百合コント「ブドウとキツネ」
この物語はフィクションです。
実際の人物、団体名とは一切関係ありません。
「いやぁ~疲れたねー」
『飲み物とってくるから座ってていいぞ』
「マジ?ありがと」
『私にする?私にする?そ・れ・と・も……私?』
「なんで全部私なんだよ!そういうのいいから」
『はい烏龍茶 そういえばスズは?』
「遅れて来るってさ」
『じゃあ先に始めてるか!』
「そだねー じゃあ改めてかんぱーい」
『かんがーい』
「なんで水引いてくるんだよ!」
『今日のお店の料理美味しかったよね』
「デザートも甘さ控えめでよかったねー」
『あとさ、田中先輩結婚するって聞いてビックリしたよ』
「カタブツで浮いた話が全く無かったからねー」
『私も結婚したいなぁ』
「実はあたしも彼女と「結婚しようか?」って相談してるんだよねー」
『嘘だろオイ!!!!』
「ビックリしたぁ!!大声出さなくてもいいじゃん!」
『どうして私に言わなかった!!!親友なんだから打ち明けてもいいじゃないか!!』
「声がデカいわ!」
『で…相手はどんな女なんだ』
「えーと…あたしの一つ下で、少し抜けてる所があるけど、優しくて良い子だよ」
『ほうほう』
「あと泣きぼくろがチャーミングポイントだね ロングがすごい似合う」
『ほー…』
「趣味が映画鑑賞でさー 埋もれてる名作とかもすごい知ってるんだよー」
『…』
「それでー料理も上手でー オムライスの卵がレストランのヤツみたいにふわっふわなの…」
「あのー…利香子さん?なんで黙ってるの…?」
『その女の名前は?』
「…アサカワ…マリアだけど…?」
『考えが浅いの浅いにドブ川の川、真偽の真に病理の理、愛憎の愛と書いて浅川真理愛?』
「なんで例え方が軒並み酷いんだよ!」
『合ってる?』
「合ってるけど聞き方は間違えてるよ!字の聞き方ってもっとこう違うでしょ!」
『さんずいの横にブラインシュリンプが張り付いている方って聞いた方がよかったか…』
「分かりにくいよ!」
「というか…なんでマリーのこと知ってるのよ」
『マリーってなんだよ腹立つなぁオイ!!!』
「あだ名付けただけなのに理不尽!」
『あの女…同じ高校でその時に告白したんだけど…フラれたんだ なぜだ!!!』
「字の例えにブラインシュリンプ出すような女だからじゃないの?」
『というか…いつから付き合ってるんだ?』
「一昨年の9月辺りからだけど?っていうかいつから付き合ったとかどうでもよくない?」
『織田信長は桶狭間の戦いにおいて、敵将今川義元の首を直接討ち取った毛利良勝よりも、今川軍の居場所を伝えた簗田政綱に報酬を多く与えたそうだ。情報は大事なんだよ』
「死人を盾にしてどうでもいい情報聞くのやめない?」
『ちなみに簗田政綱は私のご先祖様らしい よく学校で自慢したぞ』
「政綱さんはお前が子孫で悲しんでそうだけどな」
『あと情報とか信長関連でミスった人を煽るのに「おけはざまぁw」っていうスラング思いついたんだけどどうかな?』
「どうでもいいよ!」
「お疲れ様でーす…どうしたんですか先輩方」
「スズー!遅かったじゃん!」
『聞いてくれスズ!こいつ私をフッた女と付き合ってたんだ!しかも今度結婚するらしい!』
「はぁ…そうですか」
『浅川真理愛の野郎-!絶対に許さんぞー!』
「アサカワ…マリアですか?」
「え?スズ知ってんの?」
「付き合ってましたよ 去年の暮れまで」
『えっ』
「えっ」
『あのー「あさ」ってもしかしてブラインシュリンプが』
「しつこいよ!」
「あたしがマリーと付き合い始めたのは一昨年の9月くらいだから…」
「バリバリ被ってますね…」
『なるほど~!そうかそうか!フッハハハハハ!』
「なんで嬉しそうなんだよ!」
『私をフッた女が尻軽不倫二股女だと分かってスッキリしたんだよ!ハハハハハ!!!』
「取れなかったブドウがガチで酸っぱいと分かったキツネみたいですね…」
「例えが紛らわしいよ!」
『いやぁ~!スッキリするねぇ!本当に晴れやかな気分だぁ!ッハハハハハハ!』
「…自分がカゼ引いたときに、何も言ってないのにマリリンが家に来てくれたことがあったんですよね」
「マリリンって何!?」
「付きっきりで看病してくれてて、マリリンも大変だろうからもう良いよ、って言ったら」
「何言ってるのよ!年上なんだからお姉さんに甘えて良いのよ!って言ってくれて…嬉しかったなぁ」
「このタイミングでなんでノロケ話を…って利香子?」
『うっ…うぅ…ぐすっ…』
「めっちゃダメージ受けてるー!」
「すいませんなんかムカついたんで…」
『マ゛リ゛リ゛ン゛ってな゛ん゛だよ゛ぉ゛…』
「あだ名への執着すごいな!」
『ん?ちょっと待てよ?』
「おっどうした?」
『さっきマリアのこと年上とか言ってたよな?』
「はい 2つ上ですけど…」
『ククククク…ハーッハッハッハッハッハ!!!』
「割とすぐ元気になりましたね…」
『優紀はマリアを自分の一つ下だと言っていた…情報の食い違いが生じている…となると答えはひとぉーつ!!!!』
「改めて思うけどめっちゃウザいな…」
『マリアは結婚詐欺師で優紀をダマすためにウソをついていたんだぁ!!!!』
『ハーッハッハッハッハァー!これでもう未練はないぞぉ!!!』
「…マリアって映画好きなんだけどさ、何故かホラー映画だけはあたしと見ようとしなかったんだよね」
『?』
「なんで?って聞いたらさ、怖がって声を上げてる姿を見られたら幻滅されそうで怖いんだって」
『…』
「そんなことないから一緒に見よーって言ってホラー映画見たんだけどさ、怖がってる姿もめっちゃ可愛かったんだよねー」
『うぅ…ぐすっ…ひぐっ…』
「めっちゃ未練あるじゃん!」
「攻撃力は高いけど防御力は低いタイプの敵ですね…」
『な゛ん゛でっ…な゛んで私の方を向゛い゛でくれながっだんだ…ま゛り゛あ゛ぁ゛…』
「なんかこっちが申し訳ない気持ちになってきた…」
「死んだら状態異常バラ撒いてくるタイプの敵ですね…」
「優紀先輩どうされたんですか?」
「ちょっとマリアに確認取る もしもしマリア?」
「こういうこと聞くのもアレだけどさ…そのー…過去にスズって娘と付き合ってたりしなかった?」
「えっ?そんな人知らない?そうなの?」
『貸せぇ!!!』
「あっコラ!奪うな!」
『年貢の納め時だぞ浅川真理愛ぁ!!!ここにスズ本人がいる!!!スズゥ!!!証拠を叩きつけてやれぇ!!!』
「もしもし…?…???…あのーすいませんどなたですか?」
『えっ』
「えっ」
「マリリンはこんな声してませんよ…?」
「スズ…念のため聞くけどあなたが付き合ってたアサカワマリアさんってどんな字で書くの?」
「あーたらしい朝が来た♪の朝に砂の中の銀河~♪の河で朝河ですけど」
「なんで歌縛り!?」
「下の名前は聖なる母と書いてマリアと読みます」
「キラキラネームじゃんか!というか読みが同じだけで全然違う名前じゃん!」
『ほらぁ!ブラインシュリンプでチェックしないからぁ!!!』
「それは素直にごめん…」
「でも良かったじゃないですか こっちの勘違いだったってことで」
『いーやまだ確認することがある!!!貸せぇ!!!』
「強引だなこの人…」
『浅川真理愛ぁ!何故高校の時に私をフッたぁ!!私がウザいからかぁ!!!私がウザいからかぁ!!!!』
「いやそうでしょ」
『えっ?違う?』
「えっ」
『実は自分は今川義元に仕えていた武将の子孫で…?桶狭間の戦いでそのご先祖様は戦死して…?』
『自分の先祖が死ぬ原因を作った男の子孫であることを自慢するような女と付き合いたくなかった…だからフッた…』
『…』
「…」
『…』
「…おけはざまぁw」
『う゛わ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!』
「先輩なにやってるんですか!」
「ごめんなんかムカついた」
桶狭間の戦いですが、簗田さんが直接仕留めた人より報酬を多く貰った、という具体的な証拠は実はないらしいです。