだけどね」


 アルは言うとニッコリ笑う。


 まだ混乱はしている……。

 でも求められてると聞いて私は正直嬉しかったのだ。


 もう何年も傷付きたくて見ない様にしてきた。

 もう何年も自分の殻に閉じ籠ってきた。


 そんな私を求めてくれる人がいる。

 それが嬉しいと思ってしまった自分がいた。


「もう1つの世界に行くよ」


 私がそうつぶやくと、アルは溢れるほどの笑顔になった。

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