序章
人生の最後…
人は、今までのことを思い出すという。
それは、本当のようだ。
自分の人生がどうだったかと言われたら普通だと答えられる。
じゃあ、それが不満だったかと言われるとそんな事はない。
私は、普通の家庭に生まれ、厳しくも優しい父母に育てられながら幼少期、少年期、青年期と大きな怪我や病気もないまま成長していった。
大学で知り合った女性が妻になり、3人の子どもに恵まれ、定年退職する頃には4人の孫もいた。
そして今まさに命の灯火が消えようとしている時に12人の最愛の者達に囲まれて悲しまれている。
これ程の幸せはあるだろうか。
もう思い残すこともない。
目を瞑ればこの世とのお別れだ。
しかし…気になることがある。
妻、子ども達、子ども達の嫁、そして孫…
全員で11人しかいないはずなのに…
君は誰なんだ?
整った西洋の顔立ちの赤みがかかった髪、まだ10歳くらいだろうか?
なぜそんなに悲しい顔をするのか…
悲痛に満ちたその表情を見ると胸が締め付けられてしまう。
口がパクパクと開いては閉じる。
タ…ス…ケ…テ…?
どうしたんだと何があったんだと聞きたいがもう意識は白い世界に包まれていく。
すまない…
私に君は助けてやれそうにない。
誰か彼女を…
私の可愛い※※※※※を助け…て…
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「22時43分…御臨終です。」
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